ボルヘス怪奇譚集 (河出文庫)

制作 : Jorge Luis Borges  Adolfo Bioy Casares  ホルヘ・ルイス ボルヘス  アドルフォ ビオイ=カサーレス  柳瀬 尚紀 
  • 河出書房新社
3.88
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本棚登録 : 172
レビュー : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (185ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309464695

感想・レビュー・書評

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  • ボルヘスとビオイ=カサーレスが選りすぐった
    古今東西の奇妙な断章、92編。
    表題に「怪奇譚」とあるが、読んでみると怪奇色は薄い。
    むしろ小さく笑ってしまうシュールで滑稽な情景が並ぶ。
    次々にページを繰って短い物語に触れ続けると、
    まるで夢の入れ子に囚われたような感覚に陥る。

    以前どこかで読んだはずの断章もあるのだが、
    詳細を思い出せずモヤモヤしながら、
    敢えて確認せずに「心地いい居心地の悪さ」を愉しんで
    ムズムズするのも一興かと。

    英語版からの重訳で、日本語訳は柳瀬尚紀先生。

    ちなみに、解説によると、
    世界中から掻き集めたお話の中に、
    ちゃっかり偽書=ボルヘスの創作が紛れ込んでいるとか。

  • 20世紀ラテンアメリカの作家ボルヘス(1899-1986)が編んだ、古今東西の書物から引かれた幻想的な掌編のアンソロジー。

    「文学が与える数多い楽しみのひとつは、物語の楽しみである。・・・。物語の精髄は本書の小品のうちにある、とわれわれは自負する」



    解説によると、ボルヘスの編むアンソロジーに収められた小品の中には、その典拠の存在が確認できないものもあり、実はボルヘスが創作したものを紛れ込ませている可能性があるらしい。何とも愉快なことだと思う。別の作品の中でこんなことを言っている。

    「書物に署名するのはおかしなこと。剽窃の観念は存在しない。すなわち、あらゆる作品が非時間で無名の唯一の作者の作品であることが定められた」(『伝奇集』)



    夢/現、死/生、過去/現在/未来、原因/結果、裏/表・・・無限遠の始まりから無限遠の終わりへと走る両端なき直線が、くるっと捻じ曲げられて、ウロボロスの蛇よろしくその円環を閉じ、始まりも終わりもない無限循環がただそこにいつまでも残り続ける。掌編ゆえにその前後に感じられる余白は、却ってその物語が無限の円環の一部に過ぎないことを思わせて、自分が時間的にも空間的にもすーっと遠くに高まっていく感覚に襲われる。そのとき読み手である私は、卑近な不安や不機嫌をすべてどこかへ置き去りにして、透明になる。

    この奇妙な「高度の感覚」について、澁澤龍彦の次の文章を目にしたとき、なるほどと思った。

    「・・・、しかしボルヘスの死には奇妙な明るさがある。かつて稲垣足穂さんが亡くなったとき、すでに生きているうちから、とっくに永遠の世界に入ってしまった感のある稲垣さんが亡くなっても、それほど悲しみの気持ちは湧かないと書いたことがあるが、八十六歳のボルヘスの死に接しても、それと似たような気持ちを私はおぼえる」(「ボルヘス追悼」)

    柳瀬尚紀は訳者あとがきで本書を「《反復》のアンソロジー」と呼んでいる。

  • タイトルにボルヘスとついているけれど、ボルヘスの作品ではなくボルヘスとカサーレスが収集・編纂した各国の民話や伝説、有名な作家の小説やその断片等「短くて途方もない話」のアンソロジー。1作あたり短い物だと数行、長くても4~5頁なので、もうちょっとだけ、あと一つだけ、と思ってどんどん読んでしまって、あっという間に読み終えてしまった。

    怪奇というから幻想ホラー系かと思いきや、あくまで「怪しく」「奇妙な」話、おもに夢にまつわる話が多く、いかにもボルヘスの好きそうな不思議譚、もしくはさも本当のことのような虚構、ちょっとしたブラックユーモアやクスっと笑える話までさまざま。個人的には夢と現実が入り混じるような話、物語の登場人物と作家の区別がつかなくなるような系統の話が好き。

    出典ジャンルがさまざまで、たとえば荘子の胡蝶の夢とか、千夜一夜からの抜粋、カフカ始め有名作家の引用などは原典が確実だけれど、これってしれっとボルヘスの創作にもっともらしい作家名とタイトルつけてあってもわからないよな~なんて思いながら読んでいたら、解説でやっぱりその疑いのある作品も混ざっているらしきことが書いてあって、そういう架空の本の捏造悪戯心もいかにもボルヘスっぽい。

  • 物語の精髄は本書の小品のうちにある、と我々は自負する。
    —緒言より

    古今東西から集めた短くも偉大なものがたり。どの時代も変わらぬ物語の楽しみを思い出させてくれます。
    元ネタはボルヘス達のアイデアではないにしろ、抜粋や要約の巧みさをみるに、もはや新しい作品と言えるのではなでしょうか。
    短いタイトルが興味をそそるし、作者名を最後に提示するのも、驚きがあってよいです。時代や素性の分からないまま文そのものを読むと言う経験は、あまりないものです。
    しかも、しれっとボルヘスたちの創作も混じってるとのことで、演出にきゅんとしました。

    特に好きなのは以下。
    「隠された鹿」「夢」「囚われものの誓い」「天空の雄鹿」「社交の上首尾」「物語」「学問の厳密さ」「不眠症」「狐の話」

  • 古今東西の書から集められた92篇。『千夜一夜物語』、キケロ、古代インド説話、O・ヘンリーの遺作など、出典ジャンルは様々。しかしここに抜き出された断片は、わずか数行の物語でも、まぎれもなくボルヘス世界になっているのがすごい。ボルヘスの圧縮を極めたソリッドな物語には、何度読んでも”慣れる”感じがしなくて、毎回驚きを新しくする。エキゾチックな古代ものや、『シナの長城』での王か飛脚かの奇妙な二者択一から生まれたSF的情景などが面白い。「汽車」(サンチャゴ・ダボベ)のメビウスの輪のような雰囲気も良かった。ビオイ=カサーレス共編(1967)

  • 2018-4-11

  • 引用の思わぬ効果。物語の表情が怪しく翳った一瞬を切り抜く。

  • ボルヘスが世界中から集めた92の掌編・短編が収録されている。怪奇というより幻想小説っぽいのが多いが、どれもとても面白い。とくに「汽車」か物語としても構成・文体としてもすごくよかった。
    ちなみに、各話に典拠となる書名とその作者が明記されているが、それらがすべて本当かどうかは疑わしいらしい。どんなに調べても書名や作者名がここ以外で見つからないものがるそうで、もしかしたらボルヘス自身が書いたオリジナルかもしれないと。世界中から掌編・短編をあつめた、というそのこと自体がフィクションかもしれないわけで、いかにもボルヘスらしい感じがする。

    なお、北村薫の短編「水に眠る」の元ネタと思しき短編をこの本で見つけた(エドガー・アラン・ポーの「水の島」)。水の層にナイフを入れるて分離する、というイメージが偶然似通うことはなさそうなので、まず間違い無いと思う’。調べた限り両者の関連について言及しているものは見当たらなかったが、実際どうなんだろう。
    55

  • いやー私これダメだわー。全然刺さらない。多分ボルヘスどハマりしてた時は違ったんだろうな。残念。いまはふつうに物語のぜんぶが読みたいんだろな。

  • こんな話あったけ?とか、で、その続きは??ってなってしまうような逸話やらを並べられてしまった。。。
    『古今東西の書物から選びぬいた…』とかあれば、元書が気になるし、自分の記憶も気になったりするが、最後に解説を読んで…Σ(゚д゚lll)ガーン

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