ほかの誰も薦めなかったとしても今のうちに読んでおくべきだと思う本を紹介します。 (14歳の世渡り術)
- 河出書房新社 (2012年5月22日発売)


- 本 ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309616735
感想・レビュー・書評
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自分の好きな作家さんが、どんな本を14歳向けにお薦めしているか、興味を持って読み始め、これが見事にはまった。
これは面白い。
一番最初に登場する角田光代さんから、しんがりの上野千鶴子さんまで、実に30名の作家さんがその名を並べている。
薦めている本の多種多様なことにも驚きだが、その難易度の高いことにもっと驚く。
つまり、それだけ本気でこの課題に挑んだのだろう。
数ページずつの推薦文もいつもとは文章の調子が違い、硬質で、しっかりと若者へのメッセージを放っている。
それがとても清清しく新鮮で、どなたの文章もきらりと光る珠玉のような数行があり、14歳などはるか昔に過ぎたこの私でも、胸が熱くなってくるのだ。
そしてもうひとつの発見は、作家さんの作風とご本人の好みとはあまり関連性がないものだなということ。
言い換えれば、ほんの数冊読んだだけでその作家さんのことを知ったような気になるのは、読み手側の傲慢だなと、自省も込めてそう思う。
例えば、角田光代さんは佐野洋子さんを推薦していて、もうこれで唖然としてしまう。
吉田篤弘さんがサリンジャーの【フラニーとゾーイー】だもの。
「えええ~!?そうだったんですか!」と突っ込みたくなった。
そして、中江有里さんが中島らもさんの【明るい悩み相談室】。驚きでしょう?
ギャグ漫画だと思ってゲラゲラ笑って読んだ【賭博黙示録 カイジ】を、熱く語ってお薦めしている小池龍之介さんにも眼からウロコだったし、この世の何も信じてなさそうな上野千鶴子さんが【聖書】をお薦めしている。
しかも、この上野さんの文章がこの本の白眉なのだ。
それはもう、思わず上野さんのファンになってしまうところだった(笑)。
そう言えば私の3人の兄たちも、進級のたびによく本を買ってくれた。
しかし、高校に入学したときの三番目の兄の贈り物には、正直泣いた。
【エドガー・アラン・ポー】の全集だったのだ。
「ありがとう」と言ったが、15歳の女子に【アッシャー家の崩壊】も【大烏】も怖すぎた。
読まずに放り出すこと十数年。
齢30にして始めて読んで、その魅力にしびれたのだった。
無骨に見えた兄の、なんとロマンチストな一面があったことだろう。
14歳まっただなかという子たちは、おそらくはこの本の中で推薦されている本を読まないかもしれない。
それでも、「いつか」という棚に置いて、読みたい年齢になったときに読むことだろう。
そのとき初めて、それぞれの作家さんの熱いメッセージの意味を知るだろう。
そうであるようにと、願っている。 -
なかなかに深く、幅広いブックガイド。様々なジャンルの著名人の方々が紹介する本は、濃く独特。14歳向けにしては難解な本も多数あるが(齢40の現在でさえ難解と感じた本も幾つかあり)、もし自分が14歳でこのブックガイドに出会っていたら………
意外とそれなりに面白がって読んだかも。
思い起こせば14歳の自分は、結構頭でっかちな子供であった。なので、本書のトップバッターの角田光代さんが述べていた以下の文に激しく共感。
「学校にかよっているあいだは本当に忙しいはずなんだけど、今思い出すと圧倒的にひまだった。(中略)ドストエフスキーもトルストイも高校生のときに読んだ。きっと意味なんかわからなかったと思う。でも、理解した気になって懸命にあれこれ考えた。」
私も全く同じで、中高にかけて国内外の古典純文学を貪り読んだ。マンガも、竹宮恵子や萩尾望都、山岸涼子などの24年組に傾倒した。正確に理解できたかはともかく、「読む体力」があったのだ。年を重ねると、読書傾向は楽な方に流れる。自分の好きなジャンルばかりになる。振り返ると、10代の頃にあれこれ果敢に挑戦してきてよかったと思うのだ。むしろ、もっと幅を広げてもよかったかなとさえ感じる。
不惑を迎えた今でさえ、知らないことってこんなにたくさんあるのか…身体は衰え始めても、精神はまだまだだ…と本書を読んで痛感した次第である。印象に残ったのは「カイジ」、「火の鳥」、「冒険者カストロ」、「タブーの正体!」。如何にもこの人が紹介しそうな本だなあとか、この人がこんな本を紹介するとは意外だなとか思いながら読むのも楽しい。
ラストに上野千鶴子さんを持ってくるとはさすがです。「聖書」がくるとは思いもよらなかったが、そういえばかつて自分はプロテスタントの大学に通っていたのだった…学び直すという意味も込めて、今一度、聖書を読んでみるのも新たな発見があるかもしれないと思っている。
「読む体力」は今からでも鍛え直せるかな。 -
豪華執筆陣の面々が14歳の少年少女にオススメする1冊はどんな本だろう。
…と手に取ったのですが、読んだことない、かつ読みたい本ばかりで、ふむふむしながら読みました。
特に読んでみたい本をメモメモ。
『博物誌』 ジュール・ルナール/著
『刺のないサボテン』 高梨菊次郎/著
『利己的な遺伝子』 リチャード・ドーキンス/著
『論理学的思考』 L.ウィトゲンシュタイン/著
『ゲーデルは何を証明したか』 E.ナーゲル、J.R.ニューマン/著
なんだか25歳でも読み応えがありそうな本ばかりですが、ぜひチャレンジしてみたいところ。
読み物としておもしろく読んだのは、角田光代さん、吉田篤弘さん、小池龍之介さん、辛酸なめ子さん。
特に辛酸なめ子さんの家族に内緒の秘宝館めぐりのエピソードは、ついついニマニマしちゃいましたw
ちなみに自分が14歳のとき、何を読んでいたかな…と思い出してみたら、鮮明に覚えていたのは新潮社から出ていた『星新一ショートショート1001(全3巻)』でした。
1冊1600ページくらいある大きな本を毎日持ち歩いていたことに、今更ながら驚きます。
でも、14歳のときに読んでいた本と、今14歳の子どもたちに薦めたい本は違うなぁとも思います。
読書歴の浅い私ではありますが、「自分だったら何を薦めるかな?」と考えるのもなかなか楽しかったです。-
「特に読んでみたい本をメモメモ」
うーーん、14歳の時には思いもしなかった本ですよ。「特に読んでみたい本をメモメモ」
うーーん、14歳の時には思いもしなかった本ですよ。2012/07/09
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・推理小説を勧めたいのは、実はそこに、ものを考えるときの方法が示されているからだ。学問を研究している時にも役立つ。
・信念ある人間は強い。逆を言えば、信念を持つことで人間は強くなれる。
・教室と食卓に私を待っている人がいることに、私は満足している。
・実は、人間は高度に発達した脳がある故に、必ずしも遺伝子の思惑通りに動くとは限らない。遺伝子による利己的な指令と、脳が生み出す愛や同情などが綱引きをしている存在…それが、我々人間なのである。 -
「14歳の世渡り術」と年齢が特定されているのを無視して読んだ。
内容はやはりちゃんと14歳に向けたブックガイドだった(当たり前か‥)。
「あなたが14歳なら」の言葉に、「いいえ、14歳ではありません」と返すしかないのはちょっと寂しい。
でも、まあ良しということにした。
倍生きてたって知らない本がたくさん紹介されていた。(私の不勉強故だろうけど‥)
とても魅力的に語られていて、「うわぁ、読みたい!」と声を出してしまった本もあった。
もう14歳に戻れないのは仕方ないのだからその辺はあきらめて、読みたいなと思った本を素直に読もうと思う。
それにたぶん、内面の幼稚さは14歳の頃からあまり変わっていないので世渡り術を身につけるべきだろうから。-
「その頃の私なら、読みたいとは思わなかっただろう本が一杯」
私もです。というより14歳の私はまずこの本を手に取らなかったと思います。
これも...「その頃の私なら、読みたいとは思わなかっただろう本が一杯」
私もです。というより14歳の私はまずこの本を手に取らなかったと思います。
これも成長と言えるのでしょうか?
「常識をナナメから見て疑って掛かれるコトだと思えるようになった今日この頃です。。。」
騙されないように、または自分の都合よく物事を進めるようにということでしょうか?
私はこの本の中のオススメの本とオススメ文を読んで、自分の土台を作れと言っているなと思いました。
いろんな人の思惑がぶつかり合う世の中で、簡単に折れたり揺れたりつぶれたりしていたら路頭に迷ってしまうわけで、ちゃんと人間のこと、世界のことを知っておくべきだということなのかな…と。
それはたぶんこれから社会に出ていく14歳に向けての世渡り術だからなんでしょうけれど。2012/08/10 -
「自分の土台を作れと言っているなと」
そうですよね。足元をシッカリさせないと、イザと言う時に踏ん張れませんから。。。
私が思っていたのは、多...「自分の土台を作れと言っているなと」
そうですよね。足元をシッカリさせないと、イザと言う時に踏ん張れませんから。。。
私が思っていたのは、多きに流されないように、自分の頭で考えられるように。と言うコトです。2012/08/10 -
「自分の頭で考えられるように」
そうですね。とても大切なことだと思います。
ただ時々、ちゃんと自分で考えてるのか不安になることがあります...「自分の頭で考えられるように」
そうですね。とても大切なことだと思います。
ただ時々、ちゃんと自分で考えてるのか不安になることがあります。
流されていないと言い切る自信がないというか‥。
人の言葉を否定するのは勇気が要りますし、なかなかうまくいきません。情けない限りです。2012/08/10
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2012/05/14
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takanatsuさん
「タイトルもとても気になります」
更新されたらAmazonに目次載るかなぁ?takanatsuさん
「タイトルもとても気になります」
更新されたらAmazonに目次載るかなぁ?2012/05/14 -
確かに目次気になります。
「14歳の世渡り術」と年齢を明記されると若干躊躇しますが、その辺には目をつぶって読んでみたいと思います。
確かに目次気になります。
「14歳の世渡り術」と年齢を明記されると若干躊躇しますが、その辺には目をつぶって読んでみたいと思います。
2012/05/15
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『本の紹介』
『親や先生が薦める"推薦図書"じゃなくても、人生を揺さぶる本はある。
絶対に今、読んでおいてほしいと、30人がそっと熱く語った隠れ読書案内』
鏡リュウジ氏を始め、雨宮処凛さん、あさのあつこさんなど30人の方が若い人に読んでもらいたい本をあげてらっしゃいます。
一番最後に上野千鶴子さんが「聖書」をあげてらっしゃいます。
上野氏はまず、14歳に世渡りなど必要じゃないとバッサリおっしゃってます。
時流に乗り遅れまいとするのは大人に任せておきなさいと、これは少し揶揄がはいっているかな、とも思いましたが、とにかく上野さんは世渡りよりも大切なものがあるとおっしゃっています。
そこで聖書です。
なぜ聖書なのか。
時間と共に劣化しない書物だからです。
あなた以前に何万人も、何百万、何千万の人たちが読んできた書物を読みなさい、とおっしゃってます。
上野さんだけでなく、30人の方々が若いあなたたちに(高校生含め)読んでもらいたい本を1冊だけ厳選されています。 -
多岐にわたる分野の本が一同に。14歳、YAでなくとも、今からでも読んでみる?読み返してみる?
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第Ⅰ部「世間というジャングルにデビューする前の心構え」が基調;角田 光代「世界という森に分け入る」『吉里吉里人』/森 達也/金原 瑞人/工藤 直子/野中 柊/吉田 篤弘/木田 元/ホンマタカシ/出久根 達郎/柳澤桂子/第Ⅱ部は、山崎 ナオコーラ「恋愛はしなくともかまわない」にはじまり痛切な体験がテーマ/ラディゲ『肉体の悪魔』は、彼のデビュー作『人のセックスを笑うな』と同じく現代人の感性と倦怠を描く/長沼 毅/橘木 俊詔/中江 有里/雨宮 処凛/小池 龍之介/岡ノ谷 一夫/服部 文祥/森 絵都/新井 紀子
第三部、貴志 祐介/『利己的な遺伝子』 我々が寝食を忘れ、身の危険も顧みす恋に身を投じるのは遺伝子がそそのかすからなのか?にはじまり、ものの見方をひっくり返す書/恩田 陸/『虚無への供物』/村上陽一郎『ウィトゲンシュタイン論理哲学論考』/大澤 真幸/石原千秋/島田 裕巳/辛酸 なめ子/佐藤 優/本田 由紀/しめくくりに上野 千鶴子『聖書』時間とともに劣化しない書物をお読みなさい。…人間はどんな言葉を必要として生きてきたのかが、はらわたに沁みるようにわかるからです。それは「世渡り」とはまったく別のものですする前の心構え」が基調
森 達也
金原 瑞人
工藤 直子
野中 柊
吉田 篤弘
木田 元
ホンマタカシ
出久根
柳澤桂子
第Ⅱ部は、山崎 ナオコーラ「恋愛はしなくともかまわない」にはじまり痛切な体験がテーマ/ラディゲ『肉体の悪魔』は、彼のデビュー作『人のセックスを笑うな』と同じく現代人の感性と倦怠を描いた
長沼 毅
橘木 俊詔
中江 有里
雨宮 処凛
小池 龍之介
岡ノ谷 一夫
服部 文祥
森 絵都
新井 紀子
第Ⅱ部は、
貴志 祐介/『利己的な遺伝子』 我々は、遺伝子の乗り物にすぎないのか?寝食を忘れ、身の危険も顧みす恋に身を投じるのは遺伝子がとそそのかすからなのか?
など、ものの見方がひっくりかえるような書物があげられている。
恩田 陸/『虚無への供物』
村上陽一郎
大澤 真幸
石原千秋
島田 裕巳
辛酸 なめ子
佐藤 優
本田 由紀
上野 千鶴子『聖書』時間とともに劣化しない書物をお読みなさい。…人間はどんな言葉を必要として生きてきたのかが、はらわたに沁みるようにわかるからです。それは「世渡り」とはまったく別のものです。
著者プロフィール
雨宮処凛の作品






「この世の何も信じてなさそうな上野千鶴子さんが【聖書】」
のくだりに噴き出してしまいました。
思わずファ...
「この世の何も信じてなさそうな上野千鶴子さんが【聖書】」
のくだりに噴き出してしまいました。
思わずファンになってしまった、ではなくて「なってしまうところだった」というところも(笑)
それにしても、進級のたびに本を買ってくださるお兄様が3人も?!
いいなぁ!!! 素敵すぎます。
ひとりっ子で、たったひとりでもいいからお兄さんがほしかった。。。
と、今でも夢にみてしまう私には、神々しすぎる理想のお兄様たちです。
こんな魅力的なレビューに触れては、読まずにはいられない本ですね。
いつもたくさんの花丸をくださって、ありがとうございます。
おお、さすがのまろんさんです!
上野千鶴子さんのくだり...
いつもたくさんの花丸をくださって、ありがとうございます。
おお、さすがのまろんさんです!
上野千鶴子さんのくだりに目をとめて下って、とってもとっても嬉しいです。
(これが言いたいレビューだったりして・・笑)
聖書を、宗教書として薦めているわけではないのですが、意外性において突出していました。
そしてその文章がとにかく素晴らしいのです。
だからと言って、、、いや、ファンの方もいらっしゃるかもしれないので、この辺で・・うはは。
兄たちの話、そんなに感動してくださってありがとうございます。
色々な本が互いの本棚を行き来するので「これはわたしの!」「いや、俺のだ!」とよく言い合っていました。
さっさと引っ込まないと、痛いゲンコツが飛びました。
まろんさんはひとりっ子でいらしたのですか。
わぁお!それはなんと羨ましい。
誰にも偉そうな口を挟まれず、からかわれることもなく、静かに本を読める環境に、憧れましたね。
お互いに、無いものねだりでしょうか。
この本が、まろんさんにも気に入っていただけますように。
レビューも、楽しみにお待ちしています!