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- Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309503264
感想・レビュー・書評
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うち向かう鏡に親の懐かしきわが影ながら形見と思えば
滝沢馬琴
齢を重ねるにつれ、不思議なことに「親」に似てきてしまうもの。ふと「鏡」を見ると、親の姿。いやいや、自分の姿だと苦笑しつつ、なるほど、この容姿こそ親の「形見」であったのかと、懐かしく思い返すこともありそうだ。
「南総里見八犬伝」の作者滝沢馬琴は、早くに父親を亡くしており、「懐かしき」には思慕の念もこめられていたのだろう。 この歌は、「道歌」として今日に伝えられている。
五七五七七の短歌形式を用いて、教訓や道徳を伝えたのが道歌である。その内容は、今日でも通ずるものが少なくない。
親とのきずなに気が付いたあと、親よりも長生きしたいと願うなら―。
長生きはただ働くにしくはなし流るる水の腐らぬを見よ
脇坂弘道
作者は、江戸時代後期に活躍した心学者。長生きするコツは、とにかく頭も体も動かし続けるということだろうか。とはいえ、一心不乱に働き続けていると、月日はあっという間に過ぎてしまう。
昨日といい今日と暮らして飛鳥【あすか】川流れてはやき月日なりけり
「古今和歌集」
「飛鳥」と「明日か」がかけられており、「月日」の流れの早さが強調されている。だからこそ、親孝行は早いうちにきちんとしておきなさい、という教訓も読み取れそうだ。こういう道歌がすたれないのは、いつの世も親不孝者がいたということの証左かもしれない。なんとも、耳が痛い。
(2014年2月9日掲載)詳細をみるコメント0件をすべて表示
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