告白と呪詛

  • 紀伊國屋書店
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314006941

作品紹介・あらすじ

80歳代も近くなったシオランが、みずからの老い、そして死に向きあいつつ著わしたこの本が、彼の最後の作品となった。皮肉と毒舌に満ちた断章の連続はあいかわらずだが、ここには暗さ、激しさよりもむしろ、人間の最も暗く醜い部分をも軽やかに嘲笑う枯れたユーモアが漂っている。
入魂の名訳でおくる「シオランの到達点」。

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人間という人間に、うんざりしている。
それでも、私は笑うのが好きだ。
そして、私は、ひとりでは笑うことができない。

生には何の意味もないという事実は、
生きる理由の一つになる。
唯一の理由にだってなる。

――本文より
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【目次】
存在の縁辺で
切断
幻滅の魔
瞬間と向きあう
激情
忌まわしき明察

訳注
訳者後記


【著者】シオラン(Cioran)
1911年ルーマニア生まれ。1931年ブカレスト大学文学部卒業。哲学教授資格を取得。1937年パリに留学し、そのまま定住する。『歴史とユートピア』(紀伊國屋書店)により、コンバ賞を受賞。邦訳された著書は『絶望のきわみで』『思想の黄昏』『生誕の災厄』(以上、紀伊國屋書店)、『崩壊概論』『時間への失墜』(以上、国文館)、『悪しき造物主』『四つ裂き刑』『欺瞞の書』(以上、法政大学出版局)ほか多数。1995年逝去。

【訳者】出口裕弘(でぐち・ゆうこう)
1928年東京生まれ。1951年東京大学文学部フランス文学科卒業。前一橋大学教授。小説家。フランス文学者。著書に『澁澤龍彦の手紙』(朝日新聞出版)、『三島由紀夫 昭和の迷宮』(新潮社)など。訳書にブランショ『文学空間』(共訳、現代思潮社)、シオラン『歴史とユートピア』『生誕の災厄』(以上、紀伊國屋書店)、ユイスマンス『大伽藍』(光風社出版)、バタイユ『内的体験』(現代思潮社)ほか多数。2015年逝去。

感想・レビュー・書評

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  • 断章。痛切なユーモア、毒舌、呪い祈り、そして全てを収束して果てること。いつかこの身が亡くなろうとなんのこともない、無から膨大な無へ、その怖さ。
    「神とのあいだにいざこざを起こす好機を、いったい何度、私はむざむざ逸してしまったことか」訳者後記も良かった

  • 記録

  • 悲観のアフォリズム
    箇条書きなのでつまみ食いできます。

    読書家な雰囲気

    ・何ひとつ達成できなかった。それでいて、過労で死んだ。

    ・一冊また一冊と、伝記物をむさぼり読む。いかなる企ても、どんな運命も、なんの役にも立ちはしないことを、いっそう深く納得するために。

    ・心の慰めになる本の目録を作ってみたとて、なんの足しにもなるまい。そうした本はごまんとある上に、読むに足るものといえばせいぜい二、三点なのだから。

  • 何がきっかけだったか、エミール・シオランという、'95年に84歳で亡くなるまでニヒルな箴言を書きつけたルーマニア出身の思想家がいたということを知り、一冊読んでみた。
    この本は晩年、76歳の頃に書かれたものだが、吐き散らかされるとても老人とは思えない中二病な毒が面白く、音楽が好きでブラームスを特に好むらしいところには勝手にシンパシーを感じた。とはいえ、実際、近くにこんなおじいさんがいたら鬱陶しくて近くにはいたくないけれど。
    特に「ほんとうだなあ」と感じた3つの断章を引用。

    ・宗教も、そのさまざまな欠陥をそっくり引き継いだ各種のイデオロギーも、とどのつまりは、ユーモア撲滅のキャンペーンにすぎない。

    ・レースが最高潮に達したとき、こんなことになんの意味がある、と自問しつつ、立ちどまってしまうランナーのような。熟考するとは、息切れを自白することだ。

    ・ある作家が哲学者の仮装であらわれたら、ただちに、才能枯渇のカムフラージュだと考えるべきだ。理念というついたては、何も隠せない。

    おまけにとどめの一つ。こんなこと言われたら、おちおち浮かれることも落ち込むこともできやしない。
    ・成功の頂点で、また失敗のどん底で、自分という人間がどんな形で懐妊されたか、それを思い描いてみることだ。過度な幸福感や不平不満を抑えこむのに、これ以上の便法はあるまい。

  • 初めてシオランの著作を手に取った。彼の人生や神に対する姿勢に本当にそうだと思う言葉もあった。「この世界で生きるべきでは無い人」という印象が強く残った。彼の世界観に嵌り過ぎては大変だなあ。

  • 一時期、嵌った。
    そして持っていることが恥ずかしくなって捨てた。

    腐れ30男。に教えてもらった。

  • 老境に達しながらも、最後まで辛口なシオランが綴る最後の書。この世に生まれる前の状態になる時期に書かれたとは思えないほど、鋭く、残酷な言葉が印象的だ。

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