〈選択〉の神話――自由の国アメリカの不自由

  • 紀伊國屋書店
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本棚登録 : 86
レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314011013

作品紹介・あらすじ

選んだのか?選ばされたのか?買い物、選挙、人生…自由に「選択」しているつもりでも、その実態は不自由だった!「自己責任」の罠にかからないために-「正しく選択する」ことが困難な時代の処方箋。

感想・レビュー・書評

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  • 自己責任とは、自由意思による選択に立脚している。

    はたして
    わたしたちにどこまで自由意思があるのか?
    どれだけ選択できているのか?
    どこまでが自己責任なのだろうか?



    わたしたちには自由意思があるというのは本当だろうか?
    実は、わたしたちには意外と自由意思が無いかもしれないのだ。
    例えば、自分の手を動かすとき、脳はどうなっているか?
    最初に自由意思 (手を動かそうという思い) があって、次いで実際に手が動くのだと思うでしょ?

    これがなんと違う!
    今は亡き Benjamin Libet (ベンジャミン・リベット) という先生が、
    人の自由意思、および自発的な筋運動について有名な研究を残している。
    それによると

    1. 自由意思とか関係なく (?) 脳が手を動かそうという準備をする。
    2. その0.5秒後に、自由意思 (手を動かそうという思い) が生じる。
    3. 実際に手が動く。

    わたしたちにできるのは、脳が完了した準備をキャンセルすることだけという可能性がある。
    わたしたちの選択とは、つまり
    環境 → 脳 (経験) → 脳が様々な選択肢を提示 → キャンセル/採用 (無意識/有意識)
    という可能性がある。

    自由意思というのはわたしたちの選択の起点ではないかもしれない。



    選択肢が多いほど選択は良いものになるのだろうか?

    シーナ・アイエンガーさんのジャム実験の通り、
    選択肢が多くなるとわたしたちは選ぶことをやめて先送りする。
    ついでに、多量の選択肢から選んだ場合、
    その選択に確信がもてず、あとで後悔する可能性が高い。

    システム1 (自動選択) とシステム2 (熟慮選択) で言えば
    わたしたちはほとんどシステム1 (自動選択) に頼りきりである。
    よって、わたしたちは意識的選択ではなく、習慣や環境による自動選択で生きている。

    選択には意思力を消費するのでコストが掛かる。
    あまりにもコストが掛かるので、人は意外にシステム2 (熟慮選択) を使っていない。
    選択肢が多いほど選択は良いものになるというのは、額面どおりには受け取れない。



    これまでは、自由意思なるものが最初にあるとされてきた。
    豊富な選択肢から、自らの意思で選択を行うことが良いと思われてきた。
    契約や自己責任といった考え方はこれを前提にしている。

    けれど、極端な話、自由意思による選択は神話なのかもしれない。



    そう考えると重要なことは2つ。

    1つは、自己責任とは権力を過度に利する恐れがあるということだ。
    権力者はルールを作る。被権力者はルールの中で選択せざるを得ない。
    よって、あらゆる行動は、ルールの枠内における自由意思の発揮であって
    自己責任ということになってくる。

    例えば、ハリケーンがくるので急遽避難勧告が出されたとする。
    貧民は避難しようにも、アテがないし、お金もない。
    よって、避難したいが、危険地帯に留まらざるを得ない人もいるだろう。
    これは自由意思による選択で、死んでも自己責任だろうか?
    自己責任かもしれないし、自己責任ではないと考える社会の方がよいかもしれない。
    だが、自己責任と考える以外の選択肢を綺麗さっぱり排除するのは危険ではないか?
    ルールや環境を検討する余地を残しておいた方が良いのではないか?

    もう1つは、ナッジである。
    自由意思による選択という枠組みではなく、環境による小さな後押し。
    これが多大に人の行動に影響を及ぼし、無意識の行動を促す。
    わたしたちはほとんどシステム1 (自動選択) に頼りきりであるから、
    システム1 (自動選択) と親和性の高いナッジに注力することで
    より良い選択ができるのではないか?

    より良い選択をするために、自由意思による選択という枠組みは
    もしかすると思っていたより重要ではないのかもしれない。

  • 認知心理学の知見を用いた米国の法学者による一般書のようだ。理論的にはあまり目新しい話はないが、具体例が豊富にあるので行動経済学に関心のある人は目を通しておくとよいかもしれない。

  • <選択>といえばアイエンガーの『選択の科学』が定番なんだろうけど未読だったりする。こっち先に読んだ。

    「無分別で向こう見ずになることを私が選択したのなら」それは「自己責任になる」のか。「自己責任」とは「選択」することなのか。
    もっと軽い本かと思ってたけど、そうでなかった。
    野球を観に行ってファウルボールに当たって怪我をした場合「危険があることを承知で行くという選択をしたのだから、当たった本人に責任がある」という考えに対して、知的共感という考えを元にして自身の考えを説明する一冊。エクセレント。

    『〈選択〉の神話』ケント・グリーンフィールド
    本としての出来はとてもよかったと感じた。本書で挙げられる例は最低限に絞られていて、心理学の理論を読まされているのか、実験結果を読まされているのか、結局何を読まされているのかよくわからない本も多いが、こちらの本はそう言ったことがほとんどない。

    また「自由意志とは?」「共感とは?」といったややこしい疑問も扱うが、しっかりと著者自身の意見を述べているところも好感が持てる。何よりもイデオロギーから離れて(はなるように努力して)問いに対して答えようとしているところがエクセレント。

  •  自分の意思で選択していると思っても、実は多くの制限がかせられている。その不自由さを解消するために知っておきたい事実と処方箋。
      選んだのか、選ばされたのか?
      買い物、選挙、結婚相手、ライフスタイル……   
      その選択は、ほんとうに正しかったのだろうか?
     本著で著者は、人間は何かを選ぶ際、脳の機能、文化の規範、権力の抑圧、自由市場の構造などから多くの制限が課されたうえで判断しているので、豊富な選択肢から自由に選んでいるつもりでも、実際は不自由だと説く。また、そんな現状でありながら、選択した個人に全ての責任を負わせる〈自己責任〉という言葉の欺瞞を衝く。気鋭の法学者が、行動経済学、神経科学、心理学、社会学などの知見から多角的に検証し、よりよい〈選択〉を可能にするための方法を、豊富な具体例からわかりやすく解説する。
     〈自己責任〉の罠にかからないために――「正しく選択する」ことが困難な時代の処方箋。

    ◎さまざまな学問の成果を生かせば、よりよい〈選択〉をできるようになるか?
    ◎「選択は不自由なものである」という現実を踏まえ、社会の仕組みをよりよいものに変えられるか?
    ◎〈自己責任〉とは何か? そしてわれわれはそれをどう担うべきか?


    《目次》
    【第1部 選択は重要だ】
    ●第1章 選択、選択、選択 
    斧とファウルボール/カトリーナ、登山家、肥満と自己責任/セックスの同意、政治の同意 

    ●第2章 選択への愛 
    過ぎたるは及ばざるがごとし/〈選択〉というレトリック/法における選択

    【第2部 選択は不自由だ】
    ●第3章 脳
    過負荷の脳/「殺意」の正体/経済学者たちのまちがい/脳の損傷と犯罪/ビキニ効果――人間はネギを背負ったカモである/メンタル汚染/マーケッターは知っている/人間の行動は「予想どおりに不合理」だ

    ●第4章 文化
    文化がちがう!/女の生きかた/「ノー」といわれたらダメ?/水のなかの魚/信じて疑わない/偏見解消の処方箋

    ●第5章 権力
    服従の心理/権威にたてつく/地獄の自己啓発セミナー/「私には確かに選択の自由がある」

    ●第6章 自由市場
    自由市場社会の仕組み/富むものますます富む/仁義なき市場/カジノの戦略/潜在意識を攻めろ!/〈魂〉売ります

    【第3部 よりよい選択のために】
    ●第7章 「自己責任」の落とし穴
    勝手にやれ宣言/医療保険制度で考える/自己責任≠選択の自由/「自己責任」のレトリック

    ●第8章 審判も判事もまちがえる
    直感と熟慮/法のあいまいさ/知的共感能力の重要性/ストーリーに耳を傾けること

    ●第9章 いかに選択するか
    選択能力向上の手引き/公共政策とナッジについて/〈選択〉は神話なのか?

  • 一見自由な選択は不自由であり、その選択は脳・文化・権力・市場等により制限がかかっており、その上自己責任が問われる欺瞞を暴く。豊富な例を引いての論証が解かりやすい。

  • 361.4||Gr

  • 第1章 選択、選択、選択
    第2章 選択への愛
    第3章 脳
    第4章 文化
    第5章 権力
    第6章 自由市場
    第7章 「自己責任」の落とし穴
    第8章 審判も判事もまちがえる
    第9章 いかに選択するか

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