ヴァインランド (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第2集)
- 河出書房新社 (2009年12月11日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (502ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309709635
作品紹介・あらすじ
1984年、ある夏の朝。北カリフォルニアの山中で14歳の娘とふたり、ジャンクにクレイジーに暮らすヒッピーおやじゾイドの目覚めから物語は始まる。ゾイドを執拗に追う麻薬取締官、娘を狙う連邦政府、その権力の魔の手から逃れながら、母探しの旅に出る娘。そして物語は60年代へ、ラディカル映画集団の一員だった母の記録映像を見る娘の眼差しと共に、バークリィでのデモ隊と機動隊の衝突現場へズーム・インする。闘争の渦中で母を救出するDLは、マフィアのドンに雇われ殺人忍法を操る「くノ一」。その女忍者とコンビを組むカルマ調整師のタケシ、彼らにカルマを調整してもらうヴェトナム戦争の死者のゾンビ「シンデルロ」…次々と出現する登場人物を巻き込んで、仕掛けに満ちたピンチョン・ワールドは時のうねりの中を突き進む-全米図書賞受賞の大作『重力の虹』以来17年の沈黙を破って発表された本書は、ギャグ満載のポップな装いの下に、輝けるアメリカを覆う呪われたアメリカ、官憲国家の狂気を、繊細に重厚に、ときにセンチメンタルに描き出す。名訳をさらに磨きあげ、注釈も全面改訂。
感想・レビュー・書評
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なんか、本を閉じてる間もグツグツぐちゃぐちゃ混ざり合って形変わって別物に成長しちゃってるんじゃないか。。と心配になって、思わずそっとページ開いて、また没頭してしまう。そんな数日間でした。
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230120*読了
はい、こちらも読み応えたっぷりの二段組!
注釈が多いと中断されて世界にどっぷり入りづらいところがあるなぁ…。親切心だとは思うのですが。
1960年から80年代のアメリカの音楽もミュージシャンも俳優も知らないが、それでも話自体がおもしろいので問題なし!
「1984」のピンチョン版だと言われていますが、ジョージ・オーウェルの「1984」は読んだことがなく、村上春樹の「1Q84」は全巻しっかり読んだという…。順番よ。
勝手に「1Q84」と比較すると、躍動感が似ている気がする。
場面がテンポ良く変わって、疾走感がある。
麻薬、麻薬、共闘、麻薬、ミュージック、TV…。
当時のアメリカの側面を覗き見れた、のかしら?
「オンザロード」もそうだけど、当時のアメリカっていろんなものが混ざっていて、アメリカのイメージそのものなんだよなぁ。
今の方が各国の区別がなくなってきているというか。
これでいいの?と思う展開は盛りだくさんだけど(笑)おもしろいかどうかと聞かれたら、おもしろい!と答えたくなる小説です。 -
これはめちゃくちゃ楽しかった。
ピンチョン版「1984年」。サブカル的視点からアメリカ60年代から80年代を縦横無尽に描いていく。
やっぱりピンチョンって、ポストジョイスだと思うんだよな。 -
パラノイア的アメリカ。
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ピンチョンを読んだのはこれで2作目。これから『重力の虹』や『V.』や『逆光』やらを読めるのが幸せ。
本作は、何より佐藤良明の翻訳が文句なしにすばらしい。細かな揚げ足取りを仕出したらキリがないけれど(翻訳とは「肉を切らせて骨を切つ」的なものじゃなかろうか)、ちゃんとピンチョンの世界観が出ていて脱帽。
日本が舞台になっているくだりは、タランティーノの『キル・ビル』ばかりが頭にちらついて仕方なかった。とはいえ、よく調べたものだ。上野の様子とか。
それとあわせてもうひとつ。直感的に気づいたのだけど、ピンチョンはきっと何かしらの楽器が演奏できるし、楽譜が読めるはずだ。この推測が間違いだったとすれば、それこそ、恐るべき、トマス・ピンチョン! -
回収されない伏線、行ったり来たりを繰り返す膨大な人物(ピンチョンにしては少ない方だろうが)に関する溢れかれる記述、リズミカルな言葉が遊びとめまいしそうなスピード感も一度乗ってしまえば、あとはオートマチックにもってかれる。あらすじでは決しておさまらないこの小説には、読むものに言語過剰なレビューを要求するだろう。
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2ページ(地図)
◆バロアルト→パロアルト、ベンドルトン基地→ペンドルトン基地、エスコンディート→エスコンディード
19ページ
悪漢(ルビ:デスペラート)
◆デスペラート→デスペラード
354ページ
大盆地(ルビ:グレードベースン)
◆グレード→グレート
445ページ
レーガンの批准を待つだけという包括的財産没収法
◆批准→署名
466ページ
保安官代理(ルビ:デビュティ)
◆デビュティ→デピュティ -
この作品の中では理想のアメリカは、テレビとか映画とかのヴィジョンの中にしか現れてきません。
理想の国家、理想の革命、理想の家族像、そういった諸々の理想のウンチャラはヴィジョンによってしか得られない世界。それって要するに今まさに僕らが生きている現実世界のことじゃないかっ!という感じです。
ストーリー的にいいと思ったのは、一番最初に出てくるゾイドが主人公なのかと思いきや、実はその娘のプレーリーやその母親フレネシが物語の主軸であって、ゾイドは学生運動時代にフレネシが負った業のはけ口でしかないというところです。
メインの歴史の裏側にある陰の歴史。教科書に載る歴史と載らない歴史ともいえるんでしょうか?
僕たちが、というか第二次大戦後の世界中が憧れた夢のアメリカと、現実にアメリカが辿ってきた60〜70年代のアメリカ、そういったものがものすごく細かい具体的なテレビ番組などのポップカルチュアーの羅列で語られて、もう頭クラクラ!えっ今何の話してたんですっけ? -
初ピンチョンとして読みました。ギャグあり卑猥ありと、何でもありな内容でしたが、読み進めていくうちに国家権力の恐ろしさが感じられるのが凄かったです。