樋口一葉 たけくらべ/夏目漱石/森鴎外 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集13)

  • 河出書房新社
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感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309728834

作品紹介・あらすじ

吉原の廓の隣町を舞台に、快活な十四歳の美少女・美登利と、内向的な少年・信如の淡い想いが交錯する、一葉「たけくらべ」(新訳・川上未映子)。東大入学のために上京し、初めて出会う都会の自由な女性や友人に翻弄される青年を描いた、漱石「三四郎」。謎めいた未亡人と関係を重ねる作家志望の文学青年・小泉純一が、芸術と恋愛の理想と現実の狭間で葛藤する、鴎外「青年」。明治時代に新しい文学を切り開いた文豪三人による、青春小説の傑作三作を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 日本文学全集3冊目。今まで出た装丁の中ではこれが一番好き。パッと見川上未映子なのかと思うけどどうやら美登利が描かれてるらしいですね。
    実のところお恥ずかしながらこのお三方の小説はどれも読んだことが無かったので入門代わりになりました。
    どの作品も思春期の懊悩というか、自分がどうやって世界と向き合っていくのかというのが描かれていて、テーマが通底しているところも一冊のパッケージングとしてとてもよかったかと。
    漱石・鴎外は他の作品もいろいろ読んでみたいと思いました。
    そして訳者あとがきを読んで「たけくらべ」原文・松浦理英子訳も読みたく。ああ、積ん読が増えていく…。

  • 第三回配本である。なかなか次に進めなかった。中上健次から一挙に現代日本文学の王道に入る。少し尻込みしてしまった。

    しかし、「たけくらべ」を現代文に訳して、とっつきやすくして呉れて助かった。何度も挫折していた樋口一葉の作品を初めて読んだ気がする。

    朝に夕に、秋の風がしみわたって、上清の店先の蚊取り線香は懐炉灰に替えられて、石橋の田村屋のせんべいの粉をひく臼の音も、もうほとんど聞こえなくなった。吉原でもいちばんの店と言われる角海老の時計の響きもなんだか哀れな音色をおびて、そうなってくると、一年のあいだずうっと目に入る日暮里の火の光を見ていても、ああ、あれは人を焼いている煙なんだよねと、なんともいえない気持ちになる。(48p)

    江戸の名残りのある都会の秋の、喪われた風景。その感覚の鋭さにも初めて気がつくし、実は花魁の妹・美登利と寺の子・信如との幼い恋の話ではなく、2人と長吉、正太郎、三五郎たちの少年少女の群像劇だったことに思い着く。

    最後、快活な美登利が急におとなしくなったのは、信如がいなくなったからでも、水揚げがあったからでもなく、初潮があったからなのだ、と(研究者の間では論議があるらしいが)私は自然に思った。あれで、物語の子ども時代は終わったのである。

    明治28年にそういう物語が閃光を放って消えたあとに、明治41年明治43年と、「三四郎」「青年」が、古文とはっきり決別し、西洋文学を咀嚼して登場する。現代日本文学の青春時代が始まったのである。

    その狙いは良く分かったのだが、やはり夏目漱石と森鴎外の代表作品はこのふたつではない。むしろ、ふたつとも後期作品と比べれば駄作に近い。

    明治という時代を知るには、面白い巻だった。特に巻末の明治44年ごろの現文京区(旧小石川区・本郷区)の地図は、とても興味深かった。これをスマホにデータに落として、今度東京散歩をしてみたいと思う。

    2015年10月12日読了

  • やっと読み終わった。長かった!!!
    樋口一葉の『たけくらべ』
    夏目漱石の『三四郎』
    森鴎外の『青年』
    たけくらべは、川上未映子氏の現代語訳版です。初めて読んだ気がします。
    あまりにもおっさんが読むには時期を逸しているようで、あまりにも幼いころの話でありそういう感受性は失われていることを認識しました。
    三四郎と青年は続けて読むと、非常によく似ており
    その雰囲気や情緒が感じられ面白かったと思います。
    本当に忘れていたのですが、『青年』は昔昔、大学の1年か
    2年の時に読んだことがあることを思い出しました。
    その時は、自分の年代とあっていたこともあって
    とても感銘を受けたことを思い出しました。その時の
    自分の人と群れる感じに対しての嫌悪感や、男女の
    関係にての正義感や、潔癖な感じ(本当はその
    ころでもずぶずぶだったのですが)。社会や
    大人に対しての反発や恐れなんかをもっていたこと
    を今再度読んで思い出しました。
    その時の感覚は懐かしく、恥ずかしく思いました。

  • 230818*読了
    今巻は明治時代の文学。
    三人ともあまりにも名が知られている。
    けれど、教科書に載ってる作品しか知らないという事実…。
    樋口一葉にいたっては読んだこともなかった。

    「たけくらべ」は川上未映子さん訳の独特な感じがいい。恋と名付けられるようで、なんとも面映い男女の距離感。
    これが思春期ってやつか…甘酸っぺー。
    樋口一葉はあまりにも短命で。
    二十代前半でこれを書いたと思うと、才能がずば抜けているな。

    漱石の「三四郎」と、森鴎外の「青年」はとても似ている。
    「青年」が後に出ているので、森鴎外が意識しているとのこと。
    上京してきた真面目でうぶな青年が恋に破れる。
    百年ほど前でも恋愛、結婚がこんなにも違っていて、現代に生まれて自由に恋愛できてよかったと思わずにはいられない。
    今みたいに男女平等の精神なんてのはなく、女性が社会に進出しつつはあったけれど、とはいえ、やっぱり女性は早々と嫁いで子どもを生み育てる役割を担わざるを得ないところがあった。
    男性主人公ではあるのだけれど、わたしは出てくる魅力的な女性たちの方に惹かれたなぁ。

    三作とも恋がふくまれている。そして、舞台は東京。
    三人の作者が生きた時代も近いし、暮らしていたところも近い。
    都会ならではの出来事も小説内に散りばめられていたり、どこか賑やかな調子がある。
    そんな共通点の多い三作を味わえて、心がいっぱいになっている。

  • 現在社会と作品の時代とを比べながら、いろいろ考えて読んでました。昔の人と現代人を比べると追求心や学問に対する姿勢、人付き合いというものが全く異なると感じた。文章中に所々読みづらい箇所があったが、深みもあって勉強になった。青年はもう少し時間が経ってから読み直してみます。

  • 女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000055890

  • たけくらべ読み終えたところ。樋口一葉を読んでいなかった(日本文学をなんとなく敬遠していた)自分の愚かさを呪う。なんだこの瑞々しさ。おっとりした、それでいて景色のわかる気持ちの持っていかれる文運びと表現(これは現代語訳の賜物かもしれないが)。あー、、、、とにかく今日読めてよかった。

    三四郎読み終えた。NHKの100分de名著の漱石特集を観てうっすら冒頭は知っていたけども、そこからの印象とは違くなっていって。とても良かった。これも繰り返し読みたい。三谷幸喜さん演出の漱石を題材にした演劇、ベッジ・パードン(野村萬斎さん主演)を思い出しつつ、漱石自身の思想はどこかと想いつつ。

    青年、終えた。森鷗外という人は頭のいい人だったんだなあ。初めて読んだ。いやあ、よかったな。ちょっとお風呂にでも入ってゆっくり考えてみたい。話の筋そのものではなくて(失礼)、何に惹きつけられるのかについて。

    夏目漱石にしてもまあみんなそうなのだかもしれないが、この時代の若者はよくモノを吸収し、考え、悩み、自分なりの答えを出していることに改めて感服させられる。一言が、一単語が、自身から出てきていて、深く読んでも私などが自分の言葉で表現しえないだろうことを含んでいる。

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    明治時代に新しい文学を切り開いた文豪三人による、青春小説の傑作を三作収録!

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著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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