死に山: 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相 (河出文庫 ア 13-1)
- 河出書房新社 (2023年10月6日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309467924
感想・レビュー・書評
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ドニー・アイカー『死に山 世界一不気味な遭難事件《ディアトロフ峠事件》の真相』河出文庫。
1週間の海外出張で、なかなか読書が捗らなかった。4日も掛かってようやく読み終えた。
テレビなどでも紹介された『ディアトロフ峠事件』の真相に迫るノンフィクションである。
遭難した9人の若者たちの視点と事故現場と遺体を発見した捜索隊の視点、事件の真相を明らかにしようと関係者へのヒアリングを行い、事件現場まで赴いた著者の視点とが交互に描かれる。
旧ソ連時代の状況や様々な制約の中で、過酷なトレッキングに挑戦した若者たちの様子、事故後の混乱などがリアルに描かれる。
冷戦下のソ連、1959年にウラル山脈でウラル工科大学の学生を中心とした9人の若者が犠牲になった謎多き遭難事件。当時はKGBによる情報統制や様々な憶測により『未知の不可抗力』として片付けられた。
著者は50年以上前に起きたこの事件を明らかにしようと多くの関係者へのヒアリングを行い、事故現場の調査に向かう。
そして、明らかになった事故の真相とは……
定価1,210円
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「ディアトロフ峠事件」。1959年、冷戦下のソビエトで起こった未解決遭難怪死事件。氷点下の雪山、テントから離れた地点で登山チーム9名の遺体が発見された。皆衣服や靴を脱ぎ、頭蓋骨や肋骨を骨折する重傷。遺体からは高濃度の放射能が検出。最終報告書には、「未知の不可抗力によって死亡」と記された。
ディアトロフ峠事件の全貌と真相を描くノンフィクション。
若く、友情と幸福に満ちていた経験豊富なトレッカーたちは、なぜ遭難し異常な状況で死亡することとなったのか?
おそらく世界でも1,2を争うほど有名な遭難事故、「ディアトロフ峠事件」の真相に迫るノンフィクション小説です。
正確には、遭難したトレッカーたちの様子、その後出された捜索隊たちの様子、事件の取材をする作者の記録が代わる代わる語られる形式ですので、厳密にノンフィクションとは言い難いのかもしれませんが、事件当時のトレッカーたちの様子なども日誌や病気で途中で引き返したグループ唯一の生存者の話などをもとにして推定・補完したものとなっています。
旅の途中でトレッカーたちが撮った写真が何枚も載っており、それがまた普通の仲良し大学生グループのように笑いあったりはしゃいだりしている写真ばかりなのが悲しい。あったこともないのに、彼らの間に確かにある友情が見えるようです。
実際に事件が起こった現地に行ったり、関係者から話を聞いたりとかなり詳細に調べている印象ですし、作者さんがその結果出した一応の結論(真相)も語られていますが、それでも実際の所真実がどうだったのかは分かりません。事実、本作(の単行本)出版後の2021年に、小規模な表層雪崩が事件の原因だとする論文もでています。
それでも、明らかになった情報や出された結論が、少しでも遺族の方の心のよすがになればと願わずにいられませんでした。 -
初っ端から、ゾゾっとする不可解な9人の遭難者達の発見時の状況。何故?
ラスト、著者の戦略、シャーロック・ホームズの原則消去法で一つづつ否定されていく...
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嗚呼、雪山…
雪山に、憧れている。とてつもなく。なんというか、本当に恋焦がれている。雪の降らない場所に住み、山登り…高尾山、登山って言っても、いいのかな…という、このわたくし、わたくしは…雪山に…とてつもなく…恋慕の情を抱いている…。それは、そう…これもすべて…………闇の左手…嗚呼、惑星"冬"…
という不純な動機で読み始めた本書。先に読んだ家族がニヨニヨしながら、読んだ?読んだ?と待っていた。やっと、読み終わりました。(一ヶ月くらいダラダラ,寝しなに読んでいた)なんとまあ…。
アンタははやく、孤高の人を読みなさい。と言われたので、雪山読書を計画中。 -
1959年の冬にウラル山脈での遭難事故
直前まで、はつらつとしていた経験豊富な大学生トレッカーたちはなぜ全員死亡したのかという謎をアメリカ人が丹念に追う
超低周波音とカルマン渦列という自然の不可抗力によるものと推測された
事件とその推理よりも、ウラル山脈に住むマンシ族の人びとに心打たれた
現在マンシ族を名乗るひとは多くなっているそうだがマンシ語を話すひとは少ないらしい アメリカのネイティブアメリカンのように住むところが狭められてるようだ -
実際に起こった事件に基づいているため、読み進めるうちに強烈な臨場感に引き込まれました。まるでその場にいるかのような緊張感と恐怖が伝わってきます。事件の不可解さや登場人物たちの恐怖がリアルに描かれており、途中で中だるみもなく、一気に読み終えることができました。
また、物語が最後に向けて徐々に謎が解かれていく様子が非常に巧みに構成されており、最終的にしっかりとした結論が示されるのが良かったです。読後には、事件の謎に対する納得感と、余韻が心に残りました。
不気味さや謎解きの要素が好きな方には、ぜひおすすめしたい一冊です。