新生 (NOVAコレクション)

著者 :
  • 河出書房新社
3.29
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本棚登録 : 84
レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309622255

感想・レビュー・書評

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  • 小松左京への大いなるリスペクトとオマージュは最後のエッセイにこそ熱く語られてはいるが、さて肝心の本編はというと、むしろイーガンの『万物理論』を模したようで、イーガン同様どうにも読みづらかった。
    第一短編「新生」にはイントロダクションとしての妙味や謎がふんだんに描かれ、続く「Wonderful World」も震災を経てのSF表現ということで納得できたし、「
    エヴリブレス」が作者最高作だととらえる身としては久しぶりに浸った。
    しかし「ミッシェル」。力が入っているのもわかるし、十分に練られたストーリーと登場人物造詣も良い。良かったのはこの設定までだ。
    音楽演奏表現に「門外」の素人感を感じるし、変に凝った時系列構成も楽しくない。非常に読みづらいのだ。イーガンの場合は作者のその難解への言い訳のような開き直りというか、申し訳なさそうな態度が文間からにじみ出ているので、まだ許せるし、楽しい。
    なんか作者のドヤ顔が浮かぶのだ今作は。その難解ぶりを弄したうえで小松左京へのオマージュにむしろ責任転嫁させたようにも思う。第一に小松左京は難しいことを面白く、読みやすいということにこそ最大の敬意を払うべきではなかったのか。偏見だろうか。

  • 色々なものを下敷きに書かれているので、ちゃんとした方であれば小松左京を読み、ダンテを読み、日本SF的な素養を身につけた上で読むのでしょうが、山下卓さんがTwitterでつぶやいていたのを見て何も考えずに読みました。。

    読み進むにつれて難解度は増していくのですが、どういう訳か同時に文章に引き込まれていった感があります。
    きらびやかな言葉が紡がれて色彩さえ見えるようなコンサートの光景、気付かないうちに見てはいけないものをみてしまったかのように背筋が凍るようなダイヴの光景。文字だけでここまでできるものか。
    下敷きを知らないのと諸々の用語を知らないので、そもそも理解できていないという要素は多分にあるのですが、こんな本、ストーリー、世界があるのか、と圧倒されるような感覚を味わいました。

    また、作品内で描かれた未来の世界も非常に興味深かったです。たぶんにアカデミック寄りに引っ張られた世界だなぁとは思いましたが、こんな未来の姿もあるのかもしれないと考えさせられました。東日本大震災を受けて書かれたという側面も、大いに影響しているのでしょうか。

    万人に受ける作品では無いと思うのですが、個人的には凄い本だと思いました。瀬名さんの本をもうちょっと読んでみようかと思います。

  • 小松左京へのオマージュ3編を収録した連作短編集(といっても「ミシェル」は短編と言うには些か長いが)。
    あまり小松左京の方をちゃんと読んでいないので、元ネタがどうとか、関連性がどうとかいうのはよく解らないのだが、本作に関していえば、3編ともに強く感じたのは『ノスタルジー』だった。失われたものに対する愛着、今はもう無いものへの郷愁に包まれているように思う。未来を描いていながらノスタルジックというのもまた面白い。
    『新生』というタイトルも読み終えてみるとしっくりする。

  •  同じ未来を舞台にしており、互いに関連がある連作短篇集。小松左京「岬にて」「虚無回廊」がモチーフということだが、前者は内容を思い出せず後者は未読でその部分はよく分かっていない感想になる。

    「新生」 震災後間もなく海外に発掘調査に行く研究者が一人の女に出会う。幻想的な内容だが、後二作を読むことによって人間の思考可能な範囲を超えた<向こう側>を渇望するという本作のイメージがこの作品集全体を貫いていくことが分かる。
    「Wonderful World」 未来予測が人間の倫理観までカヴァーすることが可能になり、より良い未来を達成しようとするために世界が変質する話。ブラッドベリオマージュでメタファーをテーマにした著者のブラッドべリ論でもある。三作の中では単独作としては一番理解しやすいのではないか。
    「ミシェル」 「Wonderful World」の主人公だった天才情報工学者マルセル・ジェランの息子ミシェルの話。豊かな才能を受け継いだ彼は将来を嘱望されたピアニストの道を捨て科学者になり<宇宙の共通言語>を創ろうとする。人工知能、ファーストコンタクト、宇宙論と大きなテーマが複数に重なり合い難解な内容だが、最新の知見から未来を外挿し世界の本質を探ろうとするSFの面白さを味わわせてくれる作品である。ジョン・ダンやダンテの「神曲」も主要なモチーフになっている。

     宇宙とは何か、生命とは何か思考の限界の<向こう側>すらまっすぐ前を向いて追い求めようという著者の真摯で曇りのない眼差しの強さは時に読む者を息苦しくすらさせるほどでもあるが、それと表裏一体に(特に「ミシェル」)現れる死への魅了が危ういバランスで同居していて、スリリングな作品集である。

  • 文庫になったら、買って再読したい

  • 小松左京、震災がキーワードの連作集

     既読が半分だからか、難解だからか、読書量が足りないからか、とにかくあまり乗り切れなかった。

     イメージがつかみにくい。宗教的ではないんだが、抽象的に過ぎるから、読み手にかなりの想像力を要求する作品だと感じた。少し苦手。

  • あまりの斬新さと難解さのため、素直な小説としての評価は難しいけれど、瀬名さんの深い想いはやはり心を打つし、感銘を受ける。毎回の新しいビジョンの提示はSFの王道と言えるのかもしれない。
    小松左京さんへのオマージュと著者自らが語る本作たち。
    「果てしなき流れの果てに」を読んだ時の感情が甦った。

  • 小松左京と東日本大震災を絡めた作品集。小松左京と言えば、日本沈没と大震災’95ということで、東日本大震災と関係付けるのには必然性がある。
    とにかく作者の小松左京愛に圧倒されました。特に「ミッシェル」の代表3作同時新解釈には口あんぐり。難を言えば真面目すぎるところか。もう少し矛盾があっても良かった気がするが、瀬名秀明らしさは充分に出ていました。
    個人的に「Wonderful World」は好きだな。別格扱い。

  • 読み進めるにつれ、小松左京へのオマージュが濃くなっていく。作者がSF作家クラブの会長に就任したあたりから、作品の文系SFへの傾倒が目立っていたが、本書はその到達点であるように思える。小説を一冊仕上れば、テーマとして取り上げた事象の啓蒙書が一冊書けるはずという作者の持論でいけば、あとがきにも触れられていたとおり、小松左京の諸作と本書との関連についてのべた啓蒙書のようなものが書かれるべきと思われる。しかしながら、出来れば、次は、別の系統の作品を読んでみたい。

  • 世界の倫理観をシミュレートしたシステム「メタファー」人々の関心や想いの向かう先、刺激と変化を無数の矢印で表現。完全自立型人工知能「HE」シリーズ。

    超絶した天才が織りなす理論、作られる世界だから、一般人には理解しがたくても、仕方がないのだね。

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著者プロフィール

1968年静岡県生まれ。東北大学大学院薬学研究科博士課程修了。薬学博士。小説『パラサイト・イヴ』(1995、角川書店、2007、新潮文庫)で第2回日本ホラー小説大賞を受賞しデビュー。SF小説をはじめ、ロボット学や生命科学など科学に関する著作多数。小説作品に『BRAIN VALLEY』(1997、角川書店、2005、新潮文庫。第19回日本SF大賞受賞)、『ポロック生命体』(2020、新潮社)など、ノンフィクション作品に『パンデミックとたたかう』(2009、岩波新書。押谷仁との共著)、『ロボットとの付き合い方、おしえます。』(2010、河出書房新社)などがある。

「2020年 『宇宙・肉体・悪魔 [新版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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