デカメロン 中 (河出文庫 ホ 6-2)

  • 河出書房新社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309464398

感想・レビュー・書評

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  • 中巻、10日間のうち4日から7日目の物語です。

    坊さん(教会)の悪口に飽きたのか、この巻は恋の話が多いです。しかし不倫多いですね。いや、別に良いのですが。

    不倫じゃなくても「娘の親の許しさえ出ればすぐにでも娶ろうと2人の青年はいずれも色めき立っている。もし申し込みが断られた際は、たとえいかなる手段を講じてでも、女を我が物にしようと2人とも心中思っている。」と穏やかでない。

    とは言え、この時代も無法世界ではありませんから、不倫も掠奪もバレるとタダではすみません。特に不倫が見つかった女性は命懸け、現代の芸能界より厳しいです。

    そこまで恋愛に命をかける。やはり娯楽が少ないからでしょうか?それともイタリアだから?

    とは言え、恋愛話やそれに絡む艶笑話はさほど面白くありません。エロの表現では日本に分があるようです。

    一番面白かったのは本文ではなく、六日ニ話の注釈「鴨川の水でも汲んで、お帰りなはれ。」かな。なるほど解りやすい。

    追加情報
    文庫本表紙の女性が猟犬に襲われている絵は5日8話目のフィロメーナのお話しからのカットです。

  • 中巻には第4日~第7日の40話分を収録。以下、印象に残った話をいくつかピックアップ。

    ○第4日第5話:恋人を兄たちに殺害された妹が、その遺体の首だけを持ち帰り植木鉢に隠してバジリコを植え大切に育てるも、また兄たちにバレて取り上げられ悲しみのうちに嘆き死んでしまう。サロメや安吾の桜の森の姫君、倉橋由美子の「アポロンの首」「ポポイ」等、古今東西、女性が「首」を愛でる話は結構多い気がします。

    ○第4日第9話:親友に妻を寝取られた男が、復讐のためにその親友を殺害し心臓を抜き取って、調理して妻に食べさせる。事実を知った妻は窓から飛び降り自殺。グリーナウェイの映画「コックと泥棒、その妻と愛人」やシェイクスピアの「タイタス・アンドロニカス」を思い出しました。こっそり人肉を食べさせるって、復讐手段の極北だよなあ。

    ○第5日第8話:立派な騎士が2匹の犬を追い立てて全裸の女性を追い掛け回し、殺害してその内臓を犬に食べさせるも、しばらくすると女性は再びもとの姿で立ち上がり逃げはじめる。実はこの女性も騎士もすでに死者で、生前、この女性は自分に想いを寄せてくれた騎士を邪険に扱い、彼が焦がれ死にした後も嘲笑ったので、死後にその罰を受けている。なんともプロメテウス的で恐ろしい。しかし話の結論としては、だから女性は言い寄ってくる男性の愛情には応えるべし、というもので、ちょっと一方的な気がしなくもない。いくら熱烈に言い寄られても、タイプじゃなかったら、しょうがないじゃんねえ(苦笑)ちなみにこの河出文庫版の表紙絵ボッティチェルリ「ナスタージョ・デリ・オネスティの物語」はこの場面を描いたもの。

    ○第5日第10話:結婚したら実は夫がホモだったことが判明、欲求不満に陥った妻は美青年を連れ込むが、夫に見つかってしまう。夫は妻と間男を非難するが実は口先だけ、間男の美青年の手を握ってご満悦。その後3人がどうなったかは、みなまで言いませんよ、というオチ(笑)ここまでで同性愛者が出てきたのは初めてかも。

  • パンデミック下の14世紀イタリア。貴族の若者たちによる面白おかしい百物語。中巻は4日目~7日目の40話。

    第四日はバッドエンドの昼ドラ、第五日はハッピーエンドの昼ドラ、第七日はドロドロな昼ドラ、といった感じで、恋愛のもつれやエロ話が出てくるわ出てくるわ。といっても下世話なだけではなく、切なさや勇敢さ、機知に富んだ展開などもあり、そこに見られる男女の感情は700年も前に書かれた本とは思えないほどリアリティにあふれている。

    この中にあって一息つかせるためなのか、第六日だけは雰囲気が異なる。「冷やかされても言い返し、すばやい返事や判断で、危険や身の破滅や世間の嘲笑をかわしおおせた人々について」というテーマが提示され、トンチの効いた切れ味の鮮やかな短い話が続き、本巻では非常に面白い部分だった。

    ここまでで個人的には、本作で最も長いという第二日と、最も短いという第六日が好みだ。とはいえ、どの話も本当に面白い。ゴシップって、いつの時代も人を引きつけるのだなぁ。

  • 3巻からなる大作の中巻は4日目から7日目の計4日間・40話を収録しています。

    当『デカメロン』ですが、実は毎日テーマが決められ、話が展開していきます。例えば4日目は「その恋が不幸な結末を迎えた人の話」、7日目は「女たちが夫に対してやらかした悪さの数々」など。でも、艶話・面白話もこうも続くと、多少の変化が日々ついているとはいえやはり少し飽きを感じてしまいます。

    そんなことをたらたら考えながら読んでいましたが、訳者平川氏の渾身の解説に大きな学びがありました。それはダンテとの対照性です。

    端的に言えば、ボッカチヨは寛容である、という主張。
    ボッカチヨはダンテを尊敬し、作品も相当読み込んだらしく、作中でしばしば『神曲』の構成や言い回しを借用している箇所があります(懇切丁寧に注が付いています)。ところがそのスタンスたるや対照的というのが平川氏の意見。曰く、ダンテは旧来の教会を批判しつつも結局キリスト教至上主義的で、他宗教(ユダヤとイスラムです)を異教徒として排他的・攻撃的に扱う一方、ボッカチヨは本作でユダヤ教徒・イスラム教徒を悪者扱いすることもありません(寧ろ国内のヴェネツィア人への揶揄が多い)。またダンテが信賞必罰・因果応報的な世界観を展開している一方(煉獄の様子の描写ですからねえ)、ボッカチヨの作風はより人間の本性・欲求を描いており、当然これに対して同情的なスタンスであることが見て取れます。

    ルネサンスは人間中心、などと言いますが、宗教的ストイシズムがどうにも自然ではないことを筆者ボッカチオが表現しようとしていたとすれば、やはり本作こそがルネサンス文学の代表にふさわしいと思った次第です。

    そう考えれば、本作も単なるエロ話集成ではなく、寧ろ人間の欲求を認めたうえでどう倫理や規範をファインチューンするかという実践的な議論の発射台にもなりうる、と考えることもできるのかもしれません。

    ・・・
    それにしても、本作の註を読んでいて、つくづく翻訳というのは難しそうだなあと感じました。地名をイタリア語読みするか、日本での通称を使うか、などの呼称の統一から始まり、なるべく文章を字義通り訳す努力を続けつつ必要な個所については意訳を大胆に導入するなど。意味が不明瞭な個所はドイツ語訳・英語訳・フランス語訳を適宜参照し、意味の把握に努める(註にその顛末も明記)。加えて、ダンテはじめ過去の作品の言い回しやオマージュについてもきちんと註を打って、読者により深い理解を促す。
    これは大仕事です。

    私は仕事では英語を使っていまして、機会があったら翻訳で小遣い稼ぎでもできないかなーと普段から淡くよこしまな思いを抱いていたのです。でも、自分の普段使いの外国語運用・翻訳は、文学作品の翻訳とは大きく乖離する、というか真逆であることを思い知りました。

    私はメールにせよ、会話にせよ、『要は何か』という点にフォーカスし読み・書き・しゃべります(ある意味業務上のコニュニケーションはぶっきらぼうでbluntかもしれません)。やりとりは、大意・本意を読み取ることが第一で、その内容の要点を上司に報告するとなると、顛末のほんの一部の中心しか(あえて)話さないのです。
    この調子で翻訳をしたら、意訳だらけの要点だけの味わいもへったくれもないレポートができること間違いありません。

    翻訳者の日々の仕事に感謝をしたくなった今日この頃です。

  • 上巻に比べ若干癖がある感じ。読み終わるのに時間がかかった。前半は悲劇的な内容が多かったが、中盤以降は軽い笑いに落ち着くものが増えてきて読みやすくなった。
    木の上で不倫する人を見てるのに、説得されて幻影と思い込む話は、想像するだけでも面白かった。

  • 第4日〜第7日

  • 中巻に入りどんどんデカメロンワールドにハマっています!
    そして平川訳の調子にも!

  • 上巻に記載

  • 中世フィレンツェの世界

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著者プロフィール

1313年イタリア生まれ。ルネサンス期を代表する文学者。著書に『フィローコロ』『フィアンメッタ夫人の哀歌』『コルバッチョ』など。

「2017年 『デカメロン 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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