イスラームから見た「世界史」

  • 紀伊國屋書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (685ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314010863

作品紹介・あらすじ

9・11-その時はじめて世界は"ミドルワールド"に目を向けた。西洋版の世界史の後景に追いやられてきたムスリムたちは自らの歴史をどう捉え、いかに語り伝えてきたのか。歴史への複眼的な視座を獲得するための、もうひとつの「世界史」。

感想・レビュー・書評

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  • 一ヶ月近くかかってようやく読み終わった…。「歴史への複眼的な視座を…」って、そもそも歴史の概要が全然頭に入ってない人間がいきなりイスラーム視点の世界史をインストールしてしまったんだけど、結果ユニークな形で俯瞰できた気はする。よく「歴史は現代から遡って学んだほうが良い!」みたいに言う人いるし自分もそんなふうに思ってたけど、これ読んでそういう学び方は不可能なんだなと思った。最も複雑化した状況から因果関係をたどるのは返って難しいわな…と当たり前のことを認識することができた。

  • かなり面白く読めました。特に、オスマン滅亡くらいまでは細かく丁寧に描いてくれます。なにが面白かったかというと、高校世界史ではさらっと流す箇所をきちんと書いてくれてかゆいところに手を届く感じをいだかせてくれているからです。例えば、正統カリフ4代の事績をきちんと書いてくれていたり、アフガニーが有したイスラーム世界に対する影響力を理解させてくれたり、オスマン滅亡後の目も当てられない時期のトルコでムスタファ=ケマルがなぜ国父とまで崇められたのかもきちんと知ることができる。それにイスラームと言うとイベリア半島からインドネシアまで広域のエリアを占めていますが、その時代に西のイスラム王朝と東のイスラム王朝の並立関係をきちんとわかるようにしてくれています。たとえば17世紀のオスマン・サファビー・ムガルとか。高校世界史でも図説を見ればわかったかと思いますが、ちゃんと記述して理解させてくれる点はいいですよね。著者さんはアメリカで世界史教科書記述の仕事をされているようですが、こんな教科書で学習したかったなとも思いました。

  • 西洋的モノの見方を学んだアフガニスタン人が、ムスリムの立ち位置から世界史を記した本。
    まず、上記の通り二通りの視点を有することで、半分西洋的な見方を学んでいる我々日本人にも違和感のない語り口で、イスラームの見ている世界史を解説してくれている。今まで見たことのない世界をわかりやすく解説してくれているのだ。イスラーム関連史など、高校の世界史の授業で単語を学ぶレベルか、ダイジェストでサラっと浚うのが関の山であるが、ここまで細かいものはほぼないであろう。近世以前の歴史において、如何にイスラームが発達していたか、またイスラームが宗教だけでなく、文化であり、文明であり、社会制度であった(そして世俗権力と宗教的権威の対立の根深さ)ことがよくわかる。そして何よりも近現代において、本書の真骨頂となる。なぜいつまでたってもイスラームを旗印にする武装勢力がいなくならないのか、オイルマネーを武器にする中東諸国の内実とは何か、フセイン死後のイラクがなぜあんなにも混乱を続けるのか、また、本書執筆以降の話ではあるが、アフガン政権はなぜタリバーンに負けたのか、なぜチュニジアの春は失敗したのか。イスラーム世界内の対立を知ることで紐解ける。そして、現代のイスラームを知る上で避けては通れない西洋との関係。ここで我々は如何に自分が西洋的視点でしか見てこなかったか、ということを思い知らされる。そして、さらにイスラームと西洋の間だけでなく、改めて世界には全く異なる視点が存在すると言うことを改めて思い知らされる。昨今の世界情勢において、様々な視点があることを学び中立的観点から分析し、他者を理解することの重要性を改めて学ばせてくれる名著といえよう(ただし私は、分析は中立的に、決断は恣意的に行うべきであると考えていることをここに記す)。

  • 隣の違う人を叩くのは、もうお終いにしなきゃ、、、

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    9・11―その時はじめて世界は“ミドルワールド”に目を向けた。西洋版の世界史の後景に追いやられてきたムスリムたちは自らの歴史をどう捉え、いかに語り伝えてきたのか。歴史への複眼的な視座を獲得するための、もうひとつの「世界史」。
    https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784314010863

  • よい本でした。序盤、仏教について雑な知識で言及してくることに少々イラッと来てたのは事実だし、なんだかんだで読み終わるまで40日くらいかけちゃったけど。全体として読み応えのある啓蒙書だったというか、少なくとも僕は教えられるところが多かった。

    イスラムがウンマという理想的な共同体を築くところから始まったこと。個人より共同体を優先する理念のもとに強大な帝国を作り上げたこと。まだ未開段階だったヨーロッパ諸侯の「十字軍」侵略をいなして勢力を維持したこと。その栄光の歴史に巨大な影を落としたのがモンゴル帝国による理念なき侵略で、イスラムは「正しいがゆえに常勝」という自画像の見直しを余儀なくされたこと。

    こうして列挙してるだけでは到底書ききれない、無数のトピックがこの本にはあって、一つ間違えればただの歴史的事象の羅列になってしまいそうなところ。それを短切ながら的確な描写で血の通った歴史として提示してくれてるから魅力的なんだな。そして物語は、現代のイスラムを取り巻くテロリズムや階層分化やパレスチナ問題の歴史的経緯についても躊躇なく肉薄して、「イスラムから見た」諸問題の像を、畳み掛けるように提示していく。

    訳者の小沢千重子さんの文章もおおむね読みやすくてよかったし、過去の訳書一覧を見ても僕とかなり関心がかぶる人だなって感じがする。まだまだ知りたいことはあるなー。

  • マルチサイトのゲームをプレイする感覚を、実世界の、しかも悠久の世界史の流れを漂いながら感じることができるとは。
    600P超のボリュームも読み飛ばしを許さない、随所で感じる「あの時こちらの登場人物はこうだったのか」という鳥瞰の快感。
    別の視点の歴史がある、という真理は日本人には受け入れやすいというか自明。
    片側の言い分しか聞いてこなかった不明を恥じ、その上で中道を進みたい。

  • とても読みにくいけどめちゃくちゃ面白い。

  • タイトルの名の通りイスラームから見た世界史を学べる本。自分がこれまで学んできた歴史は西洋に偏った歴史だけであり、見方や枠組みを変えると事実としてこういう歴史が存在していたことがわかった。
    イスラームにはイスラームの正義があり、そこに優劣をつけるのではなく、事実を正しく認識しお互いを尊重するのが良い。

  • これまで自分が学校等で学んだ世界史と言うものが、いかに西洋に偏った物の見方であったかがよく分かる本。西洋世界とイスラーム世界、枠組みがまるで異なっており、そうした前提条件の違いを理解せずには両者噛み合った議論は出来ず、今日の状況が生まれているのであろう。

  • 現在、世界人口の4分の1近くがムスリム(イスラム教徒)と言われていますが、日本にいると理解が難しく感じます。この本は、イスラム教の世界から見た世界通史です。厚めの本で、まだ通読できていないのにお勧めするのは気が引けますが、自分の知っている「世界史」を思い出しながら読んでいると「別の視点」の重い衝撃がじわじわと脳に響きます。日本では何となく自分たちの社会を西洋世界の一部のようにイメージしていて、イスラム教の社会を異質と感じがちですが、実際には、日本は、どちらから見ても辺境で異質です。

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著者プロフィール

アフガニスタン出身、サンフランシスコ在住の作家。アメリカにおける複数の世界史教科書の主要執筆者でもある。著書『イスラームから見た「世界史」』は邦訳もされ、世界的ベストセラ-となった。

「2021年 『世界史の発明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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