マイトレイ/軽蔑 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 2-3)

  • 河出書房新社
4.04
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  • Amazon.co.jp ・本 (483ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309709550

作品紹介・あらすじ

タブーを超えて惹かれ合う若き男女の悦楽の神話。瑞々しい大気、木に宿る生命、黄褐色の肌、足と足の交歓。インドの大地に身をゆだねた若き技師が、下宿先の少女と恋に落ちる。作者自身の体験をもとに綴られる官能の物語(『マイトレイ』)。ある日突然、妻の心変わりを察した劇作家志望の男。繕うすべもなく崩れていく夫婦の関係を夫の目から緻密に描き、人生の矛盾と人間の深い孤独を問いかけるイタリア文学の傑作(『軽蔑』)。愛の豊饒と愛の不毛。透徹した知性がつむぎだす赤裸々な男女の関係。

感想・レビュー・書評

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  • ふくらはぎの艶かしさ。

    (マイトレイのみ読了)
    己の才覚に自信をもつイギリスの青年と、美しいインドの少女の恋。瑞々しくて衝動的で鮮やか。

  • 221115*読了
    マイトレイも軽蔑も、どちらもある一人の女性を巡っての男性の回想録。
    しかもどちらも実話が基になっている。

    マイトレイは、ヨーロッパからインドへ渡り、現地で働くアランと、インド人であるマイトレイとの恋物語。
    何かと制限があり、思うままに恋愛ができないインドで二人は愛し合ってしまった。
    若いからこその過ちといえばそれまでだけれど、当時の二人にとっては、ただただ夢中で、夢のような時間で、そこからの絶望は死にたくなるほどだったのだろう。
    異文化に触れ、傾倒していく様子に、私も引き込まれました。

    軽蔑は、ある夫婦の妻側が夫を軽蔑し、関係が破綻していくという話。
    随分と前に書かれた話だし、日本とイタリアで場所も違うけれど、この女性が男性に抱く軽蔑に共感。
    どんなに愛していても、軽蔑するようになってしまうきっかけってあるし、一度軽蔑してしまったら、もう修復不可能だと思う。
    カプリの別荘で過ごす場面の描写が美しかったり、夢想的であったりしてよかった。

    自分が女性だからか、男性側に感情移入することはほぼなくて、女性側の気持ちを想像して、分かる分かるとなってばかりでした。

  • 「軽蔑」のみ読了。

  • 『マイトレイ』
    作者は、宗教学者として高名なミルチャ・エリアーデ。
    エリアーデの青年時代のインドでの恋愛体験を基にした小説。弥勒(マイトレーヤ)とは関係なし。
    解説を読んで初めて知ったが、マイトレイは相手の本名で、小説中の日記は、実際に作者が青年時代に書いたものを引用したものらしい。私はてっきり、日記体の小説に主人公が現時点での冷静なコメントを入れるという、新奇な小説技巧かと思ったが、そうではなかった。この小説の内容はほとんどが実体験であったらしい。そうするとこうしたコメントも作者の執筆時の心情そのままなのだろう。エリアーデはインドから母国ルーマニアに帰還した数年後にはこの小説を発表している。予想外にもこの小説が大評判となり、エリアーデは一躍、若手人気作家となった。

    『軽蔑』
    小説としてはこちらのほうがうまい。単純な筋書きでありながら、緻密な心理描写で読ませる。
    妻から軽蔑されながら、それでも愛し続ける男の哀しさ・憐れさがよく描かれている。「夫を心から愛していた妻がなぜ突然、夫を軽蔑するようになったか」が読者の興味を惹きつける謎となっている。その答えも、あまりに心理的に繊細すぎるとしても、ありうる答えである。(解説ではネタバラシされているのであとで読んだほうがいい。)オデュッセウス映画製作のエピソードが意外な形で本筋と絡んでくるのも巧み。寝取られ男の主人公リッカルドの心理描写は真に迫っているが、こちらの小説も、作者モラヴィアの現実の生活を反映したもののようだ。解説を読むとそれが分かる。

  • 2021.04.20 図書館

  • マイトレイは、色彩と肉感の表現が素晴らしくて脳内で映像化して読んだ。男の無責任は腹立たしいはずなのに、それによって堕落する女は美しいと思った。

    軽蔑は、、大人の男女関係は難しいし時に儚いと教えてくれた。

  • 「軽蔑」ゴダール監督ミシェルピコリ、バルドー主演の映画を見、見れば自分も「わかってる」の仲間入りを決め込む夢想のアイテムとして映画館に足を運び、案の定さっぱりわからんかった。今となってはモラビアのファンであり、映画は映画として別物として捉えているが、映画がけだるい陰鬱、ただただミシェルピコリの人間臭さの臭みだけで成り立っていたのに対し、本作は意外にも熱い印象を受け、主人公の妻の心の解離を取り戻したい、金とは無縁に自分の沸き上がる物が書きたいという、ストレートな現代人の叫び、シンプルな構成が楽しめた。

  • マイトレイの瞳はソラリスの海のよう。前触れも理由もなく不規則に気まぐれにくるくるときらきらと揺れ動くかに見えて、それはただ文化の違いによる感受性の違いなのかそれともやはりそれだけではないのだろうか。
    どこまでも甘く濃密な愛、個を超えた想像だに出来ぬ程の全き愛の結合は、神との結合でもあり、語り手のみならず読み手をも惑わせ狂わせる。
    ほぼ実話でありながらもそれは著者にとって神話世界の体験なのだ。

    伝統や信仰や規範の揺るぎなさにとって、個だの愛だの自由だのは吹けば飛ぶ様なものでしかない。つまり父母の愛も個を超えているからこそあれ程の厳しさなのだ。

    運命の鍵を握っていた天使的なチャブーは著者を世に出すという役割を担って地上へ遣わされたとしか私には思えない。

    異文化の深みに飲まれて弾かれるH・ジェイムズ的テーマ。ラーガと調性。「インドへの道」も読んでよね。

    (「軽蔑」は読んでません。なんかめんどくさそう。映画は見た。)

  • 「軽蔑」の心理描写がとても素晴らしいと感じた。この手の作品は読みずらいという先入観があったのだが、訳の上手さのためか、すいすい読めた。少し間違うとメロドラマになってしまうような内容だが、描写のリアリズムが陳腐さを排除していると思う。

  • 『マイトレイ』と『軽蔑』、素晴らしい組み合わせでありながら、どこか気に入らない。うまく説明はできない。

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