図説 英国執事 新装版: 貴族をささえる執事の素顔 (ふくろうの本/世界の文化)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 120
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (152ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309762777

作品紹介・あらすじ

古き良き時代の、貴族と男性使用人たちの生活とは? 何を思い、どんな仕事をしていたの? 何時に起きて、給料はいくら? 出世の道は? 恋や結婚は? 御主人様や奥方様とのあやうい関係? ときには犯罪に走ることも……?

コミック『黒執事』作者、枢やな氏推薦!

【本文より抜粋】

●第4章「執事の日課」より

「私は正面玄関までの階段をのぼり、ドアベルを鳴らしました。すると、お仕着せ姿のあかぬけたフットマンが出てきました。私は、執事のミスター・リーを呼んでくれるよう頼みました。

『あなたは下級執事の職に応募してきた人でしょう』と彼は物柔らかに言います。

『そうです』と私は答えました。

『では、通用口のほうにお回りいただけますか。空堀(エアリア)を降りて、そこにあるベルを鳴らしてください。こちらのドアはアスター卿夫妻とそのお客様専用です』

 私は一フィート(*三〇・五センチメートル)ばかり身長の縮む思いをしながら、言われたとおりにしました。すると驚いたことに、下のドアを開けて現れたのは、さっきと同じフットマンだったのです。満面の笑みをたたえています。

『ずっと長いこと、これを言えるときを楽しみにしていたんだ』と彼は言います。

『俺がこの仕事を始めたとき、同じことをやらかして、いまみたいな歓迎を受けたものでね』

 この男は、あとでわかったことですが、ゴードン・グリムレットで、彼と私は生涯の親友になりました」



●第7章「執事の堕落」より

 スタッフの窃盗に目を光らせていたアーネスト・キング(執事)だが、そういう彼自身も、若き日にはちょっとした「過ち」を犯したことがある。温室で育てられた、その年初めてのイチゴを、誘惑に負けて食べてしまったのだ。がまんできずに二つ目を口元にはこんだところ、後ろから声をかけられた。「アーネスト、ほどほどに頼む! 私の分も少し残しておいてくれよ」──主人はそれだけ言って去っていった。彼にとって「生涯一度きりの窃盗」であった。

感想・レビュー・書評

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  • 執事をメインに、イギリスの上流階級家庭の使用人たちの起源やキャリア、日課や休日の過ごし方などをまとめた本。往時の雑誌の挿絵や写真が多く掲載されており、楽しい読み物になっている。

    転職でキャリアアップする点は今のサラリーマンと変わらないので、当時の雇われ人の気持ちになって読んだ。既婚の執事は不利だったと知り、『日の名残り』のスティーブンスの頑なさが少しだけ理解できたような気持ちに。

  • 写真や図版を参照しつつ英国執事の歴史と彼らの日常を解説するムック本。人件費のかかる男性使用人を抱えることができたのは一部の富裕層だけで、もう少し下の階級ではメイドなど女性使用人だけを雇っていたという話に、言われてみたらそうだよなあと目から鱗が落ちつつ。家令と執事とその他の使用人の違いやルーツ、男性使用人が出世していく過程(日本の江戸時代で言えば丁稚にあたるような下積み時代から、執事などの上級使用人になるまでの流れ)なども紹介されている。酒や競馬で身を持ち崩す執事の話とか、やらかし失敗談とか、当時の雑誌の風刺画などもたくさん紹介されていてなかなか可笑しい。数年前からアンダーザローズにハマっていたり、少し前にカズオ・イシグロ「日の名残り」を読んだりしたので、ちょっとくらい知識があったほうがもっと楽しめるような気がする……という大変軟派な動機で読み始めたのだけれど、楽しい読書だった。

  • NDC 366
    「古き良き時代の、貴族と男性使用人たちの生活とは? 何を思い、どんな仕事をしていたの? 何時に起きて、給料はいくら? 出世の道は? 恋や結婚は? 御主人様や奥方様とのあやうい関係? ときには犯罪に走ることも……?

    コミック『黒執事』作者、枢やな氏推薦!」

    目次
    序章 執事の幻影
    第1章 執事の起源
    第2章 主人の生活
    第3章 執事の出世
    第4章 執事の日課
    第5章 執事の生活
    第6章 執事の余暇
    第7章 執事の堕落
    第8章 執事と主人

    著者等紹介
    村上リコ[ムラカミリコ]
    文筆・翻訳家。東京外語大卒、千葉県生まれ。一九世紀から二〇世紀初頭のイギリスの日常生活、特に家事使用人、女性と子どもの生活文化をテーマとして活動している。『英國戀物語エマ』『黒執事』などアニメーション、コミックのアドバイザーも務める

  • 本の体裁から見て、ごくごく軽い本だろうと思っていたがなかなか読み応えある。図書館から前に借りてきたけれど、目下集中して読んでいるところ。

  • 新装版の図説英国執事。執事だけでなく男性使用人についても詳しく書かれていて読み応えがある。資料も多く、掲載されている写真や当時の雑誌からの挿絵などを見ているだけでも楽しめる。

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著者プロフィール

東京外国語大学卒業。著者に『図説英国執事』『図説英国貴族の令嬢』(河出書房新社)、翻訳に『図説イングランドのお屋敷』『図説英国インテリア史』(マール社)等多数。アニメ「黒執事」の時代考証にも携わる。

「2023年 『図説 英国メイドの日常 増補版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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