エネルギーの科学史 (河出ブックス)

著者 :
  • 河出書房新社
3.70
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本棚登録 : 73
感想 : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309624495

作品紹介・あらすじ

熱、電気、そして原子力の発見は、人類のエネルギー観をどのように変えたのか。19世紀から現代に至るエネルギー開発と活用の歴史を、アインシュタイン、ボーア、フェルミ、朝永振一郎ら歴代の科学者を軸にたどる。自然を理解し、宇宙を認識するという科学の営みは、煎じ詰めればエネルギーの正体とそれによって生起する諸現象の解明に尽きるといえる。エネルギーと社会の関係が再考を迫られている今、近視眼的なエネルギー論争で見失いがちな問題の本質に迫る野心作。

感想・レビュー・書評

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  • 『量子から宇宙までを繋ぐエネルギーを巡る科学史』

    エネルギーというキーワードで科学史を整理すると、今まで個別に学んできた分野の繋がりが、非常によくわかった。今後、どのような科学的飛躍が見られるのか、ちょっと楽しみです。(それまで生きていればだけど…)

    20億年前にすでに原子炉が存在した!
    真空は【無】の世界ではなく豊饒で賑やかな空間だった!
    宇宙のエネルギーの95%は、未だ正体不明の暗黒物質と暗黒エネルギーが占めている!

  • サイエンス

  • [評価]
    ★★★★★ 星5つ

    [感想]
    人類が多くのエネルギーとどのような関係にあったのかが書かれている。
    この本では熱エネルギーや電気エネルギー、核エネルギーといった一般的なイメージから宇宙に満ちる暗黒エネルギーといった余り知られていないものまで、面白い内容だった。
    前半は今の人類を支えているエネルギーがどのように発見され、使われてきたのか、後半は研究が進められているエネルギーについてが解説されており、興味深く読むことができた。

  • 科学の発展をエネルギーという視点から見ていく1冊。

    約50万年前、人は火を手にした。元々は落雷や噴火などの自然現象がきっかけだったと考えられる。それが人が利用した最古のエネルギーということになる。
    その後、自然エネルギーに頼る時代が長く続く。紀元前1世紀には水力を利用した水車の記録が残る。風力も帆船や風車に利用される。水力は高低差が必要だが、空気の流れは比較的どこでも起こりやすい。羽根の改良が功を奏して、水をくみ上げたり、穀物をひいたりするのに広く使用される。
    人口が増えるにつれ、木の成長が木材や薪の供給に追いつかなくなっていく。石炭が徐々に注目されていき、石炭を不完全燃焼させたコークスもよく使用されるようになってくる。これに伴い、製鉄技術も向上する。
    こうして18世紀が訪れ、良質の鉄が生まれてくる頃、産業革命へと推移していく。それは同時に、自然エネルギーから化石燃料への転換を伴っていた。
    本書の主な内容は、これ以降の出来事を追う。

    まずは蒸気機関の開発である。蒸気を動力源として、部品を組み立てた装置を動かすという発想は18世紀からあった。これを実用化したのはワットで、それまではピストンの往復運動だけであったものが回転運動も出来るようにして、装置の使用可能性を大幅に広げた。蒸気機関車、蒸気船を初めとした多くの機械が作られた。数学者バベッジは、完成はさせなかったものの、蒸気を利用した自動計算機も構想していたという。
    但し、蒸気機関は効率の低さから、徐々に他の動力源に置き変えられていくことになる。

    脚光を浴びてくるのが電気である。
    18世紀半ばにフランクリンが雷が電気であることを見出す。それから30年ほどして、ガルヴァーニが「ガルヴァーニ電気」と呼ばれる現象を発見する。解剖して皮を剥いだカエルの脚が電気刺激により激しく痙攣したのだ。雷でも起きたこの現象は、実は、二種類の異なる金属を接続すれば生じるらしいことが判明する。ガルヴァーニはこの電気の発生源はカエルの体内にあると考えたが、ヴォルタは後にこれを否定し、生物でなくても異なる金属の間に湿った物体が存在することが重要であることを見出した。これが電池の開発へとつながっていく。
    ガルヴァーニの説自体は誤りだったが、現象が鮮烈であったために、この実験はあちこちで行われ、人々に畏怖の念を与えた。メアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』もこの現象なしには生まれていなかったかもしれない。
    電気エネルギーの研究が進むにつれ、電気と磁気の関係も判明してくる。さらには、電磁気学と光学が融合し、後の通信・情報革命への道を拓いていく。

    電気の担い手が電子であることがわかったのは19世紀末である。不可分であると考えられていた原子が実はさらに小さな部分で構成されてくることがわかり、物理学は原子の中へと入っていく。
    放射能の発見はまったく新しい大きなエネルギーの存在を示唆した。
    原子核エネルギーはそれまでの化学エネルギーとは文字通り桁違いの大きさを持った。
    中性の「錬金術」は卑金属から貴金属を作ろうとする試みであり、当時の技術レベルではまず無理なことであったわけだが、原子の構造がわかってくれば、核中の陽子の数を増減させることで「理論的」には可能であることがわかる。実際、1924年、日本の長岡半太郎は錬金術のような試みを行い、水銀を金に変えたと発表した。これは実のところ、中性子の影響を考えず、また粒子間の結合力を低く想定していたため、実験としては失敗していたのだが、発想としては先駆的であったとも言える。

    その後、中性子が発見され、中性子を原子に照射することで、核分裂という現象が起こることが判明してきた。
    この反応は新たな中性子を生み、これがまた別の原子に衝突し、といった連鎖反応を起こす。一気に進行すれば爆発的なエネルギーの放出が起こるわけである。
    時は第二次大戦と重なる。ドイツが核爆弾開発に先んじることを怖れた米国は科学者たちを集め、核爆弾の開発が一気に進んでいくことになる。
    桁違いのエネルギーは、使用に非常に慎重でなければならない。核エネルギー開発はそのことを如実に示した例と言える。著者の記述には、原発事故に寄せる思いも滲む。

    エネルギーの歴史を考えるとき、人が何からエネルギーを生み出してきたか・エネルギーをどのように利用してきたか・エネルギーを使って何が出来たのか、といった実用的な面もあるが、それだけではない。
    エネルギーとは何なのか・あるものからなぜエネルギーが生じるのかを考えることは、実は、物質の構造や宇宙の歴史に関わる根源的な問いを孕む。
    つまり、我々が知る物質や世界はどのように(何を動力源として)生まれ、どのように推移していくのか、という問いである。
    世にエネルギーがなければ、地球も生まれず、もちろん、人類もいなかった。宇宙で星が誕生しまた消えていくのも、地上の森羅万象も、エネルギーなしにはありえないのだ。
    自然を理解しよう・宇宙を認識しようとする科学の営みは、エネルギーとは何か、またはエネルギーが引き起こす諸現象の解明であると見ることもできる。

    本書の特徴の1つは、実際の歴史とともにSF作品のアイディアも紹介していることだろう。それらは、ときに興味深い仮説として、思考実験の題材となる。
    巻末の年表を見つつ、エネルギーの歴史の流れをおさらいしてみると、新鮮な視点から世界が見えてくるようでもある。

  • エネルギーは、経済問題や外交・安全保障問題として捉えられがちですが、この本にはそういうものを超えた、エネルギー。

    末尾の分を引用します。「エネルギーというテーマを聞くと、往々にして、実用化された動力源としての側面だけに関心が向けられがちである。しかし、本書をとおしてみてきたように、エネルギーとはそれらをも含め、宇宙全体についての認識と深くかかわる根源的かつ包括的な課題なのである。」

    ものごとはつなげて考えると圧倒的に面白い。学校でならったようなことから、暗黒エネルギーの話まで。学校の勉強を思い返しつつ、面白くって、こういうことなら暗記したいなあ。

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著者プロフィール

1948年生まれ。早稲田大学名誉教授。理学博士。著書に『寺田寅彦』『入門 現代物理学』『科学史人物事典』『科学史年表』『どんでん返しの科学史』(中公新書)、『ノーベル賞でたどるアインシュタインの贈物』(NHKブックス)、『ノーベル賞で語る20世紀物理学』『光と電磁気─ファラデーとマクスウェルが考えたこと』(講談社ブルーバックス)『エネルギーの科学史』(河出ブックス)など多数。

「2020年 『高校世界史でわかる 科学史の核心』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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