近現代作家集 I (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集26)

制作 : 池澤夏樹 
  • 河出書房新社
2.82
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本棚登録 : 104
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309728964

感想・レビュー・書評

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  • 米澤穂信氏が久生十蘭をあげていたので読んでみた。

    「無月物語」久生十蘭
    初めて読む久生十蘭がこの作品だったのはまずかった。なにかもうほかの作品を読む気がしなくなってしまった。平安末、後白河法皇の院政中、父親殺しで死罪になった妻と娘の話。家族には極悪非道な父親なのだ。子供にお金をかけたくない、娘の結婚には金がかかる、ならば自分が、という。この手の話は避けて通りたいのだ。表現もえげつない。女性の描写は男性目線だと思う。平安時代の淫靡な雰囲気は文体にあるとは思うのだが、内容がいやだ。しかしこれはスタンダールの「チェンチ一族」が下敷きになっていて、元はルネサンス期のイタリアの話だという。確かに下敷きがあるとはいえ、久生十蘭の独自世界になっている。しかしやっぱり出来事自体がいやだ。

    初出は1952年(昭和27年)久生氏50歳時の作品。

    検索すると、ベアトリーチェという娘が犠牲者。絵画作品、文学作品、映画といろいろ引用されているようだ。


    映画「マルホランド・ドライブ」でも、ルース叔母の家の居間のいちばん目立つ場所には、グイド・レー二の描いた「ベアトリーチェ・チェンチの肖像」が飾られている、と出てくる。

    久生十蘭 1902.4.6-1957.10.6(55歳没)

    ほか芥川龍之介など全12人の作家集。

    2017.3.30初版 図書館

    • 淳水堂さん
      こちらにもおじゃまします。

      「出来事自体が嫌だ」わかります、わかります。小説のインパクトのためわざわざ悲惨にするのではなく、極々当たり...
      こちらにもおじゃまします。

      「出来事自体が嫌だ」わかります、わかります。小説のインパクトのためわざわざ悲惨にするのではなく、極々当たり前として書くことが、戦時中の作家に感じるんですよ。本当に無常。
      2021/12/26
    • bukuroseさん
      戦時中の作家・・ なるほど。時代の空気というのもあるんですかね。文学作品は時代を超えて響いてくる思想、感情を感じるから、そこが醍醐味ですよね...
      戦時中の作家・・ なるほど。時代の空気というのもあるんですかね。文学作品は時代を超えて響いてくる思想、感情を感じるから、そこが醍醐味ですよね。でも時代感覚のずれが、なんとも理解できないっていう時がありますね。
      2021/12/26
  • 231123*読了
    明治から戦前までの文学。中には長編から一部を抜き出したものもある。
    近現代作家集は3巻からなっていて、それぞれ世に出た年代順ではなく、その小説の時代順に並んでいるところが味噌。

    久生十蘭さんの「無月物語」に始まり、岡本かの子さんの「鮨」で終わる。この時代の流れを文学で感じられる悦び。
    12作収録されている中で、岡本かの子さんの「鮨」が心に残っている。わたしが無類の寿司好きだからというのもあるかもしれないけれど。笑

    泉鏡花さんの「陽炎座」のなんとも言えぬ後味の悪さ、佐藤春夫「女誡扇綺譚」の恐ろしさ。
    宮本百合子さんの「風に乗って来るコロポックル」は18歳で書いたとは思えない文章力に驚いたし、切なさと不思議さのある小説だった。
    横光利一さんの「機械」はなんてことないように思えて、そうではない、なんとも言えない読後。
    高村薫さんの「晴子情歌(抄)」は長い物語の中の一部を切り取ってはいても、当時の晴子のいきいきと生きる様子が感じられてよかった。

    明るさではなく、薄く靄のかかったような、それでいて力強い感じを文章から受け取ることが多かったように思う。
    わたしがイメージする明治・大正がそうなのかもしれない。

  • 女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000055915

  • このシリーズの本も、この近現代作家集の3巻と
    源氏物語3巻のみ。
    近現代作家ということで、読みやすく読めました。
    文書や文字がてんこ盛りの文体でも、さらっと
    読めていくのは、名作であるのだろうと思いました。

  • この百年の間に書かれた傑作、今こそ読むに値する名作を、もっぱらモダニズムの尺
    度から選んで供する。 ——池澤夏樹

    明治以降の作家の名品を精選し、作品の時代背景順に収める『近現代作家集』。三巻
    にわたってお届けする。

    *収録作品

    久生十蘭「無月物語」
    神西清「雪の宿り」
    芥川龍之介「お富の貞操」
    泉鏡花「陽炎座」
    永井荷風「松葉巴」
    宮本百合子「風に乗って来るコロポックル」
    金子光晴「どくろ杯(抄)」
    佐藤春夫「女誡扇綺譚」
    横光利一「機械」
    村薫「晴子情歌(抄)」
    堀田善衞「若き日の詩人たちの肖像(抄)」
    岡本かの子「鮨」

    解説=池澤夏樹
    月報=荒川洋治・中島京子

    帯装画=草間彌生

    ▼ぼくがこれを選んだ理由 池澤夏樹

    明治期に必死で西洋の文学を学びながら、その一方で日本の古典にも多くを負って小説というものを作った作家たち。更にそれを継承して大正と昭和の文学の中核を成した十数名の作家の佳品を、久生十蘭から金子光晴や岡本かの子まで、編者のわがままなセレクションでお目にかける。

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