歴史という教養 (河出新書)

著者 :
  • 河出書房新社
3.61
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本棚登録 : 152
レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309631035

作品紹介・あらすじ

「歴史」が足りないと、
言葉は安っぽくなり、行動は独りよがりになり、
前例を知らないので何でも新しいと錯覚し、
思考が厚みを持たないので場当たり的になり、
刹那の変化に溺れて、忍耐も我慢も欠いて、とんでもなく間違える……
歴史に学べと言うが、先行きの見えない時代の中で、
それはいったいどういうことなのか――?
この国を滅ぼさないためのほんとうの教養とは――?
博覧強記の思想史家が説く、これからの「温故知新」のすすめ。

【歴史を学び生かすヒントが満載!】
「歴史」が足りない人は野蛮である
歴史とは、子泣き爺である
人には守りたいものがある
昔に戻ればいい、はずがない
「懐かしさ」はびっくりするほど役立たない
今だけで済むわけではない
歴史は繰り返す、と思ったらアウト
歴史の道は似たものさがし
歴史小説は愛しても信じてはいけない
「偉人」を主語にしてはいけない
ものさし変えれば意味変わる
歴史を語る汝が何者であるかを知れ
歴史は「炭坑のカナリア」である……

感想・レビュー・書評

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  • なぜ歴史教育が必要なのか。ただの歴史的事実を知ることが歴史教育ではない。歴史は繰り返す、という史観のもと過去を学ぶ姿勢を否定している。その背景に見え隠れしている思想を理解することで過去を背負い、新しい歴史を歩んでいくために我々は歴史を学ばなければならない。ということに気付かされた本。実際に今まで世界史上で登場した様々な史観、思想を丁寧に解説し、筆者自身が新たに定義した温故知新主義を説く

  • 最近ちょくちょく荻生徂徠に出くわす。やっぱり勉強しないといけないのか、徂徠。

    memo
    第五章 歴史と付き合うための六つのヒント
    ①歴史の道は似たものさがし
    ②歴史小説は愛しても信じない
    ③「偉人」を主語にしてはいけない
    ④ものさし変えれば意味変わる
    ⑤歴史を語る汝が何者であるかを知れ
    ⑥歴史は「炭坑のカナリア」である

  • 最初にざっと読もうとしたときは、面白いのは序章だけかな〜なんて思ったけど、本腰入れて読もうとするとためになる。

    ・「アウシュヴィッツ以後、詩作は野蛮である」
    テオドール・アドルノの箴言

    ・アウシュヴィッツは究極の合理主義だった。それはソ連にとってのシベリア的なるものであり、強制労働空間だった。
    映画でも強制労働させられてるシーンをわりと見ていたはずなのに、テキスト化されてようやく理解できた…。

    ・ルイ・オーギュスト・ブランキ
    19世紀のフランスの革命家。フランソワ・バブーフの影響を強く受けた。共産主義の始祖とも呼ばれる。
    1830年はシャルル10世を倒した七月革命にブランキあり。1839年には「四季の会」クーデター未遂事件にブランキあり。1848年にはルイ=フィリップを倒した二月革命にブランキあり。投獄を繰り返される。
    共産主義の革命の理屈はマルクス、戦術はブランキ。
    のべ30年以上も牢獄に入っていた結果反復主義者に。
    「反復主義」とは、疲労して感覚の摩滅した人間の堕ちる「近代の地獄」なのではないか。この地獄とはニヒリズムの地獄。

    ・ポピュリズムの政治家は民衆の人気を取るために政治内容を想像し、支持を失えば平気で手のひら返しをする。
    筋の通った個人の思想の実体はない。ポピュラーによって作り上げられるのがポピュリズム政治家。独裁者とはまるで違う。逆に民衆によって操られているともいえる。

  • 独特の文体、途中で断念

  • 片山節が大変面白く勉強になりました

  • 日本社会は、長いものにまかれろ、勝ち馬に乗れ、的な「勢い」史観で動いているんだろうなぁ、とがっかりすると同時に反論できない説得力をもって、感じさせられた。歴史とか教養というと、日常生活とは一歩離れたところにありそうな印象がある。でも本書を読むと、そうではないと思う。勢いとか、流れにあらがいにくいからこそ、一歩踏みとどまって、そこから先に進んでもいいか?と考えるだけの知性は必要だ。そのとき、決して予言にはならないにしても、考えるための手がかりになってくれるのが、歴史とか教養なんだろうね。ちょっと難しかったけど、深みを感じさせる内容を、詩のようなリズムのある文章でわかりやすく観させてくれたと思う。内容をきちんと自分のものにするには、もう二、三回読まないといけないだろうな、なんて思うところはあったけど(苦笑)。

  • 実存主義と田辺元、歴史と偶然性の尊重を感じた。

  • 歴史に学ぶ、とはいうものの
    自分に都合良く歴史を扱いがち、
    その類型が保守主義だったり、ロマン主義だったり、
    という分析はなるほどと思った。

    英雄中心史観ではなく、
    スパンと主語、視点に自覚的に歴史を見る
    大切さを感じた。

  •  本屋の棚でふと「経験から学ぶ」とは「歴史から学ぶ」に等しいのではないのかと思ったのがきっかけで読んでみた。
     題名に示される「教養」とは、真理を徹見するのに必要な基礎学問である。古代ローマではキケロが「自由七科」(代数・帰化・天文学・音楽、文法・修辞学)と定めている。しかし、ルネサンスから近代啓蒙に至ってはこれらリベラル・アーツは専門教育を支える学問と捉えられるようになった。本書が上梓された目的は、歴史を全人教育に位置づけるときにはどのような観点から寄与することができるかを明らかにすることにあり、歴史のものの見方・考え方を理解することができた。
    ーーーーーー
    まえがき
    序章 「歴史」が足りない人は野蛮である
    第1章 「温故知新主義」のすすめ
    第2章 「歴史好き」にご用心
    第3章 歴史が、ない
    第4章 ニヒリズムがやってくる
    第5章 歴史と付き合うための六つのヒント
    第6章 これだけは知っておきたい五つの「史観」パターン
    終章 教養としての「温故知新」
    ーーーーーー
    序 私たちは生きるうえで、知らず人を傷つけたり、過ちを犯すことを避けえない。したがって、その過ちを二度と起こさぬよう、過去の類例に学ぶことが歴史の姿勢である。歴史とは「経験」でもあるが、ある「経験」はパラダイムの変化をひきおこし、人をそれ以前に戻れなくすることがある。「忘れる」選択肢もあるが、過去を背負ってその反省の上に今日を築くことが「新しい」明日へとつながる方法である。
     歴史のものの見方・考え方(ディシプリン)はまた、決定的瞬間に対する筋道(時系列の因果関係)を学ぶことでもある。予測できなかった「想定外」とは前例を参照しない想像力の甘さの言い換え表現にすぎないことが多い。
     「(歴史から学ぶ姿勢がないと)あなたの言葉は、時間と空間の厚みを失って安っぽくなり、あなたの行動は独りよがりになって説得力を失い、あなたの事実認識は前例を知らないのでやること起きることを何でも新しいと錯覚し、あなたの思考は歴史と経験の厚みを持たないので何事も場当たり的になり、あなたが成功や失敗に学ぼうとしても、それが起きるスパンを捉え損ね、成功と失敗の決定的瞬間のイメージしか持たないので何も学べず、かえって大きく間違え、あなたの態度は物事の生成のスパンを間違えるので忍耐も我慢も欠き、刹那の変化に溺れて、あなたのアンテナは短絡という「悪循環」から逃れられず、危機も聞きと思わす、好機も好機と思わず、あなたは因果連関の見えないアンバランス・ゾーンの中に堕ちていくのです。(p35-36)」
    1.筆者はその歴史的ものの見方・考え方を「温故知新主義」と表す。自分が体験していない経験も含めた過去を学習材料として「脈絡、筋書きを発見して今のどこが重なり重ならないかを探り、考え、ヒントにして」新しい未来を創出するイメージである。
    2.人の歴史に対する態度の陥穽には以下のようなものが考えられる。
     ひとつは「保守主義」である。保守主義は「人間の本質は変わらないので革命を通じて未来を創ろうとしても、同じ轍を踏むことになるため、現在のシステムの上に改善を加えるべきだ」と考える。しかし、それは往々にして、既得権者のロジックになりがちである。状況によってラディカルに変わることも含めた全体を構想することを可能性として残しておくべきであると筆者は主張する。
     ほかに「復古主義」がある。前にうまく行った前例をそのまま復活させようとする試みである。しかし、社会状況や時代、人間が変われば同じ結果は生まれない。見えない未来への不安から、大衆は特に過去の復興に安心感を求めがちだが、それは歴史的態度からみると、思考停止と映る。
    3.「ロマン主義」もある。これは歴史を前提としないフィクションである。「(因果関係がないため)空想的、夢想的であり、現実性がないということでもあります。現実にはないものを探し、手の届かないものに恋をし、二度と取り戻せないものに執着する。因果がとらえられないから、すぐ気移りする。必然への強い思いが生まれない。(p97)」ロマン主義の思考の特徴は機会原因論であり、事象を必然でなく偶然的に理解しようとするので世界は見えないままに終わり、決断がなされることもなくなってしまう。
     「啓蒙主義」はデジタル思考である。経験の前後に意味の因果関係を見出さないからである。その習慣が同じく前後関係を考えないファシズムを招いたと筆者は考える。
    4.「反復主義」は終わりなき日常を生きなければならないという諦観である。フランスの革命家の思想が代表的だが、それに陥ると歴史と現在の事例の小さな部分の違いの検討が無効化されて閉塞感を感じるようになる。
     「ユートピア主義」はマルクスの描いた共産主義を事例として考えることができる。彼は因果関係を重視し、壮大な理論を構築したが、問題は結果ありきの硬直したシステムを作ったところにあった。到達点が決定されているという点で、前述の「復古主義」や「ロマン主義」と同種であると説明することもできる。
    5.歴史から学ぶためには以下の6つのヒントが有効だ。
    1)類似する先行事例の差異を留保しながら「傾向」をつかむことで、対応力を高めることができる。なにを類似すると見るかは、みずからの経験にもとづく「既視感」が有効であるとされる。「いくら歴史を勉強しても、経験が想像力かその両方かに豊かさがないと、おそらく無駄です(p144)」
    2)歴史小説は都合よく「編集」されているので鵜呑みにはできない。
    3)事象をみるときに「人物」に焦点化しすぎてはいけない。
    4)歴史を見るときのスパンのとりかたを短期・中期・長期ほか複数もつようにする。特に、スパンの区切りにも注意をはらう。「どこからどこまでで見るか。何と関係づけるか。さまざまな評価が生まれうる。それが歴史というものです(p165)」
    5)自分が生きている時代のなかに何を見て、自分の願望は何かを知って、それを歴史にどのように投影しているのかを自覚する。
    6)歴史は危険を察知するのに役立つ。
    6.上記に挙げた「史観」には5パターンある。右肩下がり、右肩上がり、興亡、勢い、断絶、である。興亡とは栄枯衰勢を指し、勢いとは、歴史を動かしているのは多勢の空気であることをさす。すなわち、上がっているか下がっているかということに着目するのではなく、誰に趨勢があるかの推移を説明することが分かりやすく歴史を伝えることになる。断絶とは、キリスト生誕の前後のように、瞬間にすべてが変わる点をつなぐ歴史の説明方法である。
    終 歴史の見方・考え方とは「過去の歴史の可能性を酌んで、今の欲する賽の目を占い、未来の歴史の革新に賭ける」ことを指す。私たちは歴史的に形成されており、歴史とは、自分の経験なのである。
    ーーーーーーーーーー
     以上、自分が理解したのは、さまざまなディシプリンのなかで、歴史は前後関係に基づいて問題の解決を図ろうとする学問であり、手法は比較分析とすることである。また、スパンを複眼的に捉えることで事象を多角的に見ることも教えることが分かった。
     経験との関連性でいえば、歴史という経験から学ぶ方法は、既視との比較であり、行われなかった可能性も含めた検討もおこなうことで学びを深めることができることが分かった。また、必ずしも自分が体験したことではない過去を自らの経験のひとつと考えることを知った。そのためには、自分の過去体験を一般化して準えることのできる「想像力」がもとめられる。
     実際に体験しないことも自分の経験として学習材料にできることが興味深い。たぶん、そのような学習方法についての理論もあると思うので、概説書を探してみたいと考えた。
    ーーーーーー
    追記(2019/3/17)
    ・経験するということは経験する前には戻れない、屈託がにじむことをさす。

  • 歴史を知っても先が見通せるわけではないが、歴史の中から現在の状況の類似例を探し、できる範囲で対処することはできる。

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著者プロフィール

1963年、宮城県生まれ。思想史家、音楽評論家。慶應義塾大学法学部教授。専攻は近代政治思想史、政治文化論。慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学。著書に『音盤考現学』『音盤博物誌』(アルテス・パブリッシング、吉田秀和賞・サントリー学芸賞)、『未完のファシズム』(新潮選書、司馬遼太郎賞)、『「五箇条の誓文」で解く日本史』(NHK出版新書)、『鬼子の歌』(講談社)など。

「2019年 『革命と戦争のクラシック音楽史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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