世界一やさしい精神科の本 (14歳の世渡り術)

  • 河出書房新社
3.72
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本棚登録 : 201
感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309616667

作品紹介・あらすじ

ひきこもり、発達障害、トラウマ、拒食症、うつ…、心のケアの第一歩に、悩み相談の手引きに、そしてなにより、自分自身を知るために-。一家に一冊、はじめての「使える精神医学」。

感想・レビュー・書評

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  •  タイトルのとおり、精神科の代表的疾患について、病態や治療法などがひととおりわかるように作られた入門書である。
     章立ては次のようになっている。

    第1章 みんなのように上手にできない―「発達障害」について
    第2章 人とつながってさえいれば―「ひきこもり」について
    第3章 人づきあいが苦手なんです―「対人恐怖/社会不安障害」について
    第4章 やめられない止まらない―「摂食障害」について
    第5章 自分がバラバラになっていく―「解離」について
    第6章 トラウマは心のどこにある?―「PTSD」について
    第7章 「困った人」とどうつきあう?―「人格障害」について
    第8章 なぜか体が動かない―「うつ病」について
    第9章 意外に身近な心の病―「統合失調症」について

     著者2人は、それぞれ多くの著作を持つ精神科医。とくに斎藤環氏はメディア登場頻度も高いので、よく知られているだろう。私も、前に一度インタビューさせていただいたことがある。
     対談集ではなく、2人の著者が章ごとに分担して執筆している。
     
     「14歳の世渡り術」というシリーズの一冊なので、平明な話し言葉で、中学生が読んでも理解できるように書かれている。
     さりとて、大人が読むにはレベルが低すぎるかといえば、まったくそんなことはない。大人が読んでもためになるし、読み物としても面白い(テーマがテーマだけに、面白がるのはいささか不謹慎だが)。

     私のようなシロウトは、断片的に聞きかじった情報で精神疾患について「知ってるつもり」になりがちだから、本書のような入門書で知識を一からおさらいすることは有意義だ。第一線の現役精神科医が書いているから、最新の治療動向などのトピックも随所に盛り込まれているし……。

     とにかく説明がわかりやすく、そのわかりやすさの中に著者たちの工夫と芸がある。
     たとえば、「解離」と「抑圧」の違いについて、本書では次のような巧みな喩えで説明されている。

    《抑圧という方法が、(つらい記憶を/引用者補足)漬物石か何かで上から押さえこんで深く沈めることだとすると、解離というのは、心の中に「壁」をつくって、いくつかの部屋に区切ってしまうことだ。そうやって、ひとつの部屋に悪いものを押しこめてしまうことで、ほかの部屋に影響がいかないようにする、そういう方法だと考えておいてほしい。》

     また、精神疾患と治療の歴史についても随所で説明がなされ、精神医学史の平明な概説として読むことも可能になっている。しかも、それが無味乾燥な知識の羅列という感じではなく、楽しく解説されているのだ。
     たとえば、こんな一節――。

    《古い辞書だと「二重人格」はあるけれども多重人格は載っていない。昔はジキルとハイドしかいなかったわけだ。それが1990年代からビリー・ミリガンになっちゃったわけだね。最近になって一挙に人数が増えたんだよね、どういうわけか。だから最低でも数人以上はいる。2人だけっていうのはまずないね。僕が知っているなかでいちばんすごかったのは、「私のなかに町があります」っていう人だね。人口何千人かわからないって。あれには、さすがに驚いた。》

     過不足ない内容で、なおかつ大人を唸らせる深みもある、上出来の入門書だ。

  • わかりやすい内容だった。
    自分が相手に怒っている時にまるで相手も怒っているように感じる事(下種の勘ぐり)もあるが、実は自分が相手のことを嫌いなだけだった、というように人間の心では能動と受動が簡単に入れ変わることがある。

    不安定の中の安定
    境界性人格障害→空虚さを人間関係で埋めようとする。しかしそのための人間関係なので安定しないのは当たり前なのだが、100%の安定を求めるから白黒・敵か味方かの判断の中でしか生きられない。グレイゾーンをどう理解するかができならから人間として成熟できない

    2011年度版なので社会情勢や若者文化が古い。

  • オトナが読んでも学べる内容であった

  • (2022/04/13)2h

  • <閲覧スタッフより>
    本来難しい内容である「精神医学」について、とてもわかりやすく書かれています。もし一つでも気になることがあったら、一度手に取ってみてください。誰でも安心して読める"やさしい"本。
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    所在記号:493.7||サイ
    資料番号:10212425
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  • だいすきな世渡り術シリーズ!子ども向けに書かれてるからすごくわかりやすいしするする読めた!
    言葉は知っててもよくわからなかったこととかが知れてよかったなあ
    ADHDとかひきこもりにうつ、人との距離のはかりかた、などなど興味深い話がたくさんでした。
    どんな風に接すればいいのか書かれてたのでためになりました。

  •  心の病って、日本の社会が作り出している部分も大きいんだろうな、ってのが読み終わった感想。
     それから、「治る」こと前提で書かれているので、重い話を聞いているのに、なんだか気分は比較的晴れやかだ。

  • 仕事の上で、精神疾患については多少勉強することもある。ただ、それぞれの事例毎にばらばらに学ぶので、こうやって俯瞰して読めるのは勉強になった。一つ一つの症例も、具体的なイメージが沸きやすい。精神科は、気の持ちようだと言われたり偏見にさらされたりと、とかく他の科と差別されやすい。早期発見早期治療が、今まで見てきた範囲では有効なので、もっと敷居が下がって欲しいと切に願う。そういう意味で、有意義な一冊だと思う。

  • わかりやすい!
    精神科というよりは精神病全般をわかりやすく教えてくれてる。
    放置ではなく、励ましではなく、かまうこと。元気になる手助けを細やかにする、かまうってことを諦めずにちょっとずつする義務が教員にはあるのだなあ、と思った。
    自分の傷を反芻し続けて受け入れる方法が効くって辛いね、、、
    でもそれをしないと外部に押しやった自分を内側に取り込めないのだね。
    社会と上手に折り合いをつけながらいきる方が、引きこもって狂うより大分まし。だからうつ病を治すのか。
    対人恐怖、は、場数を踏んで慣れるしかない。話し方教室で自信を得るのもよいと。つまり雑談力の本は間違ってなかったってことだねえ。やってみよ

  • 三葛館医学 493.7||SA

    うつ病、ひきこもり、トラウマ、統合失調症など精神科の主要な病気を、とてもわかりやすく説明してくれています。
    専門的な本を読む前に、入門書として読んでおいて損はないでしょう。

    和医大OPAC → http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=65894

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著者プロフィール

斎藤環(さいとう・たまき) 精神科医。筑波大学医学医療系社会精神保健学・教授。オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン(ODNJP)共同代表。著書に『社会的ひきこもり』『生き延びるためのラカン』『まんが やってみたくなるオープンダイアローグ』『コロナ・アンビバレンスの憂鬱』ほか多数。

「2023年 『みんなの宗教2世問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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