デカメロン 下 (河出文庫 ホ 6-3)

  • 河出書房新社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309464442

感想・レビュー・書評

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  • 下巻には第8日~最終日第10日までの30話分を収録。相変わらずコミカルなエロネタが多いけれど、最終日の10日目に限り、下ネタ控え目、人格者の善行や友情ものなど「良い話」でまとめられています。8~9日目は珍しく同じ人物の笑い話が複数収録されていたりして、これまでとちょっと毛色が違う感じ。全100話ともなると終盤にはそろそろネタ切れ気味なのか、ちょっと既視感おぼえる逸話も多かった気がする。

    8日目あたりから頻繁に登場するのが、悪知恵ばかりはたらくブルーノとブッファルマッコの二人組に、からかわれてばかりのちょっとオバカなカランドリーノ。その他、話によっては被害者にも加害者にもなる医者のシモーネ、カランドリーノの妻テッサ等がおなじみの登場人物。印象的だったのは第9日目3話の、カランドリーノが妊娠する話。もちろん男性がホントに妊娠するわけはなく、医者のシモーネがぐるになって「お前さんは妊娠してる」と騙すわけですが、その診察結果を聞いたカランドリーノが「そんなことあるわけない」とは決して言わず、むしろ妻に「お前が上に乗るから俺が妊娠した!」と詰め寄るあたり、よくできたコントのよう(笑)ただ、悪い人間ではないのに毎回騙されてばかりのカランドリーノはちょっと気の毒だし、巻き添えをくう妻のテッサはもっと気の毒。

    同様に、ん?これって面白いの?と思う結末のものがチラホラ。例えば色欲にまみれた司祭が痛い目に合わされるとか、困難にぶつかった人物が頓智でそれを切り抜けるとかは痛快だけれど、とくに悪いことをしてない人物が酷い目に合されたり、あるいは生意気で夫に従わない妻を夫がボコボコに殴って翌日から妻は従順になりましたとさ、みたいな話とか、フェミニストならずとも、え、それっていい話?と首をかしげたくなるオチのものも少々あり。

    最終話になる第10日目の10話も、素晴らしく良くできた妻を得た男が、妻の愛情を試すために色々と酷いことを繰り返し、それでも妻はひたすら夫の仕打ちを耐え忍び一切逆らわない、そんなことを十数年にわたり繰り返してやっと夫は「今までのはお前の愛を試しただけだった。よくぞ耐え忍んだ、合格だよーん!」と打ち明け、めでたしめでたし・・・って、どこがめでたいんじゃーい!(ちゃぶ台ガッシャーン!!!)解説にもありましたが、これは「ヨブ記」における、ヤハ男とヨブ子の構図そのまま。しかし自分で書いておきながらボッカッチョもイライラしていたのか、なぜか話の最後に「こんなクソ旦那には、もっとしょうもない女がお似合いだと俺は思うけどね!」的なコメントを付け加えており、じゃあななんで最後の最後にこの話入れたんだっていう(笑)

    まあそんな感じで100話語り終えた10人の男女はこれで解散し、それぞれ自分の家に帰りましたとさ、で、おしまい。もともとはペストから逃げるために集まった男女なのに、話の内容はお気楽でシニカルな艶笑譚中心で、シリアスにならないのが良いですね。それぞれの話の舞台もイタリアだけにとどまらず異国情緒のあるものや、魔法が出てくるようなものもあって、幅広く飽きさせないし、下ネタもおおらかで楽しく読めました。

  • 14世紀のペスト下で巣籠もり中の、男女10人による百物語を、21世紀のコロナパンデミック中に読もうと購入しましたが、めちゃめちゃ時間がかかりました。

    イタリア人の名前に馴染めず、10人のうち誰が男性かも分からないまま読み進めましたが、やがて、それぞれが物語りを始めると登場人物も爆発的に増え、収集がつかない事に。読むスピードも極端に遅くなりました。

    4日目ぐらいで気付きましたが、Oで終わる名前が男性、Aで終わる名前が女性ですね。ネイーフィレだけ例外で女性です。これから読む方はこの点を押さえて読んだ方良いです。常識だったらすいません。ただ、10人が語る物語の中の登場人物は時代が違ったり、そもそも異邦人だったりするのでこの法則は当てはまりません。

    10人それぞれの性格とか関係性まで読み解こうとするとドツボにハマります。なんか主要人物を除いて、作者のボッカッチョも設定がいい加減なんだそうです。とは言え、重要な役回りを担った人物や、恋愛関係にあった人物もいるようで、なかなか難しいです。


    下巻は10日物語の8日目から最終日10日目まで。
    8日目、9日目は作者のボッカッチョも筆が乗ってきて絶好調。鈴付きの小太鼓だの、すり鉢とすり粉木だの、毛皮だの、どこまでが普通の話で、どこからがエロティックな例えなのかもはや判別できません。
    最終日は一転してお行儀が良い話。巣籠もり生活を脱して社会復帰する準備でしょうか。最後は爽やかに終わろうと思ったのかもしれません。
    しかしながら、『欲望を抑えて体面を保ったロリコン老王』とか、『初夜に親友と入れ替わった話』とか、なかなか爽やかに成り切ることが出来ません。
    極めつけは最終話の問題作です。この話しはペロー童話にもグリゼリディスとして収められているので、ご存知の方も多いかも知れません。私もペロー版を読んだことがありました。チョーサーのカンタベリー物語にも同じ話が出てくるそうです。
    まあ、寓話なんでしょうが、話者ディオーネオ(もしくは作者ボッカッチョ)も否定的、wikiによるとカンタベリー物語のチョーサーも「自分の妻を試す夫なんて愚か者だ」と注釈しているそうです。
    なのに、何故収録するのか。
    デカメロンに描かれる世界は、保険制度など現代とあまり変わらない社会的仕組みを有している面も有りますが、身分格差や男女格差など人権意識はかなり低めです。処罰意識もかなり強めで残酷。さすが14世紀!
    ボッカッチョは艶笑話の体をとりながらあからさまにこれらを取り上げる事によって、当時の宗教的社会的常識や価値観に疑問を呈したかったのではないでしょうか。
    しかるに700年経った現在でも、これらが払拭された訳ではありません。取ってつけたような用語でレッテルを貼って満足するのではなく、まだまだボッカッチョのように異議申し立てし続けていかなきゃいけないんだなぁと感じた古典名作読書でした。

  • ルネサンス初期に掲げられた、ヨーロッパにおける物語文学の最高傑作の一つ。下巻は8日目~10日目の30話。

    第八日以降は話の様相がガラリと変わり、西洋文学史上の重要な位置を占める『デカメロン』が、単なる艶笑談の寄せ集めではないということを実感した。

    第八日はイタズラや悪だくみがテーマとなり、笑えない悲惨な話や壮絶な復讐譚などが続く。ここで数話に渡って同じ三人組が登場するが、どれも気持ちのよくない話で読んでいる方も凹む。しかしその分、学びのある話ではある。第四話や第十話のように痛快な話もある。

    第九日はテーマなしとなり、教訓のある話や笑い話などで十人の若者たちの空気は少しなごむ。そこで第十日は愛や善行についての、ハートフルな感動話に移っていく。この第八日でいったん落としてから盛り上げていく構成が、単なる短篇集とは異なる枠物語の面白さだと思った。特に第十日の第三話、第四話、第五話と次々に前話の感動を上回っていく話の流れは圧巻だった。本書の多くの部分であれほど情欲に溺れる人間の弱さを描いておきながら、今度はそれらを克服する人間の高潔さを示して感動を誘うのは極端にも思えるが。第十日第九話は最高に美しい話で、ここでキレイに終わればよかったのだが、次の最終話で物議を醸すような物語を例のディオーネが語り、本作がただならぬ深みを持つ作品であることを痛感させられた。

    平川祐弘先生は過去の翻訳も参考にされており、ダンテとの関連、当時のイタリア周辺の政治的・文化的背景など、注釈が非常に詳しい。解説もこれだけで一冊の本にできるほど詳細だ。ゆえに今からデカメロンを読むなら本訳は外せないと思う。物語の内容だけ楽しむのみならず、ここからあらゆる方面へ知識と関心を広げていけることだろう。

  • 上巻・中巻に続き、本巻が最後。8-10日にわたる30話を収録しています。
    話の内容は相変わらずトンデモ話やエロ話なのですが、一番強烈だったのは第9日第10話。ピエトロ親父の妻を神父さんが魔法で雌馬に変えるお話。生々しくて粗筋を書くのも躊躇する笑。興味がある方は是非読んでみてください。

    他方、第10日は「愛やその他のことについて、立派なことをした人の話」というテーマが掲げられます。ここではこれまでと趣向がやや異なり、理性・忠節・貞節・騎士道といった美徳・人徳が発揮されたエピソードが描かれます。

    ですから、とりわけこの下巻を読み終えて感じたのは、人間の振れ幅の大きさ。邪悪にもなれれば気高く振舞えることこそ人間の特徴なのだなあとひとりごちた次第です。

    かつてドイツの哲学者のマックス・シェーラーはこのような人間の可塑性を世界開放性Welt-offenheit (ドイツ語怪しいです) と表現しましたが、本デカメロンはそのような人間の特性をありありと表していると感じました。

    ・・・
    中世文学の金字塔たるデカメロンは後世への影響も大きく、『エプタメロン』(7日物語。ヴァロア朝フランソワ1世の姉が記す)や『カンタベリー物語』(英国版デカメロン)が模して著わされました。こうした作品も機会を見つけて読んでみたいと思います。

  • 好きな話がいくつかあった。しっかりメモもとってある。そもそも難しすぎて読むことができない哲学書、専門書と違って、作り話を馬鹿にせず、楽しむ姿勢さえあれば、難なく最後まで読み切れるはずだ。

    休憩中に『デカメロン』を(もちろんカバーはつけて)読んでいると、「何読んでるの?」と聞いてくれる人がいた。『デカメロン』に関して、「名前は聞いたことある」という人はちらほら。「読もうと思ったが、面白さがわからず断念した」が2名いた。

  • ナヴァール王妃のエプタメロンも読んでみたいな~と思って探してみたら、ちくま文庫のは27/72しか載ってない抄訳だとか。
    完訳は澤木譲次さんのエプタメロン上下巻かな?ただし電書しかないという。
    紙の本で読みたい!
    他はアウロラ叢書の単行本なら売ってそうだけど…。

    感想はブログの方へ。
    http://moondrops2017.blog.fc2.com/blog-entry-2717.html

  • 第8日〜第10日

  • 文庫でない河出書房で読んだ。文庫よりも文字が小さかった。さらに解説が半端でないほど長く、ほとんど1日分ぐらいある。しかもデカメロンの解説が最初の解説と、他の作品の解説の後と二重になっていた。
     これを読んでわかるのは観光で有名なイタリアという国が貴族社会であり、かっては教会社会であったということである(今でもそうかもしれないが)

  • 上巻に記載

  • こんなに素朴な話に感動するとは
    素朴な話だから感動させるのか

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著者プロフィール

1313年イタリア生まれ。ルネサンス期を代表する文学者。著書に『フィローコロ』『フィアンメッタ夫人の哀歌』『コルバッチョ』など。

「2017年 『デカメロン 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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