自然界における左と右

  • 紀伊國屋書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (500ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314005760

作品紹介・あらすじ

鏡の世界から宇宙の果てまで、「左と右」の不思議な冒険の旅。読み出すとやめられない面白さ。世界的ベストセラーの大改訂版。科学読物の最高傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 2021.2.13市立図書館
    ちくま学芸文庫入して、web上に公開されたマーティン・ガードナー解説を読むに、アメリカの安野光雅とでもいうべき人(順番的には安野光雅が日本のマーティン・ガードナーというべきか?)のように感じて、まずはハードカバーで借りてみた。
    暮れに亡くなった安野光雅の追悼読書でひさびさに「はじめてであうすうがくの絵本」を読み返したら、3巻の「ひだりとみぎ」の解説文でこの本が参考書として言及されていた。

  • 日常の我々の身の回りにある様々なものから左と右とはどういう事かを説明し、素粒子のスピンからパリティーの破れ、最後には超ひも理論まで話が及ぶ。
    作者の博学さには感心するばかりである。
    この本を読むと素粒子のスピンとはなにか。パリティーとは何かがある程度理解できると思うので、今後、量子力学などの本を読もうとしている人にはお勧めできるかもしれない。
    ただ、本の内容があまりにも多岐に渡っているので、物理学に詳しい翻訳者だけではこの本は訳せない。それで3人の方がそれぞれ分野を区切って訳してるのだと思うのですが、日本語としてはそれほど読みやすい文章にはなっていないのではないか??と思った。
    そうなんですよねぇ。博学の著者の本は翻訳が難しいみたいなんです。だいたいこういう内容が多岐にわたった本の和訳は読みやすいものに出会ったためしがありません。
    そこがちょっと残念です。

  • 養老先生が物理学的な思考をするために良い本と勧められてたので読んでみた。

    どうも俺には物理学がわからないらしい…(^^ゞこれまでも何度も何度も宇宙やら量子やら挑んではみたのだけれども。

    まぁ、それでも毎回、物理学やってる人の情熱っていうか熱量には感動する。俺の場合はそれを感じるだけでいいんだろう。

    それに、物理学者って、養老先生のおっしゃってた人と関わる仕事ではなく、物と関わる仕事の極端なやつ。人だけが世界ではないと思えるのは大事!

  • 読了。面白かった。
    本来なら、左右非対称のアミノ酸は、自然界のなかでは、五分五分の割合で生成されるはずだが、生物の中ではすべて、どちらかに偏っている。それは、地球上全ての生物の共通した偏りで、原子の海で生じた偏りから発生した最初の生命の名残、というのもゾクゾクするし、パリティの非保存から、CPT対称性のとこまで話は至って、ツイスター理論やストリング理論までいって終わる。
    中でも、アミノ酸の偏りと、パリティの非保存は、めちゃくちゃ面白かった。

  • ●「左と右」というテーマについて、数学から天文学、化学、生物学、物理学といった様々な分野について語りつくしている。

  • 旧版も読んでいないのでお初。一応一般向け読み物として興味を引くように書かれているとはいえ、やはり難解にて、えらく時間がかかってしまった。

    ”向き”だけでこれだけ面白い!超ひも理論はじめ取り上げられている内容は全部理解できるとはおよそ言いがたいのだが、わからないなりに感覚的につかみ、おぼろげな空想あそびが楽しい。

    P149 生化学者の中には、生命というものは、炭素化合物の複雑な性質の一つである、とさえいう人もある。

    P154 左旋糖(左向きの砂糖)は普通の砂糖とまったく同じ味であるが、右向きの代謝過程では消化されない(後略)

    P158 味覚や嗅覚の元になる神経末端は、非対称な物質からできている。そして左向きまたは右向きの物質がやってくると、反応の仕方が違う。

    P265 [テラー博士がニューヨーカー編集局に宛てた手紙]私は反テラーがわが銀河系に住んでいるとは思いません。というわけは、この天の川銀河に、反星や反惑星が存在するとは考えられないかたらです。しかし、反銀河系というものはありうると思います。(中略)テラーと反テラーとをまったく物質(反物質のないところ、宇宙空間で会わせることを考えましょう。二人がちゃんとした服(つまり宇宙服と反宇宙服)を着ていて、分子も反分子も飛び出さないように注意していれば、互いに近づいても危険はないはずです。光と反光は同じものですから、互いを見ることができます。

    P283 陰と陽とは、人生の基本的二元性のすべてのシンボルである−善と悪、美と醜、真と偽、男と女、昼と夜、太陽と太陰、天と地、快楽と苦痛、偶と奇、右と左、正と負…いくらでもある。(中略)これを印刷するか書くかする時には黒と白だが、色を塗るときには、陽は、白ではなく、赤にする。小さな目玉が二つあるが、これは二元性というけれども、その一方には他方のものが必ずちょっと入っているということを表すためのものであった。これは今でもそうである。どんな善い行いにも悪の要素があり、どんな悪い行いにも善の要素がある。どんな醜にも美が含まれどんな美にも醜が含まれている。

    P285 自然がほとんど対称だということの本当の説明はこんなことになるのではあるまいか。すなわち、神様は法則をほとんどだいたい対称というところにとどめておいた。これは人間が神様の完全さを嫉妬しないで済むからである。

    P435 アブラハム・パイスは(中略)粒子物理学の現状を次のように表現している。「コンサートの始まる少し前のホールに似ていなくもない。壇上には誰かいるがまだ団員が全部は揃っていない。音合わせをしている。何かの楽器が短い素晴らしい一節を奏で、どこかからは即興の一節が、どこからかは調子の合わない音が聞こえてくる。交響曲が始まる瞬間を控えて、期待の感覚がみなぎっている。」

    P454 気違いじみた理論が訂正され磨き上げられ、もはや気違いじみたとはいえなくなり、簡単でほとんど必然的になり、粒子の現在の無秩序が見事な秩序への道を示すようになった後、このような理論の本当の成功とは、いっそう深いレベルで理論が破綻することだと思う。アインシュタインが言ったように、神に悪意はないのであろうが、巨匠の精妙さは、猿の脳よりはややましな脳を持つわれわれが、一切の神秘を理解しうるほど低いレベルであろうか。

  • 左右の概念とはどこに存在するのか。
    例えば社会と隔絶されたどこかの孤島に住む部族の一人と電話が繋がったとする。その人と、左と右の方向を一致させることが出来るだろうか。
    利き手は、その部族においては左利きの方が多い場合があるかもしれないが、世界地図や人体の構造、天体の運行を共有することが出来れば、なんとかなるかもしれない。
    では、共通の観察対象を持てない、宇宙のどこかに住む宇宙人と、左右の方向を一致させることはできるだろうか。答えは素粒子の世界まで立ち入る必要がある。

    しかし、素粒子の世界にまで立ち入ると、今度は時間の概念が問題となる。
    ビデオカメラで撮影したジャングルの風景を左右逆に映されても、ほとんどの人は気付くことができないが、時間を逆にして再生されたら、動物の動きや川の流れから簡単に違和感に気付く。
    では、素粒子の世界を左右、時間を逆に再生した場合はどうだろう。左右については弱い相互作用を観察することで気付けるかもしれないが、時間についてはそうはいかない。

    粒子の動きは確率のみで記述されるから、それがごく稀な確率であったとしても、コップからこぼれた水が再びコップに戻ることもありえるし、隕石が地球から発射されて宇宙に飛び立つことだってありえる。
    つまるところ、時間が前向きに進んでいるように見えるのは、確率が高い方に動いているに過ぎないとすら言えるのだ。

    ならばエントロピーが増大する方向にある宇宙のなかで、エントロピーを減少させる力が働くこの地球は、逆行する時間の流れの中にいると言えるのだろうか。

    本書は単なる左右性の探求のみに終わるものではないが、科学に哲学を持ち込んで韜晦させるだけのものでもない。
    例えば、二次元平面上の左右対称は三次元空間上でひっくり返すことで同一視できるが、ならば三次元空間上の左右対称は四次元空間でどう表せられるのか。
    左右性についての思索は、斯様に一足で次元と一般の理解の範疇を飛び越える。

    カイラリティ、パリティ、反物質。

    左右という身近すぎる視点を入り口に、身震いするような深淵を覗くことが出来る一冊。

  • 東大京大教授が薦めるリスト100選抜
    No.87

  • 1-1 科学論・科学史

  • 数学パズルの紹介にかけては一流。
    専門は数学ではないので、内容に期待するというより、話題の紹介の上手さが命。

    本書も、その文脈で読むとよい。
    自然界における左と右には、地球の回転のように、一方向しか存在しないものもある。

    均衡と不均衡の理解の出発点になるかもしれない。
    期待するのはあくまで話題提供である。

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著者プロフィール

1914年アメリカ・オクラホマ生まれ。批評家、数学者、サイエンス・ライター。ルイス・キャロルその人と作品に関する世界有数の専門家。これまで100冊以上の著書を持ち、『サイエンティフィック・アメリカン』誌上では1956~1981年まで25年に渡って人気コラム「数学ゲーム」を連載した。『ゲーテル、エッシャ、バッハ』のダグラス・ホフスタッターからも「20世紀アメリカの生んだ偉大な知性」と評されている。邦訳書に『マーチン・ガードナーの数学ゲーム』(全3巻、日経サイエンス)、『ルイス・キャロル――遊びの宇宙』(白揚社)、『奇妙な論理』(全2巻、ハヤカワ文庫)など多数。

「2019年 『詳注アリス 完全決定版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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