悪魔の薔薇 (奇想コレクション)

  • 河出書房新社
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本棚登録 : 198
感想 : 33
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  • Amazon.co.jp ・本 (369ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309621999

感想・レビュー・書評

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  • 短編集。ファンタジー。ホラー。
    文章的に、なかなか読みにくい感じがするが、雰囲気・世界観がお洒落で癖になる。
    吸血鬼の話を従者の立場から見た設定が特徴の「別離」。
    西アジアが舞台と思われる、王道ファンタジー感満載の「愚者、悪者、やさしい賢者」。
    孤独な魔女の悪行を描いたラブストーリー「蜃気楼と女呪者」。
    以上3作が好み。
    この1冊では、SF系の作品を省いたらしいが、著者のSF作品を集めた短編集も読みたい。

  • 女流作家タニス・リーの九つの作品を収録した短篇集。
    どの作品も耽美にして絢爛豪華、そしてあやしい魔術の匂いがする物語で、とても面白かったです。
    以下、各話の簡易感想。

    「別離」
    老ヴァンパイアと、死にゆく従者の最期。
    静かで切なく、そして美しいお話でした。最後の一文がイイ…。
    ロマンスグレーな従者にときめきが止まらない。オノ・ナツメさんに挿絵を描いてもらいたい(…)。

    「悪魔の薔薇」
    雪に閉ざされた静かな町を訪れた男が残したものは…。
    今まで何度も繰り返されてきたような、ありふれた出来事だからこそ恐ろしい、そんな短編ホラー。悪魔がスカウトにきそうな、そんな酷い男だなー。

    「彼女は三(死の女神)」
    パリに暮らす若き芸術家と、その周囲に現れる気まぐれな女神たち。デカダンと狂気の薫り漂う一編です。
    茜色のドレスを纏い、全身に凶器を携えた「惨殺奥方」がかっこいい!

    「美女は野獣」
    暴力と退廃の魔都の王を打ち倒さんとする乙女。
    世界は見る者によってまるで違う姿にもなることを知る物語です。
    誰もが自分の主観の中でのみ生きる世界で、真実はどこにあるのか。前半と後半で一変する都の描写が幻想的で素敵ですが、解説を読むまでこれがパリだとは思いもしませんでした…。

    「魔女のふたりの恋人」
    老いた富豪に養われているジャーヌは、ある夜明けに窓から二人の宮廷騎士を見かける。一人は眩しい金髪の<太陽の騎士>ニコラン。そしてもう一人は黒ずんだ蜂蜜色の髪に黒い瞳のベルナール。ベルナールに恋をしたジャーヌは、ある魔術を試みる…。
    静かで激しい愛、その喪失とあまりにも虚しい結末。
    騎士二人が実にイケメンなので、ぜひ漫画で読んでみたいと思いました(…)。

    「黄金変成」
    滅び行く大国、その辺境の地を舞台にした物語。
    限りなく恋愛に近い執着を、友人であり君主でもある男に傾ける主人公が実に痛…いや、熱い。そして萌える(…)。
    激しい嫉妬の末に主人公が奪った物、そして失った物。錬金術師が去ったあとの穏やかでわびしい空気がなんとも切ない。

    「愚者、悪者、やさしい賢者」
    父を亡くした三兄弟と魔術師が繰り広げるアラブ幻想譚。
    愚かな長兄、狡猾な次兄、そしてやさしく賢しい末弟というキャラ設定からして実に「物語」的でいいですね。その顛末も絵巻のよう。
    意思を持ったものとして書かれる<死>と<天使>も物語に彩りを与えていて素敵でした。天使さんうちにも来てほしい…。

    「蜃気楼と女呪者」
    実に耽美で妖しい、しかし単純な愛のおはなし。
    最後の展開なんてハーレクインか!と言いたいほど甘甘です。
    恋にやぶれ傷ついた女が世のイケメンたちに復讐→素敵な魔術師に救われてハッピーというシンプルなストーリーが、こうもロマンチックになる文章の魔力よ…。

    「青い壺の幽霊」
    全てに退屈している<十の絡繰の主>、偉大なる魔術師スビュルス。七千の霊が住まっているという青い壺を手に入れた彼は、唯一彼になびかない女のもとを訪れて…。
    物語の中で十の絡繰が次々登場するのが楽しかったです。最後の絡繰がちょっと意外なものでうれしい驚きが。
    最後はなんとも切ない終わり方。これもまた喪失の物語でした。
    壺の中の世界を書かないのもまた良し。

    何かを求めてそして失う、そんな激しさ・寂しさで満ちた短編集でした。濃厚な夜の気配にうっとり。
    男も女も人外も実に色気ある描写で、とても良かったです。
    他の作品も読んでみよう。

  • これまでなかなか手が伸びなかった著者の一人。幻想文学、ダークファンタジー、これらの分野にあまり興味がそそられなかったのが理由。今回読んでみて感じたのは、総じて「童話的」な物語が多かったという点。「大人の」と付ければ尚更しっくりくる。文章は洗練されており、多少華美な感じはするが、嫌味はない。『愚者、悪者、そして賢者』『黄金変成』そして最後の『青い壺の幽霊』あたりが好み。全体的に読了後の余韻を楽しめる作品が多い。

  • この作者は大昔読んだ闇の公子周辺のシリーズがなんか好みではないながらも結構まとめ読みして以来、名前を聞いても特に読みたいと思わなかった。
    図書館でたまたま手に取り、第1話でまあこのシリーズは良いかも、と思ったけれど2話でなんか嫌、と思い3話は読んだもののまあ途中で返そうということになりました。
    あくまでも個人的な嗜好です。闇の公子が大人気だったようにこの本大好き、という人のほうが世の中のは多いと思います。
    あ、思い出したけれど闇の公子はそこそこ好きだったかも。続くシリーズがなんか駄目、だった感じです。

  • ファンタジーとホラーの間くらいの物語たち。
    ダークな世界観は大好物なので、この本全体に漂う空気感はとても好きなんだけど、☆×3に留めたのは和訳が好みと合わなかったから。
    多分原作の文章はもっと美しいんだろうなぁ、と思ってしまったから。和訳の方が文章として優れてる可能性もあるけど、意味が掴み取れなくて何度か戻って読み直すことがあって…私の読解力の問題かもしれませんが。

    この著者の他の作品も読んでみたいなと思う程度には面白かったです。


    解説より抜粋
    「作風を簡単にいうならば、耽美華麗にして陰惨沈鬱といったところか。とにかく倒置と比喩を多用した絢爛豪華な文体を駆使して、退廃的で不道徳で官能的な物語を紡ぎだす作風」

    ↑はい。まさにコレ。

  • 2019/6/2購入

  • 読了。
    タニス・リーのホラー・ファンタジー短編集。
    表題作は現在世界でも実現できそうな恐ろしい行為ですな。

  • 表題作まで読んでギブアップ。ダメだったなあ…なんか世界観が。特に悪魔の薔薇。すごい胸糞悪い感じが。

  • 話の方向性としては苦手。ただ、それでもうまいとは思う。普通の人には書けない。

  • 河出書房新社『奇想コレクション』の1冊で、ホラー寄りの短編を集めた、日本オリジナル編集の短編集。
    どちらかというとオリエンタルな雰囲気の作品が多かったが、表題作『悪魔の薔薇』だけは現実味のあるホラー。オチはとある有名な都市伝説を彷彿とさせる。
    吸血鬼ものが『別離』1作だけだったのは少し残念。もう1作ぐらい加えても良かったのでは……?

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