透きとおった悪

制作 : 塚原 史 
  • 紀伊國屋書店
3.69
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本棚登録 : 55
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314005524

作品紹介・あらすじ

時代は世紀末に-いよいよ先の見えなくなる社会の動き。かつて「消費社会」論の新時代を拓いたボードリヤールが、この世紀末の世界を見きわめ、近未来的な予測を展開した成果がここにある。彼は言う-。が眼にみえない膜となって、世界を覆っている、と。きわめて今日的な事象を数多くとりあげ、あざやかに解読してゆく本書は、推理小説を読むような意外性と、SFを読むような想像の快楽を与えてくれる。

感想・レビュー・書評

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  • フランスの社会学者である著者が、恐らく「世界で一番未来が見えている人だろう」と評されていたころの著書。それまでの学者らしい理論構築していく文章を止め、現代社会の様々な場面をスナップショットで写し取るようなスタイルのエッセイに切り替えた。非常に難解な内容にも関わらず、多くの芸術家にも読まれベストセラーになった。ちなみに著者がこの数年前に出した本は、映画『マトリックス』のネタ本として有名。

  • BJa

  • この本で読書会をしたいという友人がいたので手にとった。22章のうち読むべきは15章以降の「ラディカルな他者」だろう。オプティミスティックとは言わないまでも、ペシミスティックではないボードリヤールがそこには在る。ボードリヤールの美なるもの(があるとするなら)もそこに顕れているように思う。
    「価値は、いかなる準拠枠とも無関係に、純粋な隣接性によって、あらゆる方向に、そしてあらゆるすきまから拡散してゆく。このフラクタルな段階に到達すると、 自然的であれ一般的であれ、いかなる等価物ももはや存在せず、したがって本来の意味での価値法則も存在しない。」
    とボードリヤールは言う。(消費社会の神話と構造で示した)「記号の消費段階」から「フラクタル的な価値の消費段階」へと移行しつつある。そのような社会においては、何もかもが超越性を示す。(例えば、あらゆるところに政治が入り込むようになり純粋に政治的なもの名指しできなくなっているということ。)価値の拡散であり、同質化。肯定性が覆い、否定性が放逐された社会。だが、否定性は完全には排除をすることはできず、ウイルス的形態を伴って出現する。それこそラディカルな他者である。それはフーリガンであったり、(西洋人にとっての)日本人、未開人であり、エイズであったりする。それは現代社会を脅かす悪であると同時に同質化を食い止める希望でもある。

  • 画材の限界はあるでしょうけれども
    画家は色に向かうのだと思います
    詩人がことばに向かうように

    ヨク保存されたレンブラントや
    ルーベンスの天才に触れたのは芸大美術館の薄闇の中です
    もう 弱い蛍光灯の光にも当てたくない気分なんでしょうね

    ルーベンスの細密な蜘蛛や蜥蜴の絵でした
    ひと目でこれは異様な
    オレなんか猿の一種で早く自分を隔離しなきゃいけないんだ
    そういって逃げたくなるような強烈さでした

    ルーベンスを見ることに命をかけた少年ネルロ
    フランダースの犬の話はこのとき正しいリアリティで私に響きました

    名のみ知ってチャント向い合えていなかったレンブラントも
    このとき初めて会いました
    本を読む少年 タッタ一枚だけでしたが
    その後見たレンブラントとその工房展より強烈でした

    画家は何を見ているのでしょう
    対象を透徹してみるとかいうけれども
    どういうことでしょうか

    公園になった元正田邸を両陛下が訪れた映像をみたとき
    美智子皇后が地面でなく 空ばかり見上げるのが印象的だった
    もはやなくなった場所ではなくて
    そこから見た変わらぬ空を思い出しておられるのだ という
    印象でした

    そこから見る
    時間の重なりを見る
    今いる自分と もう無くなった多くの時間を重ねていく
    そのときそのとき感じている全てが
    大事な芸術なのではないでしょうか

  •  ボードリヤールはまるで昆虫のようだ。鋭敏な触覚で時代の動向を察知し、強迫神経症的なレトリックを並べ立てる。その姿は驚くほど色彩鮮やかで、胸の悪くなるような形状をしている。あるいはフグか。毒性をもって舌をピリピリと刺激し、油断をすると死に至ることもある。

    http://d.hatena.ne.jp/sessendo/20100226/p3

  • 20世紀末、シミュレーション社会が「透きとおった悪」に覆いつくされている様を論じる書。
    前半部の「美的なものを越えて」では現代のアート界の状況が的確に描かれていてぞっとするほど。

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著者プロフィール

【著者】ジャン・ボードリヤール :  1929年生まれ。元パリ大学教授(社会学)。マルクスの経済理論の批判的乗り越えを企て、ソシュールの記号論、フロイトの精神分析、モースの文化人類学などを大胆に導入、現代消費社会を読み解く独自の視点を提示して世界的注目を浴びた。その後オリジナルとコピーの対立を逆転させるシミュレーションと現実のデータ化・メディア化によるハイパーリアルの時代の社会文化論を大胆に提案、9・11以降は他者性の側から根源的な社会批判を展開した。写真家としても著名。2007年没。著書に『物の体系』『記号の経済学批判』『シミュラークルとシミュレーション』(以上、法政大学出版局)、『象徴交換と死』(ちくま学芸文庫)、『透きとおった悪』『湾岸戦争は起こらなかった』『不可能な交換』(以上、紀伊國屋書店)、『パワー・インフェルノ』『暴力とグローバリゼーション』『芸術の陰謀』(以上、NTT出版)、ほか多数。

「2015年 『消費社会の神話と構造 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ジャン・ボードリヤールの作品

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