エドウィン・マルハウス (河出文庫)

  • 河出書房新社
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感想 : 55
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  • Amazon.co.jp ・本 (532ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309464305

感想・レビュー・書評

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  • 夏のうだるような暑さ、退廃的な雰囲気、子供時代の学校生活などにノスタルジックになっていると、最後に怒涛の展開が。これでミルハウザーに惚れました。

  • 翻訳家の岸本佐知子さんは自分が翻訳した本はすべて「傑作だ!」と思いながら訳すそうだが、中でもイチ押しがこの本だとか。さもありなん‼︎こども時代、怖がりで移り気で(時に意地悪だった)自分自身の様々な遠い記憶が容赦なく掘り起こされたようで…今ここに居るのがふしぎに思える。
    忘れられない一冊になりそうです。
    (岸本佐知子さんの訳が素晴らしい‼︎)

  • スティーヴン・ミルハウザーの処女作を読了。
    これまでに読んだミルハウザーの小説『マーティン・ドレスラーの夢』『ナイフ投げ師』では、いずれも際限のない人間の欲望、狂気とも言える欲望が重くのしかかっていた。一方、本作は、11歳で夭折した天才作家エドウィン・マルハウスの伝記を、同い年の少年ジェフリーが書くというストーリー。だから、そこまでの重さは感じることはないだろう、しかも処女作だし、と高を括っていた。確かに前半は子供たちの世界を綿密に描き切っていて、子供の頃の自分にも覚えがあるような逸話も満載だ。しかし、エドウィンが恋に落ちるあたりからは、もうほとんど修羅場。とても子供とは思えない、熱病を患ったかのような重くて暗い展開が待ち受けている。
    本来、このような展開なら(しかも主人公は子供なので)、エドウィンに感情移入ができそうなものなのだが、この小説ではそれがまったくできない。その理由はジェフリーの視点だ。エドウィンが大切な友人であることは間違いないのだが、彼の伝記を書くことを決めた時点で、ジェフリーは常に一歩引いたところからエドウィンを見ている、いや、より正確に言えば、エドウィンを観察している。さらに、その観察中に、作家本人よりも、その作家を世に知らしめる伝記作家の方が上の存在だ、とまで言い切ってしまう境地に達する。この少し突き放したような視点が本作の肝であり、やっぱりミルハウザーだった、と思える瞬間なのである。

  • ミルハウザーのデビュー作。ミルハウザー作品の中で繰り返し描かれる「架空の作家による架空の芸術家の架空の伝記」のすべての要素がすでにこの中に。そして同時にこれは「子供による子供の伝記」でもある。日本で言う昭和の頃の、アメリカの子供の、好きだったアニメやゲームや玩具、そういう細部だけでもとても読んでいて楽しい。ビーチや遊園地、夜の散歩、少年時代に誰もが憧れた冒険へのノスタルジー。しかしそんなドキドキワクワクだけでなく、たくさんの毒もここには詰まっている。

    伝記の作者ジェフリーは、エドウィンを天才作家として描き出すけれど、正直幼少期(0~5歳)の彼はお世辞にも利口とは言い難い子供だし、壮年期(6~8歳)もエキセントリックな友達ばかり好きになるトラブルメーカー、晩年期(9~11歳)は創作に打ち込み奇矯な言動を繰り返し家族やジェフリーを振り回す。エドウィンは本当に天才だったのだろうか。そもそもエドウィンなんて少年は実在したのか。すべてジェフリーにしかわからない。

    最近再読したせいか三島の『豊饒の海』における、本多と清顕(とその転生者たち)の関係が、ジェフリーとエドウィンに似ている気がふとしました。エドウィンを一方的に、ややストーカー気味に観察し続け、理想化するうちに、その理想から外れないようにコントロールしようと試み、伝説にするための条件を満たさせようとするジェフリーは、清顕を神聖化し、その転生者が凡人であることを許さず、二十歳で死ぬのがその証と決めつけた本多ととても似ている。永遠の観察者である彼は観察の対象を常に求めている。

    エドウィンが心惹かれるエキセントリックな友人たち、引きこもりの天才漫画家エドワードや黒猫を連れた魔女ローズや乱暴者のアーノルドら、登場する少年少女たちはそれぞれとても魅力的でした。自分に子供がいて、そのクラスメイトだったらおつきあいは遠慮したいタイプばかりだけど(笑)。あとエドウィンのお父さんも好きでした。

  • 子供時代の描写の緻密さと瑞々しさと主人公の観察眼(狂気)
    グリーンとブルーの八月、オレンジとブルーの十月、白、ブルーの十二月とかの表現が美しい

  • 描写力がすごい。キャッチャー・イン・ザ・ライみたいな多くの人がぶち当たるある時期の感情のもつれとかとは違ってターニングポイントにすらならずに忘れ去られた子供時代をよくあそこまで表現できるなと思った。

    ----ここからネタバレ----

    エドウィンが撃つフリして目を開けたことによって安堵するよりも伝記を書くためのプロットを完成させることを厭わなかったジェフかなりやばい

    あと表向きには多くの人が忘れ去ってしまった子供時代の感性を忘れることなく保ち続けたエドウィンの人生と作品話なんだろうけど、ジェフがそこから外れることを許さなかったという感じがするんだよなぁ
    ローズ・ドーンやアーノルドからの影響を危惧してたり、恋に落ちたとなれば相手が誰かと気にしたり…

    ジェフが、エドウィンがこの世を去ったあとも揶揄われ続けてるような気がするの、自分が書いた伝記をエドウィンにほらみろって見せられないからじゃないのか
    途中途中に出てきたエドウィンが伝記を嘲笑する描写に本人の前じゃなくて作品のなかで反論してたからずっとモヤってるんやろ?

  • おもちゃ箱と宝箱をひっくり返したような物語。その、ひっくり返して出てきたもの一つ一つに、まんべんなく焦点が当たるような。全部読み終わって、どこからがフィクションなんだっけ?としばらく考えてしまった。

  • 私が読んだのは、単行本で「エドウィン・マルハウス―あるアメリカ作家の生と死」(2003/8)だったけど、文庫化にあたってタイトルが短くなったのが、エレンディラ同様に寂しい。
    岸本佐知子は悪くない。

  • 描写がくどくて読むのがつらい小説だった。

    しかし、途中、エドウィンの死が決まり、これは小説を覆す反小説だと確信できたところ、全てがスルスルと飲み込めた。

    なんと野心的な作品だろうか。
    晦渋な小説内小説、小説内批評などを駆使しながら、死をも虚構する小説の見えざる虚構性を突き崩してしまっている。

  • ある天才少年が、夭折した親友の少年の伝記を書いた、という体裁。更には、その著者たる少年もどうやら行方不明になっているらしき導入部分があるんだけど、そこを二重にしている意義はちょっと不明(自分的に、最後までそこが気になったんだから仕方ない)。それはともかく、書かれているのはほんの10歳ちょいまでの短い一生なんだけど、内容はとても濃密。ちょっと気難しそうで、何を考えているのかも分かりづらいマルハウスくんだけど、そのせいで素っ頓狂な行動に出てしまう場面も多く、結構にシリアスな人生ながら、思わず微笑ましくなる部分もちらほら。マルハウスくんを悩ませる脇キャラも個性的で、読んでて飽きさせられない。評判通り、傑作の架空伝記小説でした。

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著者プロフィール

1943年、ニューヨーク生まれ。アメリカの作家。1972年『エドウィン・マルハウス』でデビュー。『マーティン・ドレスラーの夢』で1996年ピュリツァー賞を受賞。『私たち異者は』で2012年、優れた短篇集に与えられるThe Story Prizeを受賞。邦訳に『イン・ザ・ペニー・アーケード』『バーナム博物館』『三つの小さな王国』『ナイフ投げ師』(1998年、表題作でO・ヘンリー賞を受賞)(以上、白水Uブックス)、『ある夢想者の肖像』『魔法の夜』『木に登る王』『十三の物語』『私たち異者は』『ホーム・ラン』(以上、白水社)、『エドウィン・マルハウス』(河出文庫)がある。ほかにFrom the Realm of Morpheusがある。

「2021年 『夜の声』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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