- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784314004701
作品紹介・あらすじ
「現代」生活を送る人間は、貨幣や商品や、様々な欲望対象によってますますがんじがらめに呪縛され、また氾濫する情報や諸観念によって硬直化した精神生活を強いられているかにみえる。こうした状況にあって、私たちは「生命の喜び」をいかにして回復できるのだろうか。『文化のフェティシズム』を出発点に、いまや独自の思想を形成し始めた著者は、ここに身近な日常生活の周りにひそむ惰性化し硬直化した様々なを抉り出し、流動化した生命の動きを回復するための方向性を示す。さらに最終章で、ソシュールの謎の沈黙と「狂気」の原因と目されるアナグラムに挑み、意識の深層におけるコトバの姿を取り出すところは圧巻である。やさしいことばで語りかけるように、著者の文化論、人間論、生命論を説いている。
感想・レビュー・書評
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『文化のフェティシズム』(1984年、勁草書房)以降の著者の思索を示す作品です。著者がおこなった講演にもとづいており、たいへんわかりやすいことばで、丸山言語哲学の基本的な発想が説き明かされています。
ソシュール研究を通して、言語名称目録観に代表される実体論から関係論への移行の必然性を明らかにするとともに、著者が「ケ・セラセラの相対主義」と呼んでいる立場を乗り越えて、私たちの文化を活性化するための生成論の立場へと進むべきだという主張が展開されています。
ソシュールの研究から、独自の言語哲学を展開した著者が、後年の欲動論の立場へと移っていく過渡期の思索を示している著作です。ただし、著者の言語哲学にかんしては、カオスとコスモスの円環について語っている著者自身がどこに位置しているのかという問いへの取り組みが欠けている点に、大きな問題がのこされているように思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示