アルトー後期集成 2

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309705323

感想・レビュー・書評

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  • アントナン・アルトーという存在は謎である。これまで何冊か断続的に読んできてはいるものの、すっきりと掴みきれないところが多い。
    本書はロデーズの精神病院に入院させられた時期の断章や手紙で構成されており、この時期のアルトーの「あがき」や毒をまき散らす様子がよくわかる。
    特に第2部の書簡集は面白く、毒を盛られただのといった被害妄想がいろんな人に向けて書かれ、これは完全に「統合失調症」の症候なのである。
    では、アルトーの著作とは、脳の一部の障害により混迷した病者の妄言にすぎないのか? いや、アルトーの場合はそれでもなお、どこか明晰なところがあって、初期から一貫した言説の流れが感じ取れる。強度の統合失調症患者による激越な妄想の記録ということではシュレーバー回想録もあるが、アルトーの場合は症候そのものが興味深いということではなく、病状の強弱もあろうが、この両者のテクストは根本的に何か違っている。
    演劇の脚本を除けば、アルトーの著作は「芸術作品」ではなく、「思想書」とも呼べない。
    何と呼んでいいかもわからないまま、その「テクスト」を通して、世界の亀裂からずっと奥へと突進するような意味論的パトスを、いつも裏切られる「言葉」と戦いつつアルトーが生きるというその希有な出来事を、我々は手に汗握って見守るしかないのである。

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著者プロフィール

1896-1948年。「思考の不可能性」を思考するフランスの詩人。「残酷劇」を提唱する演劇人。西洋からの脱却を必死に試みて、後年、精神病院へと監禁される。激烈な生涯と『演劇とその分身』『ヘリオガバルス』等の著書によって巨大な影響を与え続けている。

「2019年 『演劇とその分身』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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