透きとおった悪

制作 : 塚原 史 
  • 紀伊國屋書店
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本棚登録 : 60
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314005524

感想・レビュー・書評

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  • この本で読書会をしたいという友人がいたので手にとった。22章のうち読むべきは15章以降の「ラディカルな他者」だろう。オプティミスティックとは言わないまでも、ペシミスティックではないボードリヤールがそこには在る。ボードリヤールの美なるもの(があるとするなら)もそこに顕れているように思う。
    「価値は、いかなる準拠枠とも無関係に、純粋な隣接性によって、あらゆる方向に、そしてあらゆるすきまから拡散してゆく。このフラクタルな段階に到達すると、 自然的であれ一般的であれ、いかなる等価物ももはや存在せず、したがって本来の意味での価値法則も存在しない。」
    とボードリヤールは言う。(消費社会の神話と構造で示した)「記号の消費段階」から「フラクタル的な価値の消費段階」へと移行しつつある。そのような社会においては、何もかもが超越性を示す。(例えば、あらゆるところに政治が入り込むようになり純粋に政治的なもの名指しできなくなっているということ。)価値の拡散であり、同質化。肯定性が覆い、否定性が放逐された社会。だが、否定性は完全には排除をすることはできず、ウイルス的形態を伴って出現する。それこそラディカルな他者である。それはフーリガンであったり、(西洋人にとっての)日本人、未開人であり、エイズであったりする。それは現代社会を脅かす悪であると同時に同質化を食い止める希望でもある。

著者プロフィール

【著者】ジャン・ボードリヤール :  1929年生まれ。元パリ大学教授(社会学)。マルクスの経済理論の批判的乗り越えを企て、ソシュールの記号論、フロイトの精神分析、モースの文化人類学などを大胆に導入、現代消費社会を読み解く独自の視点を提示して世界的注目を浴びた。その後オリジナルとコピーの対立を逆転させるシミュレーションと現実のデータ化・メディア化によるハイパーリアルの時代の社会文化論を大胆に提案、9・11以降は他者性の側から根源的な社会批判を展開した。写真家としても著名。2007年没。著書に『物の体系』『記号の経済学批判』『シミュラークルとシミュレーション』(以上、法政大学出版局)、『象徴交換と死』(ちくま学芸文庫)、『透きとおった悪』『湾岸戦争は起こらなかった』『不可能な交換』(以上、紀伊國屋書店)、『パワー・インフェルノ』『暴力とグローバリゼーション』『芸術の陰謀』(以上、NTT出版)、ほか多数。

「2015年 『消費社会の神話と構造 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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