ヴァインランド (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第2集)

制作 : 佐藤 良明 
  • 河出書房新社
4.00
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本棚登録 : 225
レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (502ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309709635

作品紹介・あらすじ

1984年、ある夏の朝。北カリフォルニアの山中で14歳の娘とふたり、ジャンクにクレイジーに暮らすヒッピーおやじゾイドの目覚めから物語は始まる。ゾイドを執拗に追う麻薬取締官、娘を狙う連邦政府、その権力の魔の手から逃れながら、母探しの旅に出る娘。そして物語は60年代へ、ラディカル映画集団の一員だった母の記録映像を見る娘の眼差しと共に、バークリィでのデモ隊と機動隊の衝突現場へズーム・インする。闘争の渦中で母を救出するDLは、マフィアのドンに雇われ殺人忍法を操る「くノ一」。その女忍者とコンビを組むカルマ調整師のタケシ、彼らにカルマを調整してもらうヴェトナム戦争の死者のゾンビ「シンデルロ」…次々と出現する登場人物を巻き込んで、仕掛けに満ちたピンチョン・ワールドは時のうねりの中を突き進む-全米図書賞受賞の大作『重力の虹』以来17年の沈黙を破って発表された本書は、ギャグ満載のポップな装いの下に、輝けるアメリカを覆う呪われたアメリカ、官憲国家の狂気を、繊細に重厚に、ときにセンチメンタルに描き出す。名訳をさらに磨きあげ、注釈も全面改訂。

感想・レビュー・書評

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  • なんか、本を閉じてる間もグツグツぐちゃぐちゃ混ざり合って形変わって別物に成長しちゃってるんじゃないか。。と心配になって、思わずそっとページ開いて、また没頭してしまう。そんな数日間でした。

  • 面白かった!
    とてもパワフルで、なんというか、スポーツカーというよりはデコトラって感じの小説だった。

    1980年代カリフォルニアが舞台で、ストーリーは…うまく説明できない。たぶん、登場人物がすごく多くて、しかもそれぞれの話が絡み合ってるからだと思う。
    ピッピー崩れの中年ゾイドと元妻のフレネシと娘のプレーリィ。フレネシの母、左翼まっしぐら一家、フレネシの再婚相手にその息子。スーパー検察官に亜流忍術を操るくのいちと彼女のパートナーのカルマ調整師、大金持ちとその馬鹿息子、その馬鹿息子に気に入られたヘビメタバンド…
    などなどの絡み合いが、60年代アメリカ文化の内輪ネタみたいなのをばんばんおり混ぜながらユーモアたっぷりにばりばりと描かれていた。

    時間が行きつ戻りつすること、語り手とかもぽろぽろ変わること、それらがはっきり明示されずに流れのまま文章が進むことから、なかなか読むのが疲れる感じがあった。あと、内輪ネタは判らないのが多いからいちいち注釈を読まないといけないし。
    うーん。
    と悩むトマス・ピンチョン初心者に、訳者の佐藤良明さんが解説でためになることを書いてくれていた。
    個々のストーリーを詳細に追うより、それぞれの人物がどのような縁を生み出していくか、それらがどのように関係し合っていくかに注目するのもひとつの読み方だよ、みたいなこと。
    なるほど!と思った。

    たとえば、何か悪いことがあったとして、原因を具体的に一つ上げることは難しいと思う。単独では悪くない様々なことが重なって一つの悪いこととして起こってくる。

    そういうのをひとつの前提にしてピンチョンさんは書いてると思うと、ずいぶん読みやすくなった気がする。
    そういえばそういう考えをほのめかすような記述もちょこちょこ出てきてた。(p.456「以前は私も、階段のモデルというので考えていた。一段一段登っていけば不正の正体に行き当たるのだと」とか)
    カルマっていうことばがよく使われているのも、そういう考え方を取り入れるためなのかもしれない。カルマの意味、なんとなくのイメージでしかわからないけど。
    そういうふうに見ると、とりあえず注意を払うべきポイントがしぼられて、読み進めるのがとても楽になった。


    あと、社会問題をばしっと捉えたみたいな描写も多かったと思う。テレビや官僚機構(?)権力(?)に対する問題提起というか反論みたいなの。その辺はなんとなくヴォネガットさんを思い出した。ユーモアたっぷりなところも似てる。
    もしかするとそれが中心的なテーマだったのかもしれないけど、そうだったとしたらばっちり見落としたと思う。話を追うことで手一杯みたいなところがあったから、暗喩とか交えてこういうことを言われるとちょっとお手上げかもしれないと思った。慣れたら違ってくるのかな。

    ピンチョンさん自体も面白かった。メディア嫌いで、なんかの賞を貰ったときはインタビューを回避するために山に上ったらしい。すごい!半分遊びでやってるのかな。
    インタビューとかも受けてなくて、顔とか素性もほぼ不明らしい。
    でもシンプソンズの声優はやったらしい。いかす。
    それくらい謎の人だから「告白するけど、実は僕がピンチョンなんだ」ていうジョークをどっかの批評家がやったらしい。ごちゃごちゃと告白した後に、「この際だから言うけど、サリンジャーも僕なんだ」で結び。やるなあ。

    印象に残ったシーン
    •フミモタの名刺の旅のくだり
    •シンデルロたちの雰囲気
    •オクラホマでのヴォンドとフレネシの密会。
    •ヴォンドがシンデルロになるシーン。
    •チェとプレーリィのグレイト・サウスコート・プラザ・アイシャドー強奪事件

  • パラノイア的アメリカ。

  • ピンチョンを読んだのはこれで2作目。これから『重力の虹』や『V.』や『逆光』やらを読めるのが幸せ。

    本作は、何より佐藤良明の翻訳が文句なしにすばらしい。細かな揚げ足取りを仕出したらキリがないけれど(翻訳とは「肉を切らせて骨を切つ」的なものじゃなかろうか)、ちゃんとピンチョンの世界観が出ていて脱帽。

    日本が舞台になっているくだりは、タランティーノの『キル・ビル』ばかりが頭にちらついて仕方なかった。とはいえ、よく調べたものだ。上野の様子とか。

    それとあわせてもうひとつ。直感的に気づいたのだけど、ピンチョンはきっと何かしらの楽器が演奏できるし、楽譜が読めるはずだ。この推測が間違いだったとすれば、それこそ、恐るべき、トマス・ピンチョン!

  • 回収されない伏線、行ったり来たりを繰り返す膨大な人物(ピンチョンにしては少ない方だろうが)に関する溢れかれる記述、リズミカルな言葉が遊びとめまいしそうなスピード感も一度乗ってしまえば、あとはオートマチックにもってかれる。あらすじでは決しておさまらないこの小説には、読むものに言語過剰なレビューを要求するだろう。

  • 2ページ(地図)
      ◆バロアルト→パロアルト、ベンドルトン基地→ペンドルトン基地、エスコンディート→エスコンディード

    19ページ
     悪漢(ルビ:デスペラート)
      ◆デスペラート→デスペラード

    354ページ
     大盆地(ルビ:グレードベースン)
      ◆グレード→グレート

    445ページ
     レーガンの批准を待つだけという包括的財産没収法
      ◆批准→署名

    466ページ
     保安官代理(ルビ:デビュティ)
      ◆デビュティ→デピュティ

  •  この作品の中では理想のアメリカは、テレビとか映画とかのヴィジョンの中にしか現れてきません。
     理想の国家、理想の革命、理想の家族像、そういった諸々の理想のウンチャラはヴィジョンによってしか得られない世界。それって要するに今まさに僕らが生きている現実世界のことじゃないかっ!という感じです。

     ストーリー的にいいと思ったのは、一番最初に出てくるゾイドが主人公なのかと思いきや、実はその娘のプレーリーやその母親フレネシが物語の主軸であって、ゾイドは学生運動時代にフレネシが負った業のはけ口でしかないというところです。
     メインの歴史の裏側にある陰の歴史。教科書に載る歴史と載らない歴史ともいえるんでしょうか?

     僕たちが、というか第二次大戦後の世界中が憧れた夢のアメリカと、現実にアメリカが辿ってきた60〜70年代のアメリカ、そういったものがものすごく細かい具体的なテレビ番組などのポップカルチュアーの羅列で語られて、もう頭クラクラ!えっ今何の話してたんですっけ?

  • 初ピンチョンとして読みました。ギャグあり卑猥ありと、何でもありな内容でしたが、読み進めていくうちに国家権力の恐ろしさが感じられるのが凄かったです。

  • 2011年3月12日ごろ読み始め 2011年3月26日読了
    東北関東大震災で落ち着かないころに読み始めた。とにかく前半はわけがわからず、ついていくのが精いっぱいだったけど、後半になってくるといろいろとわかってくることもあり楽しめた。
    家族や一族の物語としても読めるし、現代アメリカの歴史としても読めるし、奇想天外なファンタジーとしても読める。ただ1度読んだだけで理解するのは難しい?
    ちゃんと理解できたとはいえないが、状況もあって想い出深い本になりそうです。

  • アメリカにおける60〜80年代が、彼国の若者にとってどういう時代であったか。これからどういう時代が待っているのか?一年や五年どころではなく、十年や二十年という時代を考える時、どんな変化があるのだろうか?
    日本に生きる自分にとって、自由だとか愛だとか、どんな意味があるのだろうか。
    物語を生きるのはもうやめたほうがいい。物語を語るのだ。

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