- Amazon.co.jp ・本 (127ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309760469
作品紹介・あらすじ
本書では、アラビアンナイトからいくつかの物語をピックアップし、この物語集の全体像を確認する。アラビアンナイトには、おなじみのアラジンやアリババ以外にも魅力的な物語がたくさん入っている。
感想・レビュー・書評
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アラビアンナイトを通読するのは難しいけど、この本のように挿し絵や解説があると楽しく読める。
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挿し絵やイラストが随所に盛り込まれ、アラビアンナイトの有名な話だけでなく編者や翻訳者などの紹介、舞台となった時代の文化など幅広く解説している。個人的にはアラビアンナイトの時代の食事に関するコラムが面白かった。
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アラビアンナイト。元祖枠物語とも言える、一大長篇である。
妻に浮気をされて女性に絶望した王は、次々に花嫁を娶っては一晩限りで首をはねるようになる。ついに適当な娘がいなくなり、王の元に行くと自ら志願したのは大臣の聡明で美しい娘、シェヘラザードだった。彼女は夜毎、奇妙でおもしろい物語を王に語り聞かせ、一夜ずつ命を永らえる。千一夜が過ぎた後、彼女を待ち受けていた運命とは。
知らぬものがないといってよいほど有名な物語だろう。
だが、実はその成立には謎が多いという。
そもそもアラビアンナイトという名称は、この物語群が西洋と出会って後についたもので、故郷であるイスラーム世界の知識人にはさほど重要視されていなかったようだ。
いつ・どこで・どのようにして成立したのか、詳しいことはわかっていない。『アルフ・ライラ』という原題は、「千の夜」を意味するが、この場合の「千」は数多いという程度のことでしかなく、正確に千の物語が収録されていたわけではないらしい。当初はそれよりもかなり少なかったようだ。収められた物語は玉石混淆で、ごく軽い笑い話のようなものもあれば、枠物語の中にさらに幾重にも枠物語があるような凝った作りのものもある。
語られる風俗や風習などからして、成立時期や地域にもかなりのばらつきがあると思われる。
枠物語の性質上、いくらでも後から物語を付け足すことも可能であるから、口伝えで伝わるうちにさまざまなタイプのさまざまな地方のものを吸収していったと考えるのが妥当だろう。
西洋にこの物語が紹介されると、異国情緒あふれるこの物語群は非常な人気を博した。18世紀、フランスの東洋学者であったガランが「アラビアンナイト」として訳した「千一夜物語」は、爆発的なベストセラーとなった。ただし、ガランの翻訳は中途で終わっていた。ガラン自身が千一夜分の物語があると信じていたこともあり、二匹目のドジョウを狙う者たちが、残りの物語を探して血眼となった。ちゃっかりしたものは、自分で創作したものを付け加える始末だった。そうでなくても出自がよくわからぬまま、アラビアンナイトに加えられたものも多く、多くの人が今でもアラビアンナイトの代表的な物語として思い浮かべる「シンドバッド」「アラジンと魔法のランプ」「空飛ぶ絨毯」「アリババと四十人の盗賊」などはいずれも、本来はアラビアンナイトではなかったと考えられるという。
オリエンタリズムへの憧れと相俟ってさまざまな版が生まれてくるが、中には性的な側面が強調されたものもあった。
19世紀に至って、教育に力を入れる中流層の出現から、児童文学というジャンルが生まれてくる。ファンタジー色あふれるアラビアンナイトはよい題材になりうるが、エロティックな場面は削らなければならない。そのため、アラビアンナイトは、極端に「大人向け」のものと、教訓も含む「子ども向け」のものに分化していくことになる。
本書では、数多くの図版とともに、アラビアンナイトの中の主要物語のあらすじ、当時のイスラームに関する背景知識を盛り込み、入門書としては手頃だと思う。薄さの割に中身が濃い。紹介されている参考文献も興味深い。
この1冊を手掛かりにアラビアンナイトの世界に、さらにイスラームの世界に誘われるのも悪くない。
*「アラビアンナイト」は、 NHKの100分de名著の11月課題図書でした。番組で解説にあたった先生が本書の著者です。この本は2004年初版なのですが、新装版が来年1月に出るようで、番組の反響が大きかったということかもしれません。
*さてさて、自分の手元に積ん読になっているのは、いちばん「大人向け」という「バートン版」なのですが(^^;)。アラビア語の原典から起こしたという東洋文庫版というのにも惹かれます。いずれぼちぼち読んでいきたいと思います。 -
アラビアンナイトにはユダヤ系の伝承に基づいた話も多い。旧約聖書に登場するソロモンやモーゼはコーランでも言及されている。イスラム圏内では中世以降ヨーロッパのような組織的ユダヤ人迫害はなかった。
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童話で江有名なアラジンは原典では中国人の設定になっていたのでビックリ! サイードの「オリエンタリズム」に言及した解説があったのがとっても良かったです。