マイトレイ/軽蔑 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 2-3)

  • 河出書房新社
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感想 : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (483ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309709550

作品紹介・あらすじ

タブーを超えて惹かれ合う若き男女の悦楽の神話。瑞々しい大気、木に宿る生命、黄褐色の肌、足と足の交歓。インドの大地に身をゆだねた若き技師が、下宿先の少女と恋に落ちる。作者自身の体験をもとに綴られる官能の物語(『マイトレイ』)。ある日突然、妻の心変わりを察した劇作家志望の男。繕うすべもなく崩れていく夫婦の関係を夫の目から緻密に描き、人生の矛盾と人間の深い孤独を問いかけるイタリア文学の傑作(『軽蔑』)。愛の豊饒と愛の不毛。透徹した知性がつむぎだす赤裸々な男女の関係。

感想・レビュー・書評

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  • ふくらはぎの艶かしさ。

    (マイトレイのみ読了)
    己の才覚に自信をもつイギリスの青年と、美しいインドの少女の恋。瑞々しくて衝動的で鮮やか。

  • 2021.04.20 図書館

  • マイトレイは、色彩と肉感の表現が素晴らしくて脳内で映像化して読んだ。男の無責任は腹立たしいはずなのに、それによって堕落する女は美しいと思った。

    軽蔑は、、大人の男女関係は難しいし時に儚いと教えてくれた。

  • 「軽蔑」ゴダール監督ミシェルピコリ、バルドー主演の映画を見、見れば自分も「わかってる」の仲間入りを決め込む夢想のアイテムとして映画館に足を運び、案の定さっぱりわからんかった。今となってはモラビアのファンであり、映画は映画として別物として捉えているが、映画がけだるい陰鬱、ただただミシェルピコリの人間臭さの臭みだけで成り立っていたのに対し、本作は意外にも熱い印象を受け、主人公の妻の心の解離を取り戻したい、金とは無縁に自分の沸き上がる物が書きたいという、ストレートな現代人の叫び、シンプルな構成が楽しめた。

  • マイトレイの瞳はソラリスの海のよう。前触れも理由もなく不規則に気まぐれにくるくるときらきらと揺れ動くかに見えて、それはただ文化の違いによる感受性の違いなのかそれともやはりそれだけではないのだろうか。
    どこまでも甘く濃密な愛、個を超えた想像だに出来ぬ程の全き愛の結合は、神との結合でもあり、語り手のみならず読み手をも惑わせ狂わせる。
    ほぼ実話でありながらもそれは著者にとって神話世界の体験なのだ。

    伝統や信仰や規範の揺るぎなさにとって、個だの愛だの自由だのは吹けば飛ぶ様なものでしかない。つまり父母の愛も個を超えているからこそあれ程の厳しさなのだ。

    運命の鍵を握っていた天使的なチャブーは著者を世に出すという役割を担って地上へ遣わされたとしか私には思えない。

    異文化の深みに飲まれて弾かれるH・ジェイムズ的テーマ。ラーガと調性。「インドへの道」も読んでよね。

    (「軽蔑」は読んでません。なんかめんどくさそう。映画は見た。)

  • 「軽蔑」の心理描写がとても素晴らしいと感じた。この手の作品は読みずらいという先入観があったのだが、訳の上手さのためか、すいすい読めた。少し間違うとメロドラマになってしまうような内容だが、描写のリアリズムが陳腐さを排除していると思う。

  • 『マイトレイ』と『軽蔑』、素晴らしい組み合わせでありながら、どこか気に入らない。うまく説明はできない。

  • エリアーデが興味深い。

  • シナリオ・ライター=脚本家って、前々から縁の下の力持ちだなぁ。
    映画って、結局、監督のものだし、ハリウッドでは、プロデューサーの力って大よなって前々から思っていたのですが、
    この『軽蔑』に思わず、その恵まれない仕事をする男主人公の恨み辛みが、詳細に記されていた。

    <ストーリー>
    主人公は、妻がてっきり望んでると思い、自分の戯曲作家への夢を断念し、シナリオライターの仕事を引き受け、高級アパルトメントを購入する。
    が、その妻には、無理にプロデューサーと付き合わせたのが悪かったのか、ある日、ベットを別にしようと言い出し、セックスもおざなりになる。
    主人公は、金のための渋々の仕事、妻の突然の豹変と、惨めな気分に襲われる・・・。

    有名な作家では、『薔薇の名前』のエーコと並んで、超がつく一流の学者でもあるエリアーデの若き日の異国での実際の恋愛を題材とした「マイトレイ」と言い、お買い得です。

    文学(literature)http://literature.ki-blog.biz/より。

  • 自己分析的な知性と傾向をもつ青年が語り手となってみずからの愛のゆくえとその帰結を回想していく、という構成は両編に共通していますが、青年たちがそれぞれの女性に募らせては思い悩むことになる愛の質感は、少なくとも評者にとってはほとんど正反対のように感じられました。両編とも読み終えた方にとって、それぞれの語り手において象徴される愛のあり方に共感できるかどうかが、おそらくはそのまま各編の読後感の決め手ともなったのではないでしょうか。

    心のすれ違いは誰の身にも覚えがあるとしても、その極端な例を『軽蔑』のリッカルドに見たように思います。彼がみずからを批判的にかえりみることなしに、相手の真意をめぐって独断とも思える仕方で確証なき仮定に仮定を積みあげ、妄想めいた思弁を展開していくさまは、読んでいて正直つきあいきれませんでした。妻との不和のさなか、「無実がいつも説得力をもつとは限らないのだ」と思い至る場面は空恐ろしさを越えて憐れを催しさえします。「妻のため」という表白がたびたび出てきますが、妻のために彼が本当になさねばならなかったのは、シナリオライターや劇作家のように言葉と観念の揺り椅子のうえであぐらをかくことではなく、生活という大舞台のうえでリアルに行動し決断する、男らしいアクターになってみせることだったのではないでしょうか。

    一方、『マイトレイ』のアランもみずからの妄想にもとづく思い違いを犯してはいますが、彼の場合は、インド人のうちに秘められた「計り知れない歴史と神話」をもふくめて相手のすべてを理解したいという純粋な熱情が、イギリス人すなわち文明人としての自分自身のあり方に疑問を投げかけるだけの冷静さを生みだしています。そのような醒めた情熱が、インドの聖性と鮮やかな景色、そして蠱惑的な少女との渾然とした融和を遂げていくさまには、自伝的な小説だというのが信じられないほどの美しさがあふれていて思わず息を呑むほどでした。けれども、だからこそその後の二人を待ち受けている運命はよりいっそう悲劇の色あいを強めることともなり、読み終えてページを閉じると、さきほどまで活字を追っていた目はアランの目と同じく、そこにあるはずのない何かをもとめて宙をさまようほかなくなります。

    ともに1907年生まれの作家によって描かれた愛の豊饒と不毛の世界は、世紀をまたいだ今もなお、その快と不快の訴求力を失ってはいないように思いました。

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