ハワーズ・エンド (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 I‐07)
- 河出書房新社 (2010年8月3日発売)
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感想 : 32件
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Amazon.co.jp ・本 (508ページ) / ISBN・EAN: 9784309709475
みんなの感想まとめ
人と場所の関係を深く掘り下げた作品であり、特に家族や社会との結びつきがテーマとなっています。登場人物たちは知的で理想を持ちながらも、現実に翻弄される様子が描かれ、特に主人公のマーガレットは他者の運命に...
感想・レビュー・書評
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初読 ★3.5
吉田健一氏の翻訳、を楽しみに読む始めたのだけど、
これが私と合わなくて、なかなか苦戦。
けど、癖になる、というのもうっすら理解できるような
フォースターの人間の内面動きをこれでもかと
文章化する手法にも圧倒されながら流してしまったような…
お父さんが遺した遺産での文化教養三昧生活、イイナ〜
とか思いながら
イギリスの小説の明確過ぎる身分の上下に
おお…と不思議な感嘆。
それにしても、イギリスにおけるロンドンと田舎って
単に都会と田舎、東京都心と地方、の感覚とは違うよね…
田舎が美し過ぎるから?
「金は世界で2番目に大事」の下りで出てくる
「緯糸が何であろうと現金が文明の縦糸」
巻末の池澤夏樹氏の解説で縦糸は最初から織り機にセットされている、
とあり、ようやく縦と緯の違いを理解した次第。
ああ、だから「縦の糸はあなた、横の糸はわたし」なのか!と笑
セットされた縦糸に対して、及ぶのは緯糸って事かかぁ
マーガレットとヘレンの関係は
姉妹である自分と妹の関係を思い起こしてなかなか胸が痛かったり。
「あやまち」をおかした妹に対してマーガレットのように
大事な事を大事に、フェアに振る舞えるか?
全く自信はない。40過ぎた今になっても。
たとえ自分達が間違っていても、そちらの結果の方が良いなら
「自分が間違えた」という事に頓着しない、
そういうフェアネス、持ちたいどす…詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ここに描かれているのは、おそらく滑稽な喜劇なのだろうと思う。
登場人物たちはだいたいみな知的だし、理想を持っており、さらに日々の生活もきちんとしている。しかしそれでもなお、どうしてか、地に足がついていないのである。彼らはみな自分の頭でものを考えているにも関わらず、右往左往し、感情的になり、他人とすれ違う。ただ一人、本当に現実を見ているように描かれているのは主人公のマーガレットのみである。面白いのはそのマーガレットこそ、どうしようもなく他者の運命に飲み込まれ、やはり思うようにいかないところだ。
ただひとつだけ、しっかりと地に根を下ろし、何物にも飲み込まれないものがある。それが「ハワーズ・エンド」である。この家が持つある種の引力が、まるで見えない緩やかな軌道を描いているかのように、めぐりめぐってマーガレットを導くのだ。
私はこれまで、自分は芸術の話をしようとすると金の話になってしまうのは嫌いじゃない、と思っていたのだが、この本を読んでいて「そういうのはフィクションの中だけにしておくれ」とも思ったので、やっぱり嫌いなのかもしれない。自分は金の話ができると思っていたけれど、やっぱりできないのかもしれない。
そういう人間にとっては、本書は読んでいて楽しいだろう。しかしそんな私でさえも、この本を読んでいて「なんとお節介なのだ」と感じた。
それは、見ればすぐわかることをわざわざ言うようなお節介さである。つまりは、それ自体が皮肉なのだ。ご飯が食べられないと飢えて死んでしまうということを、人に向かって指摘すること事態が滑稽なのである。なぜならそれは誰にも自明だから。そこをあくまで真面目にやる「お上品さ」に耐えられないという人もいるだろう。
それでも自分は何かを知っている、という思いが溢れて暴走してしまうヘレンのくだりが、私はとても興味深かった。彼女の素直すぎる性格よりも、彼女が固執しているものに私は共感した。彼女の冒頭の手紙の中には、確かに「どこにもないけれど私たちが知っている」ハワーズ・エンドが書かれている。
「だから、この家はそうなんだってかまわない式の所ではなくて、眼をつぶると、やはりわたしたちが考えていた、長い廊下のホテルにいるような気がする。でも、眼を開けるとそうではなくて、それには野薔薇が綺麗すぎる。」 -
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はじめまして。レビューにいいね!ありがとうございます。
最近この池澤夏樹編世界文学全集にハマっており、abraxasさんのレビュー興味深く...はじめまして。レビューにいいね!ありがとうございます。
最近この池澤夏樹編世界文学全集にハマっており、abraxasさんのレビュー興味深く読ませていただいております。
フォースターの作品を読むのは初めてだったのですが、男の人が書いたとは思えず、ジェイン・オースティン風の英国の香りを感じました。知的な女性たちはもちろん素敵ですが、何もかもお見通しといった不思議な夫人エーヴェリーさんも魅力的です。
本棚も拝見しましたが、海外文学たくさん読まれているのですね!私も海外文学好きなので、参考にさせていただきたいと思います。2017/10/04 -
マヤさん、コメントをありがとうございます。本棚にお邪魔しました。お互い海外文学ファンなのですね。ウォーの『回想のブライズヘッド』も読んでいら...マヤさん、コメントをありがとうございます。本棚にお邪魔しました。お互い海外文学ファンなのですね。ウォーの『回想のブライズヘッド』も読んでいられるとは、好みの良く似ていることに驚きました。ここのところ、ミステリその他に偏りがちですが、池澤夏樹個人編集の文学全集は、僕も随分読みました。最近は、日本文学全集が出ていて、こちらも面白く読んでいます。訳者によって原作の趣きが変わってくるのは、外国も日本の古典も同じのようです。2017/10/04
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訳が違和感があることもあり、不勉強な私にはとても読みづらく一部よく分からないところもあり、読んでいて少ししんどかったのが残念です。少し哲学的な描写もあり、理解できたらかなり深みを味わえたんだろうなと思います。
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「ネコは家につく」なんて言葉があるけれど、人も家につくタイプがいるのだな。先日読んだハーディの「テス」といいウォーの「ブライヅヘッドふたたび」といい、イギリスの小説は情景描写が美しく目の前に景色が広がるようだ。嗚呼憧れのハワーズ・エンド。わたしにとってのそれは、どこにあるのだろう。
自分も東京という都会に住んでいるので、ロンドンに住み流れ行く人や物に不安を覚えるマーガレットの気持ちはなんとなくわかる。「人をたくさん知れば知るほど、代わりを見つけるのがやさしくなって、それがロンドンのような所に住んでいることの不幸なんじゃないかと思う。わたしはしまいには、どこかの場所がわたしにとって一番大事になって死ぬんじゃないかという気がする」
そう気付きながら、自分とかけ離れた考えの男と自分を「結びつけ」ようとするマーガレット。この「結びつけようとする」ことが難しく見えて初めからやる気にならない事が多い私にはマーガレットが超人に見える。自分が認められる前に相手を認めること、とはよく言われるけれど、言葉で言うほど簡単ではないと思うから。
それにしても家って不思議なもので、そこは誰かが住んでいないと「家」ではなくて、ただの建物に過ぎない。しかし住んでいる(あるいは住んでいた)からといって、そこが自分にとってほんとうの「家」といえるとは限らない。自分がそこにいるべき場所、マーガレットにとってはそれがハワーズ・エンドだったのだけれど、こういう場所はみんながみんな見つけられるわけではないから、見つけられたならその人は幸福だ。ハワーズ・エンドになんの未練もなかったウィルコックス氏その人が結局はそこを住処にするのが妙。マーガレットの結びつける力、恐るべしである。
人と人との関係だけでなく、人と場所との関係を描いた小説でもある。今の自分の居場所に疑問を感じている人が読むと、共感できるのではないだろうか。関係性の築き方も参考になるかもしれない。 -
[03][130212]<mo とても饒舌だけれど、それが、私たちの内側から言葉の形で現れ出てくるものはほんの一握りだということを逆説的に表現している。付属の池澤夏樹の月報に「仮にマーガレットが実在するとすれば、彼女はいかにも『ハワーズ・エンド』を愛読しそうな女性ではないだろうか」とあってちょっとにやっとしてしまった。良くも悪くも言い得て妙。
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滅多に出逢えないような、夢中になって読める物語。理知、綺麗ごとだけで済ませない冷徹な視線、それを上回る豊かな情緒と繊細さ。テーマも描き方も、読者として気の抜けないこういう本は貴重です。
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221209*読了
イギリス贔屓のため、イギリスが舞台であることだけで喜んでしまう。
上流階級で育ち、遺産で暮らすマーガレットとヘレン姉妹と、ハワーズ・エンドという家を持ち、いわゆる成金の一家との交流、そして愛。
違う環境で育ち、異なる価値観を持った人たちのやりとりが描かれていました。
コメディを観ているような、茶番ぽい部分もあったりして、そこがこの小説の素敵な味付けに思いました。
こういうイギリスの文学はこれからも読みたいところ。 -
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本書の初版が1913年、漱石の明暗が1916年。洋の東西は異なるが、社会階層や生活経済、女性の自立等の問題意識は共有されていたことがうかがえる。吉田健一流の「〜で」でひたすら繋いでいく文体に流されるように読み続けると、行ったことはないイングランドの風景に陶然となり、正直最後の方は主人公達の細かな諍いなどどうでも良いような気分に浸ることができた。
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フォースター 「 ハワーズエンド 」
描かれているのは 「身分や財力に上下の差があっても、人間に上下の差別はないとする人間観」
この本で問われているのは
*人と人との関係(人は階級を超えて理解し合えるか=精神を理解できるか)
*人と精神の関係(精神の象徴として ハワーズエンドという家を描いた)
*人とお金の関係
この本で強調されているのは
*落ち気味の資本家階級と上昇している中産階級の心のギャップ
*家の精神性(単なる建物でなく精神の象徴であったり、精霊が宿っているようにも感じる)
人とお金の関係
*精神とお金は 縦糸と横糸→お金があれば カドがとれる
*人間の死が お金が無意味であることを教えてくれる
人と人との関係
「人と人との関係が本当の人生」
「人間を信じること〜人を瞞すのは人間がすることだけれど、人を信じなくなるのは悪魔の仕業」
「私たちはみんな霧の中にいる」
「死は人間を消滅さけるが、死の観念は人間を救う」 -
価値観というのは、時代とともに変わるものなのだろうか。多くの人は肯定するだろうと思う。僕だってそう思っていたし、そんなこと常識過ぎて、疑ってみたこともなかったからだ。けれど、本書を読んで、この100年の間に人間の価値観はどれだけ変わったのだろうと疑問を持った。
本書が執筆された100年あまり前の英国と今の日本とでは、あまりに考え方が違うようにも思える。だが、本質的にはどうなのだろうか、と考えざるを得ない。今でこそ息子が大学でLGBTの問題を講義で習ったりしているが、本書でもすでに性的マイノリティの問題を匂わせるような議論も提示されている。本書に登場する「教養が低い」とされる男の言葉など、つい最近の日本の政治家の下卑た発言と驚くほど似ている。
云えることは、どんな時代でも、価値観の違いを乗り越えて理解し合うことは本当に難しい、ということではないだろうか。 -
保守家庭と進歩家庭との感動的な交流。
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退屈で魅力的。そう、どこかジェーン・オースティンを思わせるような。出だしと結末の一文が特に素晴らしいですね。ただ少し翻訳に癖があって、読みづらさを感じる人もいるかも。
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読みはじめました。舞台は英国、あれ?はずかしながら、著者をフォークナーと勘違いしていました。こういうのも文学全集の楽しみですね。 2013-1-21
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まさしく英国らしーい作品。イギリスものって安心して読めるなあ。
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現代の日本人にはピンと来ないかもしれませんが出自や文化の違いが恋愛や結婚の障害になることがありました。
この物語の登場人物たちも色々な問題に出会い苦悩します。
そこにはいつの時代にも当てはまる人間の本質が見えてきます。
愛と寛容をめぐる不朽の名作です。
ちなみに訳は吉田健一氏(麻生太郎議員の伯父)ですが最初その訳文には戸惑います。
何回か読み返さないと理解できない箇所もありました。
しかし中盤以降慣れてくると、とても心地よく感じてきます。 -
[ 内容 ]
人と人は真に理解しあうことができるのか。
思慮深く理知的な姉マーガレットと、若くて美しく情熱的な妹ヘレン。
ドイツ系の進歩的な知識人家庭で育った二人は、ある時まったく価値観の異なる保守的なブルジョワ一家と出会う。
ふかい緑に囲まれた、この一家の邸ハワーズ・エンドをめぐって、やがて二つの家族は意外な形で交流を深めていく―文学や芸術に重きを置き、人生の意味を探し求める姉妹は、イギリス社会のさまざまな階層の人間に触れながら、それぞれの運命をたどっていくこととなる。
人と人とが結びつき、お互いに理解しあうことはいかにして可能になるのか。
愛と寛容をめぐる不朽の名作を、吉田健一の香気ある翻訳でおくる。
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