パタゴニア/老いぼれグリンゴ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 2-8)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (568ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309709604

感想・レビュー・書評

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  • 230531*読了
    パタゴニア、老いぼれグリンゴ、共に南米の暑さを感じる作品だった。

    「パタゴニア」は叔父が持ち帰った恐竜(と思っていたが実際はオオナマケモノ)の皮をきっかけとして、イギリスからパタゴニアに赴き、たくさんの人と出会い、交流していく紀行文。
    紀行文といってもそこで生きる人を通して、この地域が描かれているので、ドキュメンタリーと表現する方がいいかもしれない。
    私はこんな風に旅できない、と思う。だからこそ、読むのだけれど。
    読んで、南米の熱気を肌で感じたり、自分とは違う生き方、価値観を持つ人を知ったりするのがおもしろい。

    「老いぼれグリンゴ」は国境を徒歩でも越えられる大陸ならではの話と言える。
    実在する人物であり、突然メキシコに消えてしまったアンブローズ・ビアスをグリンゴのじいさんとして描いている。
    グリンゴじいさんは、メキシコで起きた革命に飛び込み、死にに来た。
    一方で生きがいを求めて国境を越え、家庭教師になろうとやってきたハリエットは、望んでもいない革命に巻き込まれてしまう。
    二人の出会い、そして荒々しい別れ。愛と憎しみ、苦しみと哀しさ。
    その当時だからこそ、その国だからこその悲劇。
    ドラマチックなストーリーは疾風のようにやってきて、わたしの心をかき乱した。

  • もう一つのアメリカへ。

  • 「パタゴニア」はちょっと変わった紀行文。作者のおばあさんのいとこのエピソードが素敵。パタゴニアという土地には冒険の残滓が、放浪者の幽霊がいるような。
    「老いぼれグリンゴ」は西部劇のセットでメロドラマ演ってるのかと思いきや!グリンゴ爺さんの死んだあとのがドラマチックなのよね。
    この2作を続けて読むと、ラテンアメリカはアンチヒーローが流れ流れて最期を迎えるところって印象が強くなってしまうね。

  • 老いぼれグリンゴみたいな、わかりにくいけれどとても感傷的でさみしくて、暴力的な革命の話が大好き。

  • 英紀行作家チャトウィンのデビュー作。南米パタゴニアの旅行記。

    池澤夏樹氏は読書日記「ブルース・チャトウィンを紹介する」(初出:週刊文春「私の読書日記」1999年11月15日)の中で、「こうやってみるともっともっと読まれていい作家」と評しています。
    http://www.impala.jp/bookclub/html/dinfo/10118608.html

    チャトウィンはそのパタゴニアを南下するしていくのですが、そのきっかけとなったことが大変ユニークです。それは彼の幼少時代にさかのぼります。

    祖母の家には従兄弟で船長だった人物がパタゴニアから持ち帰ったという動物の革が飾られていました。それは恐竜プロントサウルスの皮の一部と教えられ、強い興味を抱きます。

    祖母が亡くなったときに、譲り受けることを密かに狙っていたのですが、ゴミといっしょにあっさりと捨てられてしまいます。結局、それは太古の恐竜のものであるわけはなく、ナマケモノの一種で、現在は絶滅種のミロドンだと分かります。

    彼は、その皮が見つかった最南端の町を目指していきます。

    彼は強風が吹く”風の国”で、さまざまな人たちと出会います。インディオ、入植してきた白人。そこに歴史的なエピソードと、彼の考察が挿入されていきます。

    映画「明日に向かって撃て!」のブッチ・キャシディ&サンダンス・キッド、進化論のダーウィン、冒険家マゼラン・・・といった世界的に有名なものから、ボクにはなじみのないものまで。
     
    話は次々に飛んでいきます。ひとつひとつのエピソードはつながっているのか、どうかは微妙。彼は思いつきと飛躍の名人です。

    それに戸惑いながらも、読み進めていくと、混沌としたパタゴニアの大地が少しだけ見えてくる気がしました。一度、読み終えると、もう一回読み直してみたくなる。

  • 旅先で読んだら精神的にもトリップ出来るでしょう。

著者プロフィール

1940年イングランド生まれ。美術品鑑定や記者として働いたのち、77年本書を発表し、20世紀後半の新しい紀行文として高い評価を得る。ほかに『ソングライン』『ウィダの総督』『ウッツ男爵』など。

「2017年 『パタゴニア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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