常識として知っておきたい日本の三大宗教: 神道・儒教・日本仏教- (KAWADE夢文庫 697)

制作 : 歴史の謎を探る会 
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 221
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309495972

感想・レビュー・書評

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  • この本自体は、何てことはない雑学本。
    とはいえ、ちょこちょこと分かりやすいor面白い内容があった。

    まず感じたことは、日本人は無宗教といわれるが、日本人には(少なくとも自分には)神道、仏教、儒教が交じり合った文化が根付いており、その中でも特に文化のベースとなっているのはやはり神道ではないか、ということだ。

    神道といっても、明治~昭和初期のいわゆる「国家神道」や天皇を中心とする皇室神道はどちらかと言えば政治的なツールとしての色彩が濃いが、我々日本人の暮らしに根付いているのは、むしろ自然信仰や祖先崇拝を中心とする民族神道や神社神道だと考える。

    日本という国は、環境が豊かで、四季に恵まれ、自然が美しい国である。そして一方で、毎年台風が訪れ、地震が発生する自然の脅威も身近にある国である。延々と砂漠が続く中東や、熱帯雨林に囲まれているインドとは違う。そこで暮らしてきた日本人にとっては、生きることは決して「苦」ではない。また、自然は多様であって、価値観もまた多様であっていい。風が吹いて良い事もあれば悪いこともある。雨は暗く冷たいが、雨がなければ食物は育たない。太陽があり、雨が降り、土が肥え、芽が出て初めておいしい食事にありつける。ただ単純に神がきれいに作った世界というよりも、それぞれ違う顔を要素がお互いに影響しあい、時には反発しあって世界は成り立っている。太陽は温かいが水を乾かす。水は食物の恵みだが、増えすぎれば木々を流してしまう。何が正しいわけでも、どの要素がもっとも高次であるというわけでもなく、ただ多様な神々が織り成すこの世界の中で人間は生かされている。

    『絶対神がいる』と思うには、世界は複雑で移ろいすぎる。
    『人生は苦であり解脱・悟りを目指して修行すべし』と思うには、世界は楽しい。

    そういったおおらかな宗教観をもっていたからこそ、仏教や儒教といった外国から伝来した異なる宗教の考え方すら飲み込み、独自の文化を形成することができた。確かに、明確で画一的な宗教観はもちあわせていないが、自然を愛でる心、隣人とこの生をともに楽しみ謳歌するために逆に自らを律する心などについてのすばらしい文化を持っている。

    現代の日本人は、もっと素朴にこの日本を愛していいのではないだろうか。そして、「Yes、or NO?」と世界を単純化しようとする一神教文化に対して、やわらかくたおやかに、「どちらも共存させて、お互いにこの世界を楽しみませんか。」とアンチテーゼを発信し続けるべきなのではないか。

    そんな風に、感じた。

    その他の、気になった豆知識について。

    ◆桓武天皇が長岡京に遷都したのは力を持ちすぎた奈良仏教との「政教分離」のため
    ◆「穢れ」とは「気枯れ」であり、「死」。具体的には、死そのものと、出血。
     「穢れ」は」伝染するとされ、喪や喪中は伝染を防止するための対策。
    ◆神道に由来する年中行事:門松、ひな祭り、七夕、お盆、七五三、合格祈願、成人式、厄払い
    ◆日本サラリーマン社会の「終身雇用」「年功序列」は儒教の倫理観。
    ◆檀家制度は江戸時代、キリシタン取締りを目的に制度化(戸籍化)。
     当時、寺院は幕府の行政機関として機能。
    ◆神道において天皇の祖先とされている天照大神は女性。
    ◆靖国神社の全身は「東京招魂社」。維新以来、国のために戦死した国民が祭られている。
     西南戦争、日清戦争、日露戦争、太平洋戦争・・・等々。A級戦犯の件は、ごく一部の問題。
    ◆神社には「瓦」は使用されない。仏教寺院用に輸入された資材であるから。
    ◆実在が確認されている最初の天皇は第十五代応神天皇。約1,400年前。古い。

著者プロフィール

歴史の中に埋もれている“ドラマチックな歴史”を楽しむべく結成された、夢とロマンを求める仲間たちの集まり。学校では教わらない史実の裏側にスポットを当て、一風変わった視点からのアプローチには定評がある。

「2023年 『最新版 イギリスの歴史が2時間でわかる本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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