鉄の時代 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-11)

制作 : くぼた のぞみ 
  • 河出書房新社
3.90
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本棚登録 : 181
レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309709512

作品紹介・あらすじ

反アパルトヘイトの嵐が吹き荒れる南ア、ケープタウン。末期ガンを宣告された一人暮らしの初老の女性ミセス・ヘレンは、自分が目の当たりにした黒人への暴力の現実を、遠く離れて暮らす娘に宛て、遺書のかたちで書き残す。そして、彼女の家の庭先に住みつき、次第に心を通わせるようになったホームレスの男に、その遺書を託そうと決意するのだった-英語圏を代表する作家の傑作を初紹介。

感想・レビュー・書評

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  • 読み易い本ではなかったけど、興味深く読めたと思う。珍しく。100冊読んで99冊はつまんないからなあ。。苦笑

    訳者や選者池澤夏樹氏の解説はまだ読んでない。
    バイアスが入る前の感想を書こうと思った。

    帯に池澤氏は「差別が制度化された南アで差別がどう人の心歪めるか」と書いてる。
    だけど僕は差別が主題ではないという気がしたな。むしろ「孤独死」。

    僕にも、まったく同様の事が起こりうること。この瞬間にも東京でもどこでもきっと起きていること。

    その心情、気持ちの移り変わりが1人称でつづられる。

    最後、少し救われたのかな。。いや救いというよりあきらめ。達観かな。。

  • 訳者があとがきで、あくまでひとつの見かたとして「恥」を本書を読むキーワードとして上げているが、私自身は「恥」がこの本の中心テーマだと思う。

  • 手紙という形式にはちょっとなじめなかったけれど、書き留めておきたい言葉が数限りなく散りばめられていた。

  • これまで読んだクッツェーの作品の中で、マイケルKと並んで読みやすいと感じだ。どちらもくぼたのぞみ氏の訳によるからなのだろうか。
    かといって内容が平易だっということではない。著者の他の作品に比べると直情的で単純な話のようにも感じられるのだが、マイケルK同様、アパルトヘイトの本質に対する理解がないと表面的な読書経験になってしまうのだろう。再読したい。(鉄道とは何の関係もありません。念のため)

  • 言葉が美しい。翻訳だなんて思えないぐらい。

  • 「好きにしろ、おまえはおまえ自身の主権者だ」。親はそう言って子どもたちのことから手を引く。ほんとうは子どもは親にいろいろ言ってもらいたいのに。大人なしで子は大人になれないのに。それでも時間の経過は子どもに大人になることを強いるから、子は親の不在を親の死と解釈し、規範も制限も失くした彼らは「死の子どもたち」(P.58)―なんと鋭く突き刺さる言葉だろう―になってしまう。

    まるで国家から莫大すぎる自由裁量を与えられたがゆえに、正しい行動規範を見失った個人のよう。そこでは権利と同等以上の義務を負わなければならないのが自明なはずなのに、個人は権利を振りかざすばかりで、現代ではそんな陳腐な言説では拝金主義者の強欲を諌めるどころか、子どもでさえ黙らせるのが困難だ。この物語の射程範囲は、アパルトヘイト時代の南アフリカに留まらない。こんな鉄の時代が終わって、再び粘土の時代がくるのはいつだろう。

  • アパルトヘイト時代に生きる人々。

  • 『夷狄~』で興奮し『恥辱』でがっかりし『少年時代』は名作だと思ったクッツェー。
    なんだか作品ごとに表情が違うんだな。
    アパルトヘイトの実情を、私達は知っているようで知らない。
    現地での生々しさが伝わるような、非道さだけでもなく、平穏だけでもなく、よいも悪いもひっくるめての日常が進んで行く。
    そこがまたリアルさを出している気がする。
    生きてゆくべき子供達の死と、死期の近い老婆の生。
    ここにもまた、白か黒か、では割りきれない、テーマが顕されている。
    全体に漂う、このパラドックスの雰囲気が、先の予測を読めなくさせているあたりがまた、おもしろかった。

  • 妙な嫌悪感はどこからくるのだろう。誰を信頼して読めばいいのかわからない不安感に襲われる中、半ばやけくそにもみえるが、少しずつ縮まっているような距離感だけが、ほんとのことのように見える。

  • アパルトヘイト時代の南アフリカを舞台にした作品。主人公の白人女性が末期ガンを宣告されたところから話が始まるが、闘病的なものではなく、庭先に住み着いたホームレスとの交流や、メイド(黒人)の息子やその友達の巻き込まれる過酷な状況といった話が中心である。

    ささくれだったストーリーと状況、心理がクッツェーらしい感じ。決して娯楽作品ではないが、読む価値はある。

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