谷崎潤一郎文学の着物を見る: 耽美・華麗・悪魔主義 (らんぷの本)
- 河出書房新社 (2016年3月29日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (159ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309750217
感想・レビュー・書評
-
谷崎の代名詞である変態性に加え、彼の人生にみるかなりのクズっぷりと、それを恥じるどころか堂々と活用してた図太さといった人間像、そして、美しい着物という複数の面から、谷崎とその作品を楽しめるようになっている、なんとも刺激的で面白い資料集。
もとは、アンティーク着物店を営む店主さんが、谷崎作品に描写される美しい着物を、昭和初期の着物を中心に用いて再現を試みた作品集だときいて購入しました。
「細雪」に登場する着物たちをはじめとして、どのコーディネートも実に見事で、ここまで小説の描写に近いものを探し求めるのは大変だっただろうと、おもわず感嘆のため息が出るほど美しかったです。
しかし、そんな購入動機をうっかり忘れそうになるぐらい、紆余曲折・波乱に富んだ谷崎の人生を、谷崎作品のあらすじや挿絵と重ねあわせて紹介している、共著者である弥生美術館の学芸員さんの解説やコラムが強烈に面白かったです。
出だしから「谷崎作品の大部分が彼自身の体験をもとに書かれています。」とあり、かなりのインパクト。
彼のあくなき変態信念は誰もが知るところですが、「痴人の愛」、「鍵」、「瘋癲老人日記」といったとりわけ強烈な官能有名作品群までも、大なり小なり実体験に基づいていたなんて、もはや凄まじすぎて、嫌悪を通り越して爆笑してしまうレベルでした。
もちろん、これら以外の作品にも、谷崎の体験を注ぎ込んだものは無数にあります。
借金、三度の結婚、妻をめぐって揉めた男たちとのやりとり、妻の妹や義理の息子の嫁への恋慕など…どれもそれなりのスキャンダルのはずなのに、「芸術のために」と堂々と実行して、時に新聞を利用したことさえもある谷崎。
天性の変態とクズぶりを、私生活でも作風でも隠さなかった谷崎の図太さの半分でもあれば、谷崎の友人だった芥川や、はたまた太宰なども自殺などしなかったかもしれないと変なことまで思ってしまいます。
さらに面白かったのが、谷崎の古典翻訳作品として有名な源氏物語にまつわるエピソード。どうやら、谷崎は主人公の源氏その人は好きではなかったらしい。
なんでも、行きずりの関係の女にすら「死ぬほど愛してる」と言う源氏の軽薄さが許せなかったそうで。
どの口でそれを!…というより、源氏と谷崎を比較すると、私見ですが、性質が近いところがあるのではないかと。
惚れやすかったり、非道徳でのちに大きなトラブルになるとわかりきっている事でも欲望には抗えずに突き進んでしまう迂闊さとか、変なところで情があるところとか。
本書によると、谷崎は、別れた女に対してすら、冷たくするどころか、困っていれば生活の保障や縁談の面倒をみるような男だったそう。それって、源氏と全く同じでは?と思ったのは私だけではないはず。源氏も、末摘花や空蝉といった軽い関係に終わった女でも生活は一生保障してあげてましたし…。
何はともあれ、谷崎を新たな角度でとらえる入門書としても良し、単純に美しい着物を堪能する美術書としても良しの、お得な一冊です。
帯のキャッチコピーが、「100年経ってもいかがわしい!!」となっていますが、確かに谷崎は相も変わらずいかがわしくて面白いです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今となっては白黒映画の「細雪」が、神戸空襲や阪神淡路大震災の前の風景を懐かしむものとなっている。それに似て、着物も時代とともに移り変わり、当時の衣装や佇まいを実際にみることは難しくなっている。そんな中、この一冊はとても貴重で、華やかでありながら、谷崎文学の持つ妖艶・耽美な世界をうまく表現していると感じた。
-
第1章で「細雪」の四姉妹、第2章で「痴人の愛」のナオミや「春琴抄」の春琴――。
谷崎潤一郎がその数々の小説に描き出した女性たち。彼女たちが装う数々の着物姿を、モデルになった女性の写真や文章をもとに検証。
大正末期~昭和初期のアンティーク着物や帯をふんだんに利用して、鮮やかに再現を試みたビジュアルブック。
発表当時の装幀や挿絵をふんだんに掲載し、谷崎の人生と作品、作品の魅力を紹介する一方、明治~昭和初期の着物用語の一覧もある。
現代では普段使いから遠く離れたうえに失われてしまった織物もあるなか、伝わりにくくなった和装の理解にもつながる。
谷崎文学の真骨頂・悪魔的に耽美な世界をいっそう楽しむために携えたい一冊。
「百年経ってもいかがわしい!!」
谷崎マニアの心を擽ってやまない帯文が秀逸。 -
先月、高峰秀子が「こいさん」を演じた映画『細雪』を観たのをきっかけに、細雪を再読。市川崑版といいとこ取りでいろんな役者さん、シーンを思い浮かべながら、日々の隙間時間で読んだにしては我ながらハイペースで読み終えた。
この勢いで今こそと、積ん読になっていた『谷崎潤一郎文学の着物を見る』を一気読み。これは、谷崎作品の連載時等の挿絵と、それらや作品中の描写を元に作中人物のコーディネートを再現した着物写真が満載の本です。着物、美しいなあ、というのはもちろんのことながら、掲載作品それぞれについて、あらすじと、「作者自身のこのできごとが題材にされたと思われる」といった解説がついているので、実は細雪のほかふたつくらいしか読んでいない私にとっては格好の谷崎ガイド本となった。
細雪の最後に、執筆当時の背景などについて谷崎が綴った短い文章が付いていて、そのなかで、「中上流階級の人々の暮らしについて書こうとするならば不倫や不道徳などの頽廃的な面にまで亘らねばならなかったが時節柄控えざるを得ず綺麗事に留まってしまった」というようなことが書かれていた。
なるほど、谷崎ガイドをざっと読んだ後である今ならその意味するところがわかる。細雪は色々あるにしても清らかな印象だけれど、やはり谷崎の真骨頂を味わうには、変態系の作品も読んでみるべきか。
前述の細雪あとがき(?)によると、作者自身では関西移住後の作品のほうが断然好きなのだそうで、特に『蓼食う虫』と『吉野葛』に思い入れがあるとか。もし自分で全集を編むようなことがあったとしたら、卍より前の作品は入れないとまで言っていて、初期作品のファンがかわいそう…と余計なお世話ながら思ってしまった。『…着物を見る』の本でも、関西移住前後でヒロイン像が変わってきていることにも言及されている。
でもまあそれくらい、関西移住は谷崎の人生に、人生観に、大転換をもたらしたんだろうなあ。でなければ細雪その他の作品も生まれなかったわけで、この小さな日本の中においてだけでも様々に異なる文化があるという人の世の面白さ、、、にしばし思いを馳せるのでありました。
最後に着物に話を戻すと、この本を買った当初さっと眺めたときは、アンティーク着物ってやつか~派手だなくらいの印象しか持たなかったのですが、丹念に読んだ上でいま見返すとなんだかどれもいとおしいというか(笑)、妙な愛着がわいてきました。和服のコーディネートは洋服のそれとはまた違うとよく言いますが(柄×柄もオーケーとか、、、うーん私はうまく説明できないが)、女性たちが当たり前に着物を来ていた頃の街中を覗いてみたいものです。 -
好みの着物が沢山。明治大正昭和の着物の流行もよくわかった。
-
作品世界の着物がリアルに飛び出して表現された素晴らしい一冊です。写真集としても、谷崎潤一郎文学に親しむ一冊としてもとても役立ちます。
大山崎山荘美術館で行われた企画展示の取材の資料として読ませてもらいました。
京都「アサヒビール大山崎山荘美術館」で谷崎文学の着物を見る | 京都府 | LINEトラベルjp 旅行ガイド https://www.travel.co.jp/guide/article/35075/ -
繝代Λ繝代Λ縺ィ逵コ繧√k縺?縺代〒繧よ・ス縺励>縲ょ柱陬??縺薙→縺ッ繧上°繧峨↑縺??縺ァ繧ォ繝ゥ繝シ蜀咏悄縺悟、壹>縺」縺ヲ縺ョ縺ッ縺サ繧薙→縺ォ蜉ゥ縺九k縲ゅ∪縺溘?∫オ先ァ九↑謨ー縺ョ菴懷刀縺ォ縺、縺?※縺ゅi縺吶§縺ェ縺ゥ縺瑚シ峨▲縺ヲ縺?※縲∬ーキ蟠取枚蟄ヲ縺ョ豁エ蜿イ繧ゅo縺九k繧医≧縺ォ縺ェ縺」縺ヲ縺?k縲
-
谷崎作品に出てきた着物を写真で再現したもの。『完全』再現ではないので注意が必要。あと、当然というかなんというか、女物の着物しか出てこない。