太平洋の防波堤/愛人 ラマン/悲しみよ こんにちは (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-4)
- 河出書房新社 (2008年3月11日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (622ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309709444
感想・レビュー・書評
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101231*読了
2010年最後の読書はこの本でした。デュラスの2作品と、サガンのあまりにも有名な作品。太平洋の防波堤が個人的には好き。でも文体としてはサガンのやわらかさが好き。フランス文学の一端に触れる。もっともっと世界中の文学作品を読みたい。もちろん日本の作品も。文豪は本能のままに書くのだなぁ、と感じました。愛人なんか、一人称と三人称、時間のつながり、全てがめちゃくちゃ。でもその躍動感に引きこまれる。書くことが生きることと直結しているように思います。小説って完全にフィクションで作り上げなくても、自分の経験をふんだんに織りこんで、こんなにすばらしい作品を作ることができるんですね。池澤夏樹編纂の世界文学全集を読みあさります。来年へ向けての決意。笑
220821*読了
驚くことに私は12年前にもこの本を読んだのだけれど、「悲しみよ こんにちは」だけを読んだのだと思っていた。実際は収録の3作とも読んでいた…。私の記憶力…。
今回再読した理由は、池澤夏樹さん編の世界文学全集、日本文学全集をコレクションして、読破するという目標のため。
以前は図書館で借りて読んだのだけれど、今回は購入して読みました。
当時から池澤夏樹さん編の文学全集を読みたい願望を抱いていて、10年以上経ってやっとその夢を着々と叶えているところ。
それぐらい私はこういった文学が好きで、その気持ちは変わっていないということ。
以前読んだ時は「太平洋の防波堤」が気に入っていたよう。
悲しいことに全く読んだ記憶が飛んでいたのだけれど、確かにおもしろい。
キャラクターそれぞれの個性がぶつかり合いながらも、どこかどんよりとした退廃的な雰囲気が漂う感じ。
「太平洋の防波堤」も「愛人」もデュラスの実体験を反映させていて、当時の植民地での支配側だったとしても、こんな苦労があったのか…と思ったし、現地民の苦しい状況もありありと描かれていて、知らない部分をまざまざと見せつけられた感じ。
そしてどちらも兄の印象が強い。これもデュラスの生い立ちが関わっていて興味深い。
「愛人」はタイトルこそ愛人だけれども、結局それのみがテーマではなかったのでは?とも思えてしまう。
「悲しみよ こんにちは」が一番ストーリー性があって読みやすかった。以前も読んだと覚えていたのも、そのせいかもしれないし、当時サガンの小説が読みたかったというのを記憶していたからでもあります。
それにしても、17歳の少女が書いたとは思えない。才能をひしひしと感じました。
いずれも思春期真っ盛りのティーンエイジャーの少女、そしていずれも性へと踏み出す様子が描かれているのも、この巻を特徴づけている。
この当時ならではの、自分の全てが性に染まってしまうような、潔い貪欲さ。
大人になって振り返った時、決して後悔しない奔放さ。
程度の差こそあれ、そして「愛人」ではあまりにもどっぷりと浸ってしまっているものの、誰しもこんな時があったはず。それが行為そのものや相手そのものでなくても、性に夢中になる時期があったはず。
2010年の感想の方がしっかり書けているように思う。笑 若さ故か老化故か…。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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ラマン…会話文が全くない小説。回想?
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太平洋の防波堤、初読み。面白かった。同じネタ(思い出)を何度も書いているけど読ませるって、すごい。インドシナの湿気を含んだ暑い空気を感じ、植民地社会を知り、登場する人間の個性に魅かれ、主人公の若い女性のたたずまいにシンパシーと憧れを抱き。ラマンも何度も読んだなー。読み返したかったが、時間切れで返却。サガンは・・・学生時代に読んで面白くなかった記憶により、今回はパス。
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以前、一度『愛人』を読もうとして手に取ったときは数ページ読んで「あ、無理…」と思いやめてしまったのだが、今回『太平洋の防波堤』を読んでから『愛人』を読んだら内容がすっと入ってきた。なぜこの二作品が一緒に収められたのかがよくわかる。
「わたし」とシュザンヌ、「下の兄」とジョゼフ、「チョロンの男」とムッシュウ・ジョー、そして母。登場人物はほぼ共通していると言っていい。二つは別個の作品だが、同じ話を読んでいると感じた。
母の失敗、無駄な抵抗、それをどこか冷静に見つめる子供たち。母親の姿を見ながら、自分はこれからどうするかを考えている。後ろめたさはあったかもしれないがジョゼフが一番利口だったのではないかという気がする。
親が心臓が動いている亡霊に近い状態になったとして、最期まで一緒にいてあげられるかと考えると、ちょっと辛い。完全に離れることはできなくても距離を置きたくなると思う。だからジョゼフの気持ちはよくわかる。看取ったシュザンヌはえらいと思うが、単純に自分の未来を描く能力がないだけの様にも見える。
『愛人』という題からは恋愛の話を想像するけど、チョロンの男との愛がどうこうというよりは、こちらもやはり家族の話のような気がした。家族によって満たされない部分を他人に求めようとしたんだな、と。
『悲しみよこんにちは』は新潮文庫で読んだので割愛。 -
太平洋の防波堤
愛人 ラマン
デュラス
悲しみよ こんにちは
サガン -
デュラスはラマンが有名だけれど、僕は太平洋の防波堤の防波堤のほうが断然好きだ。描かれて問題のスケールの大きさに圧倒されるし、登場人物達の個性が面白い。実体験に基づいているとはいえ、問題と対峙する人間への洞察力に圧倒される。
サガンは、間違いなく偉大なストーリーテラーだと思う。これまで食わず嫌いで読んでこなかったが、本作のプロットは秀逸だし、人物造形もリアル。凄い想像力だと感じた。 -
収録順ではなく以前より読みたいと思いつつなかなか読めなかった順に読み進めてみた。
フランスの女性作家、十代の女の子が主役という共通点はあるものの、サガンの描く女の子は奔放で、デュラスは王子様願望のある内省的な女の子、といったイメージを持った。
【悲しみよこんにちは 2015/02/28読了】
サガンの処女作となるこの作品は、青春の鬱屈した気持ちが表現されていた。もう少し若い頃に読んでいれば、セシルの気持ちにより添えたかもしれない。
だが今はアンヌの言い分もわかり、私は板挟み状態。
【愛人 ラマン 2015/03/04読了】
デュラスの自伝的作品。ジャンジャック・アノーにより映画化された作品で、当時かなり話題になったのを覚えている。平たく言ってしまうと、女子高生が援助交際をする話。
細い糸でつながっている二人の関係が切なかった。
【太平洋の防波堤 2015/03/12読了】
被害を防ごうと防波堤を造ったもののあっけなく壊れてしまう。もう一度、防波堤を築こうとする母親を支えようとする息子ジョセフと娘シュザンヌ。
家族の物語であると同時に、子供たちの成長を描いている。
この作品を読み終えたのは、奇しくも東日本大震災から4年後の翌日だった。読んでいて、スーパー堤防を思い出してしまった。