「格差」の戦後史--階級社会 日本の履歴書 (河出ブックス)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 94
レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309624037

作品紹介・あらすじ

高度経済成長以降、完全に忘れられていた格差と貧困の問題が噴き出している昨今、日本人は社会科学的思考に目覚めはじめたと言える。しかし、格差には多様な側面がある。戦後六十数年の間に、どのような格差の拡大や縮小があったのか-。さまざまなデータを駆使し、各年代を象徴する事件や出来事を交えながら、敗戦直後から現在にいたる格差と階級構造の歴史的変遷を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 戦中は下層階級が徴兵や戦災により一層の被害を受けたが、一方では都市と農村、男性と女性等の格差は縮小。戦後数年間は皆が貧しい時代だったが、「もはや戦後ではない」50年代には格差拡大。60年代には賃金格差は縮小、70年代には「一億総中流」。80年代以降は再び格差拡大が始まり、2000年代には「新しい階級社会の形成」としている。流行語にもなった「格差社会」は決して小泉改革以降のみのものではないことが分かる。研究者らしくこのような流れをデータに基づいて示しているが、門外漢にはそれぞれの時代を映す小説や映画といったサブカルチャーに表れる「格差」の紹介が面白い。

  • 巷間では小泉改革が格差を助長したなどと短絡的な物言いが多いですが、この本では、戦争まで遡り、日本の産業構造の変革から、第1次産業から第2次、第3次産業へと「階級」シフトが起こっていたことからの分析です。戦争の空襲による災害、阪神大震災の災害が実は低所得層など弱い層ほど大きな打撃であったことを豊富なデータから説明があったり、高度成長期には格差が縮小する可能性があったが、低成長になり階級シフトが起こりづらくなってからは再度格差が拡大することになったという指摘は極めて的確です。非正規雇用の拡大は今後、格差を固定していくことが確実視されるように危惧されます。日本が決して諸外国に比べ、貧困率が低くなく、しかもジニ係数も高いという数値は「豊かになった」「総中流社会」と言われていたことからすると驚きです。

  • 格差という一つの言葉であるが、それにはいろんな種類があることがわかった。時代によって、賃金、階層、学歴…何に注目するかによって、格差の意味、それが提示する意味も変わってくる。また、階層と所得が相関しあって、作り出す格差も存在する。時代ごとに整理され、また、当時の芸能、事件などの豊富なデータと統計学的計算により書かれた本書の文章からはこういったことがよくわかった。
    あと、格差はエゴやわがままも含まれるものであると思っていたが、本書で取り上げられた格差にそういったものは見られなかった。エゴではなくしっかりとそれぞれ数値の差がでていた。
     格差というのはどれくらい人と差があるのか?どのように解消するか?不明瞭なだけあって、それが曖昧な不安につながる。同時に、それは分析を難しくする。しかし、このように、数値化、あるいは当時の文化を比較検証することでよい分析ができる。それらを明確化できる。格差を学問的に扱うときはこういった姿勢が必要であることを知ることができた。

  • 「格差」って、現代に始まったことじゃないよね、そういえば。メディアで「格差」が取り上げられるようになったのが最近ってことか?

  • 本書を読んで、格差社会と言われる現在の日本の社会の全体像が、すっきりと認識できた。本書は社会学の名著ではないか。
     ブルジョアジー(資本家階級)とプロレタリアート(労働者階級)の伝統的な分類が、分厚い中産階級の存在する現代社会に適応できてないのは誰の目にも明らかだが、本書では現時点で最も適切な階級カテゴリーとして、「資本家階級(従業員規模5人以上)」「旧中間層(農民・商工業者)」「新中間層(管理職・専門職)」「労働者階級」とに分類している。
     その上で、それぞれの階級層の格差がどのように推移してきたのかを、さまざまな数字データの指標を用いて10年ごとに分析している。その結果、格差は1950年代は拡大、高度成長期は縮小、1980年代から拡大という長期トレンドとなっていることを明らかにしている。
     その結果、現在の社会がどのような状況になっているのかの分析結果には衝撃をうけた。「労働者階級」のなかに非正規労働者の「アンダークラス(新しい下層階級)」が出現しているというのだ。正規労働者の平均年収347万円に対し、非正規労働者の平均年収は151万円でしかない。
     2007年時点での「アンダークラス」の人口構成は、なんと1519万人に達する。パート主婦をのぞいても800万人だ。
     大雑把に各階級の人口構成を計算してみると、就業人口が6000万人とすると「資本家階級」は5%の300万人。「旧中間層」は15%の900万人。「新中間階級」は20%の1200万人。「労働者階級」は60%の3600万人となるが、「アンダークラス」の出現と拡大は、まさに本書の主張「新しい階級社会の出現だ」に同感する。
     1970年代から80年代に世に広がった「一億総中流社会」からなんという大きな変化だろうか。「アンダークラス」の出現と拡大は、貧困と格差の出現と拡大だろう。日本はこれからどこに向かおうとしているのか。本書を読み終わっての感想は、「暗然たる思い」である。
     本書では、豊富な資料を生かした切れ味のよい分析とともに、時代を代表する映画作品なども引用し、時代状況を理解するためにわかりやすい工夫も凝らしている。高く評価できる本であると思う。

  • 朝日新聞書評欄『ゼロ年代の50冊』に入っていた本。リストを見ていたら、昨年12月にリストに入れているので、目だけはつけていたことになる。

    「格差」は最近になって言い立てられるようになったが、一億総中流社会などと言われていた時代にも「格差」はあった、というのが著者の主張。統計データを読み解きつつ、日本社会の「格差」を長期的視点で追った本である。

    個人的には大苦戦した。ああ、自分は統計的な考え方が苦手なんだなぁと再認識することになってしまった。
    何というか、変数が膨大である場合、それが意味するものを「理解」するためには、何某かの「視点」に立った「整理」が必要なのだと思うのだ。その辺が多分、自分は苦手なのではないかなぁ。
    ばらつきを示す「ジニ係数」とかプチブルジョアジーにあたる「新中間階級」とかにいちいち引っかかってしまってなかなか先に進めなかった。
    著者の「視点」が妥当なのかどうかも判断できず・・・。
    現代に近いところ(阪神淡路大震災と「格差」、秋葉原事件)に関する著者の見方はおもしろかったりもしたのだが。

    すみません、何とか読んだけれど、評価は無理・・・。もう少し、統計についての本を読んでみるか・・・?

  • 361.8 近江

  • [ 内容 ]
    高度経済成長以降、完全に忘れられていた格差と貧困の問題が噴き出している昨今、日本人は社会科学的思考に目覚めはじめたと言える。
    しかし、格差には多様な側面がある。
    戦後六十数年の間に、どのような格差の拡大や縮小があったのか―。
    さまざまなデータを駆使し、各年代を象徴する事件や出来事を交えながら、敗戦直後から現在にいたる格差と階級構造の歴史的変遷を描く。

    [ 目次 ]
    序章 舞台装置は階級構造―「フィガロの結婚」と「天国と地獄」をめぐって
    第1章 格差をどうとらえるか
    第2章 格差縮小から格差拡大へ―戦後日本のメガトレンド
    第3章 貧しさからの出発―敗戦から一九五〇年まで
    第4章 「もはや戦後ではない」―一九五〇年代
    第5章 青春時代の格差社会―一九六〇年代
    第6章 「一億総中流」のなかの格差―一九七〇年代
    第7章 格差拡大の始まり―一九八〇年代
    第8章 日本社会の再編成―一九九〇年代
    第9章 新しい階級社会の形成―二〇〇〇年代

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 格差と貧困の問題は深刻な問題なのに、当事者性が希薄で、街中で通り過ぎてしまうような知らぬふり。

    たぶん誰でもこの社会にいいしれぬ、言葉にならぬ危機感や緊迫感を感じているのに、根拠を知ることを回避する自分がいる。

    格差には様々な局面がある。多くの資料やデータ、当時の世相などを交えて現在までの格差、階層社会の構造を描き出す。

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