時刻表2万キロ (河出文庫 み 4-1)

著者 :
  • 河出書房新社
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レビュー : 25
  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309470016

感想・レビュー・書評

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  • もと中央公論誌の編集長という平日の顔を持ちながら、国鉄時代の2万キロを乗り切った宮脇俊三先生。鉄道好きの人種からすれば、教祖さまのような存在と言えるのでしょう。
    完璧に時刻表を読みこなし(あるいは全部頭に入っていそうな)、乗り換えや乗り継ぎで失敗するようなことは断じてなく、乗ることを使命としているような、そんな鉄人を想像していたことは事実です。

    金曜日ともなると、駅にまっしぐら。未乗の区間をつぶすべく寝台列車の乗客となり、まだ乗っていない区間を乗りきるためだけに現地へ向かう。
    道中、たまには意外と普通な失敗をやらかしたり、地元の名物の誘惑にあらがえずに途中下車してしまい、ほんの少しだけ未乗区間を乗り残すというお茶目さも持ち合わせているおじさん。それがかの有名な宮脇先生の素顔だったのです。
    なんかイメージ変わるな~。

    中に出てくる路線の多くは、国鉄からJRへの分割民営化とともに廃線になってしまったものも多く、真似して乗りたい、と思っても、今はもうそれができないのが残念でなりません。宮脇先生の文章にも、「車内に乗客が自分以外に誰ひとりいない」とか、「雑草の茂る寂しい無人駅」などといった記述が散見され、いずれ廃線の運命をたどりそうなことは、乗りながらも先生は感じ取っていたようです。なくなる前に乗っておかなければ。それが2万キロ踏破の無言の原動力になっていたようにも感じます。

    それにしても、宮脇先生はローカル線の中で実にいきいきしています。乗り継ぎトリックを考えついて「これだ。ふふっ」とひとりほくそえみながら列車に揺られている様子や、駅で切符を買うのにあれこれ空席を調べてもらい、しまいには「お客さん・・・いったいどこへ行きたいの」と駅員さんにあきれられたり、と、なんだか楽しそう。
    度重なる遠征で、さすがに旅費がかさみ、ふところが寂しくなってきて、お酒をちょっとがまんしたりするところもほほえましいのです。

    最後に残っていた路線を乗り切り、悲願だった完乗を達成したというのに、満足感よりも心にぽっかりと穴があき、「乗るべき線がないから、もう書くことがない」としょげるさまも、「よしよし」と声をかけてあげたくなりました。

    しかし意外な形で物語は再開します。明治30年より悲願80年といわれた気仙沼線がめでたく開通したのです。新しい線ができたら、宮脇先生は乗らなければならない。1日たりとも100%を下回りたくないと、早速、開通の日に乗りに出かけます。きっと息を吹き返したように足取りは軽かったことでしょう・・・

    沿線の住民による花笠踊りや小旗、風船、祝福の様子。開通の日の地元の人の喜ぶさまを読んで、ぎゅっと胸をつかまれました。ここの路線は今回の津波で多くを流されてしまったのです。開通の日の乗客となった宮脇先生も、もちろん住民の方も想像すらしなかったことでしょう。特に、なぜか志津川駅での祝福の様子が細かに書かれていることに、せつない気持ちになりました。

    日本じゅうで、今はなくなってしまった寝台列車や特急・急行列車の数々や、車掌さんとのほのぼのしたやりとりを読んでいると、時代は変わってもやっぱり、「線路は続くよどこまでも」なんだなぁ・・・・と、あらためて、鉄道の旅を大切に楽しみたいなあと思うのでした。

    • Pipo@ひねもす縁側さん
      ふふふふ、父と弟が真性の鉄ちゃんなので、宮脇作品は刊行時から我が家に常備されています。もちろん、私もたまーに開いて楽しんでました(でも鉄度は...
      ふふふふ、父と弟が真性の鉄ちゃんなので、宮脇作品は刊行時から我が家に常備されています。もちろん、私もたまーに開いて楽しんでました(でも鉄度は限りなくゼロに近い・・・と思う)!
      2012/10/15
    • snowharpさん
      なんと!そんな素晴らしい環境で、よく道をはずさずに、いえ、鉄分過多にならずにいられましたね(^_^;
      リアルタイムでお手にとられていたとは、...
      なんと!そんな素晴らしい環境で、よく道をはずさずに、いえ、鉄分過多にならずにいられましたね(^_^;
      リアルタイムでお手にとられていたとは、うらやましい限りです。
      さあ、宮脇作品を鞄に詰めて、乗りましょう~!たのしいですよー♪
      2012/10/15
  • 電車乗りの気持ちが伝わってくる。電車で旅に出たくなる。
    あと、線路って減ったんだなーと感じた。

  • この国にはかつてこんなにローカル線があったのか、こんなにも寝台列車や急行列車があったのか、ということを思い起こさせてくれました。

    http://naokis.doorblog.jp/archives/railway_timetable_20000km.html【書評】『時刻表2万キロ』1970年代の全線踏破 : なおきのブログ
    http://naokis.doorblog.jp/archives/survive_or_abolish.html【書評】『時刻表2万キロ』1980年の74路線の存続率は? : なおきのブログ


    2018.03.31 鉄道本を探していて見つける
    2018.06.14 読書開始
    2018.06.15 社内読書部で紹介する。
    2018.06.18 読了、朝活読書サロンで紹介する。

  • 国鉄全線踏破を果たした時刻表マニアの著者の記録達成の後半部分を記録した本。

    私が10歳頃に廃線となった故郷の旧国鉄線も出ており、非常に懐かしく読むことができた。この本で紹介されている多くのローカル線もその後の民営化に伴う合理化で廃線になっていると思うと物悲しい気持ちになる。

    それにしても週末ごとに遠方に出かける著者のバイタリティには恐れ入るし、このように熱中できるのが羨ましい。乗換えの細かい箇所は電車に詳しくない私には難しかったが、電車に詳しくなくても面白く読むことができた。

  • ”日本ノンフィクション賞
    新評賞受賞の旅好きにはたまらない1冊”

    「旅が好き」「電車が好き」というそこのあなた、
    「そんなの興味ないわ」というあなたにも、
    この本をおすすめしたいです。

    作品を通して、自分を見つめ直す旅にでませんか。

  • 1980(底本78?)年刊。「文藝春秋」の編集長でもあり、鉄道紀行文で多くの著を世に出した著者の処女作?。国鉄の90%を踏破していた著者の残10%の最終完乗までの記録である。時期は1975年~78年頃。盲腸線が多く観光名所僅少で、かつ全線完乗は多分に自己満足の所産でもあるため、後の鉄道旅行紹介文より自己完結臭さは否めないが、完遂に賭ける気持ちは十分理解できる(登山家が山に登るのと同じかな)。私自身は、時間の兼ね合いを勘案しつつ、飛行機よりは新幹線、新幹線よりは在来線、在来線なら鈍行を程のライトなレベル。
    一番暇な(=時間のやりくりが容易)大学時代に、殆ど乗っていないので(精々年に一回、一週間程度の北海道や九州旅行に、飛行機を利用しない程度。とても全線完乗は無理)、著者の偉業を指をくわえて観ているだけだが、この男の子っぽい熱意は全く微笑ましい。なお、東北新幹線開通前なので、寝台特急のみならず、夜行急行、在来線の長距離特急、昼間急行の最後の光輝が見て取れる。懐かしの名前がいっぱい。寝台特急「金星」、急行「くずりゅう」なんぞはその最たる例。

  • 鉄道紀行作家の大家、宮脇俊三氏のいわずと知れたデビュー作。
    発表当時の反響がいか程であったか、当時5歳だった僕がリアルに知る由もありませんが、鉄道マニア、特に乗りつぶしマニアという人種が世の中にいる事を世間に広く知らしめた作品。今で言うところの「鉄子の旅」みたいなものでしょうか。

    とは言え、本書をマニア向けと色眼鏡で見てしまうことは全くの誤りで、これはもう立派な文学であり、一代記です。「墓石を彫り上げたような」というご本人の感慨にも成程と納得させられるものがあります。もっとも、氏の作家人生はここがスタート地点だったわけですが。

    サラリーマンとして人並み以上の働きをされ、家長として程ほどに(笑)存在感を示した上で、趣味道を極めるその姿は、憧れの対象ですらあります。
    まさにバイブル。そう書くほかは無い1冊です。

  • 2016/8/4読了

  • どういうわけか「電車でGO!」の歌が頭からはなれなくなったので、これは鉄道紀行文学を読まねば…と借りてくる。宮脇さん国鉄全線乗りつぶし。宮脇さんの鉄道旅は良いものだ。「児戯に類した乗車目的は、なるべくひとに言わないですませたい。(p.18)」とか、自分でも阿呆なことをやっていると自覚していて、でも溢れ出る楽しい気持ち…にやっぱりぐっとくる。時々お茶目だったり偏屈おじさんだったりするところも楽しい!自分も、謙虚で情熱的な阿呆になりたいものである…。(読んでいるうちに電車でGO!の歌は忘れた。)

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著者プロフィール

1926年、埼玉県生まれ。78年、国鉄全線乗車記『時刻表2万キロ』を刊行し、日本ノンフィクション賞を受賞。『最長片道切符の旅』『時刻表昭和史』等、多くの著作を残し、鉄道紀行文学を確立した。2003年病没。

「2019年 『ローカルバスの終点へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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