スカートの下の劇場 (河出文庫 う 3-1)

著者 :
  • 河出書房新社
3.40
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本棚登録 : 504
感想 : 44
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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309472416

作品紹介・あらすじ

ひとはどうしてパンティにこだわるのか?なぜ性器を隠すのか?女はどういう基準でパンティを選ぶのか?セックス・アピールかナルシシズムか?女と男のナルシシズムはどう違うのか?-女と男の非対称性に深く立ち入り、セクシュアリティの本質を下着の歴史を通してあざやかに描ききって大きな反響をひきおこした、セクシュアリティの文明史。

感想・レビュー・書評

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  • ところどころ筆者の決めつけのような部分があり、そうか?と思う部分があった。
    私が世間知らずなのかもしれないけど。(親しい女友だちとの間で男を共有したい気持ち、拒食症のメカニズムなど)

    母親の下着の管理権については、自分の生活を思い返して納得。

  • 日本のフェミニズムを牽引してきた著者が、かなりきわどい話題を扱いつつ、男女のセクシュアリティをめぐる問題に鋭く切り込んだ本です。

    家事労働を一手に引き受けることを余儀なくされている主婦が、下着の管理を通して性器の管理をおこなっているという指摘がなされています。社会学の観点から下着を通して現代の日本における家族の姿に迫っていく議論の運びは、スリリングな興奮をもたらしてくれます。

    また、男女の性幻想の非対称性に関する指摘も、興味深く読みました。男性の場合は性的なファンタジーの対象を外在化して客体化するのに対して、男性によって値踏みされることで有用性が決定される女性の場合、自己の身体を客体化してそれに固着することになります。著者はこうした基本的な考えに基づいて、男性のフェティシズムと女性のナルシシズムを解き明かそうとしています。

  • 「女自身にとって女であることは謎である」
    あとがきより。その通りだ!
    現在でも充分適応する、女性ならではの大胆で赤裸々な発言。
    んでも、私は男性器単体でも興奮しますヨ!
    (っと言ってみたけど、やっぱり作中の説のほうが有力かなあとも思ったり)
    (経験のゼロとイチの間にある大きな隔たりは不可逆なので私には何とも)
    官能小説を書く際には是非とも参考に。笑

  • パンティから考えること。その歴史、フェミニズムと
    男女におけるセクシュアリティの差異、そして、意識心理。
    序 PRE-TEXTE 女だけの王国・・・下履き。男と女の拘りの差異。
    1 歴史 下着進化論・・・下着、主にパンティへの進化の歴史。
    2 家族 下着と生理管理・・・家庭での下着と性器の管理権。
    3 現代 パンティはカジュアル化する・・・シスターフッドと共有。
    4 心理 鏡の国のナルシシズム・・・性幻想の質の男女での差異。
    5 生理 性器を覆う絹のラップ・・・性器を巡るタブーと性器観。
    専門用語が散りばめられているけど、案外サクっと読了。
    下着の歴史に興味があって手に取った本ですが、
    パンティ一枚で世界は広がり、歴史、男女、家庭、心理等、
    思うがままに綴っているという印象です。
    刊行年からすれば、男らしさ&女らしさが変容しつつある時代が
    見え隠れするのだけれど、今や草食系男子&肉食系女子が闊歩し、
    かつての娘が母となって可愛い花柄の下着を自分の娘に選択出来る
    世になっています。独身男女も増えてきた世でもあります。う~ん。
    残念なのは参考文献が無いこと。
    下着の歴史、もっと知りたかったなぁ。

  • 250円購入2006-01-07

  • 読了。1989年刊行、1992年文庫化の本。29年前のセクシャリティの文明史と後書きにあった。興味のある話であったが、なかなか読み進めることができなかった。難しかった。著者が2018年現在をどのように考えているのか、知りたくなった。

  • 賛否両論の本、一度は読んでおこうと思ったので。電車では周りが気になって読めなかった(笑)
    昭和から平成に変わるころの女性とパンティと性に関する上野先生の考察の本です。やはり、独断と偏見で論じていることも多く、思いこみすぎというか歪んだ解釈だなと思う部分も多かったけれど、今までそんな考え方をしたこともなかったから、下着についての認識を改めるヒントになりました。あと国内国外様々なパンティ(を着ている人)の写真が多く、楽しかった。
    文庫の後書きにあるように、「女性のボディ・イメージの形成」、「パンティを通して見た女性のセクシュアリティの考察」という大まかなくくりの本、と考えるといいのかもしれない。また今は時代も変わったので感覚もだいぶ違うと思うし。
    バタフライとT字帯、「夫が妻の下着を干す気分」「姉妹はパンティを共有するか」などは全然納得できなかった(後書によると、実際に反発が多かったそうだ)。
    アイデアルの話と妊娠単為生殖説、性の非対称性は、納得したような気がする。

  • 本屋で面陳されていたので、いい機会だと思って。(^^;
    女性にとっての下着感は男性にとってのそれとはまったく異なるのだなぁという感じ。
    もちろん、1989 年の論考である以上、現在ではまた別な考え方もあるんだろうけど、これはこれで納得できるところがあります。
    この本を、例えば現在では女性もボクサータイプのパンツをはく、って観点を交えてリファインしてみてもらいたいなぁ。

  • 上野千鶴子の代表作。四半世紀以上前の本だけれど、昨今の凡俗なフェミ論に比して、それは上野千鶴子に失礼かもしれないが、じゅうぶん説得力のある議論をしていて勉強になった。

    「下着を通して見たセクシャリティの文明史」(p.214 文庫版へのあとがき)とまとめられる本書は、序を含む6つの章で構成され、ある程度内容は重複しながらも、「パンティ」(もはや古めかしい響きだ)を切り口として女性の自己イメージを検討していく。

    どれも興味深い内容だったけれど、とりわけ面白かったのは「パンティはカジュアル化する」と題された章。この頃は親しい友人間でショーツを贈るようになって(上野もそのひとり)きて「カジュアル化」したが、それは同時に女性の性器も一種の「パーツ化」、人格からの切断が意識されるようになったあらわれなのだ、と論じる。

    そのなかで、ショーツを贈り合うシスターフッド(女友だち)は「人格が溶解するみたいな独特な親密さ」があり、そこにポリガミー(一夫多妻制)などの文化人類学の知見を挿入し、この男を共有する「オマンコ・シスターズ」(ネーミング!)がシスターフッドの原型なのではという仮説を提示する。

    しかしシスターフッドは、男を蝶番として必要とする。「女には、非常に親しい女友達とのあいだで、男を共有したいという気持ちがあります。自分がこんなにいい思いをした男を貸し出したいという気持ちです」(p.118)や「例えば親しい女友達が非常に悲しんでいる時、私が彼女どんなに抱きしめて慰めてあげても、女というだけで彼女の核心に届かないというときに、マラ1本あれば済むな、男に抱かせるのが1番だな、と思う時があります」(同)というのにどこまで普遍性があるのかはわからないけど、とても興味深く読んだ。

    そこから上野は、男不要の女だけの関係性、レズビアニズムは成立するのか、という問題系に踏み込んでいく。

    章を移して「鏡の国のナルシシズム」では、男不要の別の謂、女性のナルシシズムを問うていく。ここである種の女性(上野が「中年ひまわり族」と呼び、無垢なパンティを介して自己の身体も同じイメージに投射する女性)のこだわる「パンティ」が、「男性の性的視線からの撤退であると同時に自己防衛の表現」というナルシシズムに結びついていると説く。

    そういったナルシシズムは、フェミニズム運動にも戦略として用いられ、たとえばジュリア・クリステヴァの「ファリック・マザー(男根的母親)」論では、女性にとっての胎児とはファルスであって、このことで女性は男性不要の自己充足を得られるという。

    しかし上野はそのナルシシズムにたいし、疑問を呈す。「私の感じるアンビバレンスの第一は、もし彼女たちの言うとおりだとしても、そういう女のナルシシズムはそれほどいいものなのだろうか、それは別の形の母性支配じゃないか、と言う疑念がひとつ。二つめは、そのナルシシズムがほんとうに他者の媒介を欠いた完璧なものなのか、という疑問です」(p.161)。

    わたしは、上野のこの発言にとても説得力を感じるし、まったく賛同する。逆にいえば、昨今のフェミ論にはこういう知性を感じられない点に、あまりの他者不在の自己完結性の装いに、疑問を感じるのだ。

    このほかにも下着の文化的変遷を追った「女だけの王国」など、おもしろいテーマが入っているので読んでいて飽きない。ただし一点、本書は豊富に下着女性の写真が挿絵として入っているので、読書する場所は選ばれたい。

  • 女の下着についての謎。歴史・下着進化論、家族・下着と性器管理、現代・パンティはカジュアル化する、心理・鏡の国のナルシシズム、生理・性器を覆う絹のラップ。

    あまりにあたりまえ、機能として必須と思っていたが、そうではなかったことを知った。

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著者プロフィール

上野千鶴子(うえの・ちづこ)東京大学名誉教授、WAN理事長。社会学。

「2021年 『学問の自由が危ない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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