時刻表2万キロ (河出文庫 み 4-1)

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 36
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309470016

感想・レビュー・書評

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  • いまのJRが国鉄と言われていたころの、味わい深い鉄道の旅。

  • もと中央公論誌の編集長という平日の顔を持ちながら、国鉄時代の2万キロを乗り切った宮脇俊三先生。鉄道好きの人種からすれば、教祖さまのような存在と言えるのでしょう。
    完璧に時刻表を読みこなし(あるいは全部頭に入っていそうな)、乗り換えや乗り継ぎで失敗するようなことは断じてなく、乗ることを使命としているような、そんな鉄人を想像していたことは事実です。

    金曜日ともなると、駅にまっしぐら。未乗の区間をつぶすべく寝台列車の乗客となり、まだ乗っていない区間を乗りきるためだけに現地へ向かう。
    道中、たまには意外と普通な失敗をやらかしたり、地元の名物の誘惑にあらがえずに途中下車してしまい、ほんの少しだけ未乗区間を乗り残すというお茶目さも持ち合わせているおじさん。それがかの有名な宮脇先生の素顔だったのです。
    なんかイメージ変わるな~。

    中に出てくる路線の多くは、国鉄からJRへの分割民営化とともに廃線になってしまったものも多く、真似して乗りたい、と思っても、今はもうそれができないのが残念でなりません。宮脇先生の文章にも、「車内に乗客が自分以外に誰ひとりいない」とか、「雑草の茂る寂しい無人駅」などといった記述が散見され、いずれ廃線の運命をたどりそうなことは、乗りながらも先生は感じ取っていたようです。なくなる前に乗っておかなければ。それが2万キロ踏破の無言の原動力になっていたようにも感じます。

    それにしても、宮脇先生はローカル線の中で実にいきいきしています。乗り継ぎトリックを考えついて「これだ。ふふっ」とひとりほくそえみながら列車に揺られている様子や、駅で切符を買うのにあれこれ空席を調べてもらい、しまいには「お客さん・・・いったいどこへ行きたいの」と駅員さんにあきれられたり、と、なんだか楽しそう。
    度重なる遠征で、さすがに旅費がかさみ、ふところが寂しくなってきて、お酒をちょっとがまんしたりするところもほほえましいのです。

    最後に残っていた路線を乗り切り、悲願だった完乗を達成したというのに、満足感よりも心にぽっかりと穴があき、「乗るべき線がないから、もう書くことがない」としょげるさまも、「よしよし」と声をかけてあげたくなりました。

    しかし意外な形で物語は再開します。明治30年より悲願80年といわれた気仙沼線がめでたく開通したのです。新しい線ができたら、宮脇先生は乗らなければならない。1日たりとも100%を下回りたくないと、早速、開通の日に乗りに出かけます。きっと息を吹き返したように足取りは軽かったことでしょう・・・

    沿線の住民による花笠踊りや小旗、風船、祝福の様子。開通の日の地元の人の喜ぶさまを読んで、ぎゅっと胸をつかまれました。ここの路線は今回の津波で多くを流されてしまったのです。開通の日の乗客となった宮脇先生も、もちろん住民の方も想像すらしなかったことでしょう。特に、なぜか志津川駅での祝福の様子が細かに書かれていることに、せつない気持ちになりました。

    日本じゅうで、今はなくなってしまった寝台列車や特急・急行列車の数々や、車掌さんとのほのぼのしたやりとりを読んでいると、時代は変わってもやっぱり、「線路は続くよどこまでも」なんだなぁ・・・・と、あらためて、鉄道の旅を大切に楽しみたいなあと思うのでした。

    • Pipo@ひねもす縁側さん
      ふふふふ、父と弟が真性の鉄ちゃんなので、宮脇作品は刊行時から我が家に常備されています。もちろん、私もたまーに開いて楽しんでました(でも鉄度は...
      ふふふふ、父と弟が真性の鉄ちゃんなので、宮脇作品は刊行時から我が家に常備されています。もちろん、私もたまーに開いて楽しんでました(でも鉄度は限りなくゼロに近い・・・と思う)!
      2012/10/15
    • snowharpさん
      なんと!そんな素晴らしい環境で、よく道をはずさずに、いえ、鉄分過多にならずにいられましたね(^_^;
      リアルタイムでお手にとられていたとは、...
      なんと!そんな素晴らしい環境で、よく道をはずさずに、いえ、鉄分過多にならずにいられましたね(^_^;
      リアルタイムでお手にとられていたとは、うらやましい限りです。
      さあ、宮脇作品を鞄に詰めて、乗りましょう~!たのしいですよー♪
      2012/10/15
  • 旅本は面白い。
    初版は昭和55年!国鉄全線を制覇。調べてはないが、廃線になったところも多いんだろうな。

  • 国鉄全線、ニ万八百キロ完全乗車記録。圧倒的情報量。もちろんスケジュールはビルゲイツのごとく、すべて分単位で記されている。

    著者が最も好きなのは鉄道の旅そのものではなく、時刻表を読むことであるようで、緻密なスケジュールを立てたり、列車の遅延によるスケジュールの崩れを機転と工夫により華麗に立て直すところには筆に熱が篭っています。
    自分には時刻表をすき好む気持ちがあまり分からないので一歩引いた目線で読んでいたのですが、著者が感じた興奮そのものは幾らか受け取ることができ、読んでいて楽しかったです。

  • 過程がすごく丁寧。時刻表好きならなお面白そう。

  • 国鉄全線乗り尽した記録です。
    とにかく凄い!としか言いようがない一冊です。
    著者が乗ったころの国鉄は一日に数往復しかない
    盲腸線が非常に多かった時代です。
    その時代に全線、乗り尽すなんて信じられない。
    凄い、どころか、尋常ではない、どころか、もはや異常です。
    だからこそ鉄道好きや旅行好きには非常にお勧めします。
    鉄道で旅行することが大好きな私には非常に面白い一冊でした。 

  • パラダイス山元さんの飛行機本に鉄道マニアのバイブルと紹介されており、手に取った本。1978年の本なのに色褪せていない感じ。
    鉄道には全然興味ないが、何故だかすごく楽しく読めた。1分刻みのいかにもマニアックなところはふーん、と思いながらも読んでしまう。車窓からの風景の描写や、駅の雰囲気など、想像していると楽しい。最後の完乗のところで、時刻表を読むのが楽しくなくなって、完乗などしようと思わなければよかった、というのは共感できて少し寂しかった。

  • 宮脇俊三 「 時刻表2万キロ 」

    昭和53年 時刻表を手に国鉄全線を旅するエッセイ。こういう楽しみ方があるんだなーという本


    時刻表の愛読者がいることに驚く。時刻表は目的地に最短時間で着くための表にすぎないと思っていたが、時刻表通りに電車とすれ違う楽しみ、時刻表通りに乗換えることに楽しみがあることを初めて知った〜奥が深い。


    国鉄の全ての沿線を乗ることを目的とした旅。駅を出て 美味しいものや温泉を楽しむことなく、歴史を巡ることも、お土産を買うこともない。


    国鉄全線を乗り終えた著者の感想は意外だった「何かが終わり、何かを失った〜停年で退職したり、ひとり娘を嫁にやったりする気持ち」


    夕張線は乗ってみたい「夕張線は観光客なぞ乗らないが〜感銘を受ける線である〜石炭産業の現況が〜迫ってくる」

  • 中学時代に夢中になって何回も読み直した本であり、私の人生に大きく影響した1冊でもあります。
    ===
    中学1年の最初の国語の授業で、「あなた達はもう中学生になったんだから、今日からは少しずつ本を読みなさい。本屋さんに行くと、こういう小さい文庫本というのがいっぱいあって、これならあなた達のおこずかいでも買えるから」って言われたのを、今でも覚えています。
    でも、よくある「中学1年生にオススメの良書」みたいなのは、全然おもしろくなかった。
    そんなものイヤイヤ読んだところで、読書感想文なんて書けるわけがないし。
    読書も読書感想文ももちろんのこと、友達もいないから、学校そのものがどんどん嫌いになっていく。
    そんな、何もかもがおもしろくない毎日からの逃避みたいな感じで、学校の図書館でじっくりと1冊1冊のタイトルを見ていた時に、ふと目に留まったのがこの本。
    ちょっと読んでみたら、めっちゃくちゃおもしろくて、自分もあちこち旅をしてみたいと思ったし、将来は他人様のお金で旅ができる大人になりたいとも思った。
    それなりに読書する習慣が身についたのも、この本のおかげだと思います。
    ===
    宮脇俊三先生の文章は、あちこちから、深い教養や雑学の多さに驚かされます。
    カントとゲーテの区別どころか、プラトンとソクラテスとアリストテレスの区別が怪しい人も多い昨今。
    大正15年生まれ、iPadもGoogleMapsもWikipediaも無い昭和の時代に、宮脇俊三先生はどうやって身につけたんだろう?
    ……って考えると、やっぱり読書の積み重ねなんだろうなぁ
    意味のわからない日本語は、そのつど広辞苑で。
    地名は、いちいちGoogleMapsで。
    先を急がずにじっくりと取り組む価値のある1冊でもある、と思います。

  • 流石にここまでの極致になるとついていけないものがある、国鉄路線愛ここに極まれりです。
    ただちょいちょい出てくるヒトの観察模様が味があります。偏執(?)愛についていけなくとも、それを追っていけば、読者もどことなく達成感をほんのほんの少しだけ味わえたりして。
    しかし小松島港駅、ありましたなぁ。

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著者プロフィール

1926年埼玉県生まれ。78年、国鉄全線乗車記『時刻表2万キロ』を刊行し、日本ノンフィクション賞を受賞。『最長片道切符の旅』『時刻表昭和史』等多くの著作を残し、鉄道紀行文学を確立した。2003年没。

「2023年 『終着駅』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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