死体が教えてくれたこと (14歳の世渡り術)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 211
感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309617152

感想・レビュー・書評

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  • 死から生をかんがえる。

    元々「死ぬ」ということに興味が強い私。
    10代向けの棚に置いてあったが、勝手に手が伸びた。
    読み進めるにつれて、上野先生の経験談にどんどん引き込まれていく。
    90歳の著者が語る戦争体験や子ども時代の話は、現在30代の私にとって刺激的なものばかりだ。
    監察医という職業も恥ずかしながら初めて知った。
    東京大阪名古屋などの都市圏にしか存在しない希少なお医者さんということも。

    だーーーっと一気に読んだ。

    人にはいろんな死に方がある。
    病死、変死、老衰、、いろいろだ。
    わたしはどれになるんだろう?

    上野先生が診てこられた様々な事件、事故。
    読んでいるのも辛い例もあった。
    しかし、そういった、なるべく関わりたくないような案件であっても、その人の死に向き合い、事実を正確に把握することの大切さ。それを勉強させてもらった。
    この人の世の中で皆が平等に命の尊厳を持ち、生きていくために明らかにするべきことなのだ。

    私はすぐ感情移入して泣くことが多いので、次々に現場で遺体やその遺族と関わる仕事なんて、考えられない。

    上野先生は生きている人も死んでいる人とも、徹底的に向き合う信念をもった、強い人だなと思った。

    人はいつどんな形で命が絶えるか分からない。
    当たり前だけど、そうなんだ。

    1歳の息子がいつか大きくなったら、この本をおすすめしたいな。
    私はもっと早くこの本と出会えたら人生変わっていたかなと思う。いや、30代の今だから沁みるのか?
    とにかく、読んでみて本当に良かった。

  • 子どもが大きくなったら読んでほしい。戦争を経験し、その後監察医としてたくさんの人の死と向き合ってきた著者のメッセージが、たくさんの人に伝わりますように。

  • [墨田区に予約中]

    江東区図書館の「ぶっくなび(2021年3月)」にて紹介。
    観察医である筆者が、見るのが辛かった遺体、冷静な医学的初見から解決した事件などの事例と共に、自職の重要さを解り易く語った本。

    最も好きなドラマとして思うのは海外ドラマのBones。元々シャーロックホームズやアガサクリスティが好きでハマった推理小説や探偵小説と、病気の原因を見つけ、予防し、治療するという医者は、私の中では同じ方向にあった。ドラマでは稀な事象を更に小難しく見せてくるのかもしれないけれど事実は小説より奇なり。決してそれを誇張としない、より複雑な現実もあると思う。

    本著と同時に知ったこの「14歳の世渡り術」シリーズ自体読んでみたいなと思えるラインナップではあったけれど、同様のジャンルと思われる「医者になりたい君へ」とか「14歳からわかる生命倫理」以上に本著の方に興味をひかれた。

    いざ読んでみると、考えていたのとは大分異なり、筆者の自叙伝ならびに筆者の仕事との向き合い方に重きを置いて書かれた本で、"検死"や"解剖"そのものの手順とか"症例集"とも少し違っていた。そういう意味では期待とは少し方向性の異なる本だったけれど、それ以上に監察医とか命に係わる仕事とか関係なく、「人として」「親として」「子どもとして」改めて自分の気持ちと向き合い、普段意識していない大事な心持ちをしっかりと見つめ直して言語化するのにいい本だと思う。そういう意味では道徳などの授業で必読書として欲しいような本。

    邦ドラマに興味がないので意識したことなかったものの近年監察医などを題材にしたものがあるのは知っていたが、恐らくこの本によればこの方の著書類が火付け役となったのかもしれない。初版の2018年で御年89歳。ただ、この方自身の成果や歩み以上に、この方の根底を育て上げた父上の偉大さが読んでいて身にしみた。よく赤ひげ先生のような、患者にとって良い医者でも、家族を疎かにしたりそのつもりでなくてもそう感じ取られて家族に疎まれ反発される方もいる(はず)。それでも両親の偉大さを感じ、素直に尊敬し、愛情もしっかりと受け止められる子供を培えた器の大きさ、これは子供をこれから産む人や、育てている人も「先に」読んでおくといいだろうな。

    ■8荷(はっか)の法則
    著者が文中で紹介した「警察の捜査の仕方」。但しこれは監察医という職業柄必要とか言う事ではなく、たまたまその内容が筆者の父の教えとなった、「自分の目でよく見て、頭で考えるように」というものと本質が同じであり、筆者が監察医となってから"考えるために"利用してきたこと。私が物事を考えたり言語化する際に意識する、5W1Hみたいなものだな。

    いつ 時間(When)
    どこで 場所(Where)
    誰が 犯人(Who)
    誰と 共犯(≒with)
    なにゆえに 動機(Why)
    誰にたいし 被害者(Whom)
    いかにして 方法(How)
    いかにした 結果(≒What)

    また、筆者が書いた本来の書?である下記のものも読んでみたいな。
    「死体は語る (文春文庫)」
    https://booklog.jp/item/1/4167656027

  • アンビリーバボーで知った上野先生の10代に向けたエッセイです。

    「死から生を見る」という言葉が心に残りました。
    亡くなった人から生きている人へのメッセージ、人間関係であるべきことを学べるのだな、と思いました。

  • 2023.11.11 朝活読書サロンで紹介を受ける。

  • ティーンエイジャーに向けて書かれたものですが、成人にも刺さる素晴らしい内容でした。著者の仕事にからめて、人が死ぬとは生きるとはどういうことか、率直かつ平易な言葉で書かれています。

    特に、第四章「人が死ぬということ」は必読。いじめによる自殺に触れ、「いじめは狭い井戸の中にいるからこそ起こる。世界はもっと広い。世の中に善意のある人々はたくさんいる。あきらめてはいけない。ひたすらに生きてほしい」と強く訴えている。本当にこの話は教科書に載せてほしいほど素晴らしい章だと思う。

    第五章では、著者の人生や家族、死生観について語っている。人の死に数多く触れ「死とはnothingだと思う」という死生観を持っていた著者が、実際のご家族の死(ペットの死)を経験して「あの世に行ったら私の親を訪ねていきなさい」と自然に心に浮かんでき他というくだりは興味深い。たえず死と生を考える仕事をしていた著者でも、自分の身に起きた家族の死によって180度、その考え方を変えた。実際に経験してみなければわからないことはやはりあるのだなと思った。

    若い頃に読んでいればきっと励まされ指針になったと思う。終始、子どもたちに向け、自分の人生で感じたことを誠実に暖かい目線で語っている。正しいことを語ったり成すことが難しい今、若い人には特に読んでもらいたい。著者に励まされ見守られているかのように元気づけられる、とてもいい本だ。

  • 死体を見る仕事と言うと、何か変な偏見を持っていた自分であるが、その人の人生 心情などを汲み取り、心から祈ってくれる人であると言うことがわかり、感動しました

  • 監察医の著者がYA向けに書いたもの。見るのが辛かったご遺体、監察医の仕事についてなど。

  • 上野先生の文章を通して、強く、優しく、穏やかな方であることが知れます。厳しい環境の中、常に社会の役に立っていようとするご両親の背中をみて、ご自身もそう生きてこられたことが知れます。
    先生の体験されたたくさんの出来事のほんの一部を通して、私も正しく、強く生きることの尊さを改めて考えました。お金では買えないものを守らないといけないと。
    世の中には、たくさん死にたいや死ねなどの言葉を見ます。死は、生です。つらくてしんどい時に、どう生きたいかを考えるようにしようと思いました。
    子供の為に購入した本ですが、本当に学び深いものとなりました。
    私も人生の折り返しが差し掛かっておりますが、先生のような生き方には及びませんが、恥じないよう、生きたいと思います。
     

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著者プロフィール

昭和17年、和歌山県生まれ。京都大学法学部卒業。職業:弁護士・公認会計士。●主な著書 『新万葉集読本』、『平成歌合 新古今和歌集百番』、『平成歌合 古今和歌集百番』、『百人一首と遊ぶ 一人百首』(以上、角川学芸出版。ペンネーム上野正比古)、『光彩陸離 写歌集Ⅲ』、『ヨーロッパの大地と営み 写歌集Ⅱ』、『ヨーロッパの山と花 写歌集Ⅰ』(以上、東洋出版)

「2016年 『万葉集難訓歌 一三〇〇年の謎を解く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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