社会はなぜ左と右にわかれるのか――対立を超えるための道徳心理学

制作 : 高橋 洋 
  • 紀伊國屋書店
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レビュー : 26
  • Amazon.co.jp ・本 (616ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314011174

作品紹介・あらすじ

理性に訴えるリベラルは、感情に訴える保守には勝てない――気鋭の社会心理学者が、従来の理性一辺倒の道徳観を否定し、感情のもつ力強さに着目した新たな道徳心理学を提唱する。豊富な具体例と、進化心理学や生物学、哲学、社会学などの幅広い知見を応用した説得力のある理論で道徳を多角的に分析し、明快に解説した全米ベストセラー。

感想・レビュー・書評

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  • リベラルと保守は陰と陽の関係にある。両者とも健全な政治に必要な要素。リベラルはケアの専門家で、既存の社会システムの歪みによる犠牲者を見分け、状況の改善を求める。一方、自由を神聖視するリバタリアンと特定の制度や伝統を神聖視する保守主義者はリベラルの改革運動に対し、釣り合いを取る役割を果たしている。道徳は人々を結びつけると同時に盲目にする。従って異なる道徳を持つ人と出会ったら、即断せず、共通点を見つけ、信頼関係を築けるまでは道徳の話を持ち出さない。持ち出す時は相手に対する称賛の気持ちを忘れないように。

  • 地政学・戦略学博士の奥山真司さんがおすすめしていたので読んでみた。人間は理性的であるべきだしそういった人物によって統治されるべき、という哲学者の言葉に疑問を感じていたので(で、そんな超人はどこにいるの?)なぜ哲学者や合理主義者がそんな事を主張するのか納得はしないが理解の手がかりになった。リベラリストにとっては耳の痛い話が多いと思う。注釈が死ぬ程多いので少し読みづらい。日本、米国、欧州では保守とリベラルの定義が少しづつ違うのでそれを理解していないと混乱するかも

  • 原題は「正義の心」副題は左右ではなく政治と宗教。
    左右に分かれる理由ではなく、分断されてしまう理由を考察している。
    内容はそれなりに興味深いが文章がおそろしく読みにくい。


    政治や道徳の話になると、牽強付会にもほどがあるこじつけを堂々と語る人がいる。
    自分と違う立場の人のトンデモろんりを見ると、よくここまで破綻した主張ができるなと思う。
    でもあっちからは私がこう見えるんだろうとも思う。
    多様な価値観を認めたいのに、それを否定する人を見ると、道徳的な差異を許せなかったり脅威を感じたりもする。
    なぜそうなってしまうのか、道徳を巡る心理的メカニズムを説明する部分は面白い。

    これはリベラルが保守を理解するための本。
    その逆ではない。リベラルなつもりだった著者が自分の実感にもとづいて書いた本だから。
    ゆえに、双方向の橋渡しをするには力不足かな。
    保守がこれを読んでも「これだからリベラル(笑)は」にしかならないと思う。

    リベラルの「道徳」は精製されているから、他の「道徳」の雑味を理解できない。ってのはなるほど。
    論理に忠実であろうとすると潔癖かつ排他的になりやすいかも。


    後ろに行くにつれて著者の主張が目立ってくる。
    特に宗教と政治は著者の「道徳」に引きずられている。
    「道徳は人を結びつけるが盲目にもする」という本だから、著者自身の無自覚な偏りが目についてしまう。
    元リベラルを自称するにもかかわらず、保守もリベラルも「彼ら」としてしか語らない、ひとごと全開な姿勢が気に入らない。


    読みたい内容ではあるけれど読むのに時間がかかった。
    文化もしくは価値観の違いにつまづき、不適切な比喩と論理の飛躍に疑問を感じる。そのうえ訳が悪文。
    いろんな意味で読みにくい。

    先行研究の引用も半端だから、対照群はどうなのかとか因果は本当にそっちかとか、納得できない部分が多い。
    この調査に私が答えたら、私の意図とは真逆の解釈をされてしまうだろうと思うところがいくつもあった。

    リベラルは/哲学者はこう主張するが云々というフレーズがよく出てくるが、誰の主張なのか書かれていない部分が多い。こんなに注だらけの本なのに。
    こういうのも、仮想敵を肥大させるパターンじゃないのかなあ。

    書き方がわかりにくすぎる。
    この本を読むと「疑念がわくのは信じたくないがゆえのバイアス」だろうかと考えてしまうけれど、私はこの内容を信じたい派だ。
    内容以外のところで頭を使わなければいけないので疲れる。

    性的「嗜好」という訳語はいまどきどうなの。


    リベラルが保守を知ろうとする本なら
    『社会運動の戸惑い』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4326653779のほうがしっくりくる。

    追記
    『一冊で知るキリスト教』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/441531550Xを読んだらちょっとわかった気がする。
    自由を拒むようにみえる保守(カトリック)は、広い道徳(聖人信仰など)を包摂しているのに対し、論理(聖書)を重んじるリベラル(プロテスタント)はひとつの価値観(三位一体)を絶対視する。
    この本で描かれる「リベラルの狭い道徳」は、「プロテスタントの一神教」と考えたほうが私には納得できる。
    私の考えるリベラルは著者の描くリベラルよりも多神教的だから、書いてある感覚がしっくりこなかったみたいだ。

  • 「幸せ仮説」が、すごく面白かったジョナサン・ハイトの2冊目。(多分。。。少なくとも翻訳は2冊目)

    前回は、幸福系の話題だったので、いわゆるポジティブ心理学的な人かな、と思ったのだが、道徳心理学がメインのよう。あと、進化心理学みたいなところにいて、ポジティブ心理学とは関係あるものの、やや関心の向きは違いそうですね。

    本書は、そういうハイトの専門領域である「道徳」に関するところで、かつ政治的な意見がどうして対立して、そこをなかなか乗り越えることができないのか、心理学的な構造を解明する。

    そんなに難しい内容ではないし、面白いのではあるが、なかなか読み進まず、読んでは止めを繰り返して、1年以上、読了にはかかってしまったかな?

    なので、正確な内容はあまり頭に入っていないのだが、リベラルな多元主義的な人が、保守的な人が大切にしている価値を理解していない、という構図はとてもよくわかったし、自分的にも痛いところだなと思った。

    先日読んだ、ウィルバーの「万物の理論」でしつこく書いてあった多元論の問題性と繋がって、納得の度合いがたかまっった。

  • リベラル、左派的な見解かなぜ日本人に嫌われるのか知りたくて読んだ。道徳心理学で一定程度分析できるけど、これだけでは足りないように思う。アメリカの大衆についての研究だからかもしれないが、日本の左派には独特のエリート主義、大衆蔑視、客観性の欠如があると思う。参考にはなったが、すごく役に立ったわけではない。
    他方で、人間の政治的な選択か直感の先行するものであることなど、今後の自分の活動に有効な分析も多かった。
    これを生かして、自分なりのやり方を見つけたい。

  • 内容は豊かで結構分厚いのにサクサクと読めてしまい、しかも感銘を受けてしまった。書き方も上手い。内容は次のようにまとめられると思う。

    ・道徳的な判断は思考ではなく直観に基づく。思考は後からそれを合理化するのに長けており、自分は合理化しているだけだということにしばしば気がつかない。
    ・直観は、自己反省よりも、他者からの説得や共感によって変わりうる。
    ・危害の軽減・公正の追求・抑圧からの自由だけが道徳的判断に関わるのではなく、ほかにも権威・忠誠・神聖などの感覚が道徳的判断に関わってくる。それは先天的なもの(もちろん育ちにも影響を受けるが、どう育つかにも関わるような)である。
    ・前者三つは個人として人間を理解し集団を派生的なものと見なすことで重要さが導かれるが、逆に、集団の必要性から考えるならば、権威・忠誠・神聖などの感覚にも合理性を見出すことができる。
    ・われわれは両方をバランス良く取捨選択しなければならない。

    まさに自分が個人主義的な考え方に染まりきっていたので、それ以外の考え方の合理性をエビデンスに基づいて説明されることには、目を開かれる思いであった。
    あと、どうでもいいのだが、ヒュームとかデュルケームとかの人文知の引き方が、リベラルな人たちの直観を逆撫でしないようになっているのも上手かった。

  • 長くなるのでこっちに書いた
    http://magicant.txt-nifty.com/main/2017/09/the-righteous-m.html

  • ・心は<乗り手(理性にコントロールされたプロセス)>と<象(自動的なプロセス)>という二つの部分に分かれる。<乗り手>は、<象>に仕えるために進化した。
    ・誰かが道徳的に唖然としているところを観察すれば、<乗り手>が<象>に仕えている様子を確認できる。何が正しく、何が間違っているのかについて直観を得たあとで、その感覚を正当化しようとするのだ。たとえ召使い(思考)が正当化に失敗しても、主人(直観)は判断を変えようとしない。
    ・社会的直観モデルは、ヒュームのモデルから出発して、さらに社会関係を考慮に入れる。道徳的な思考は、友人を獲得したり、人々に影響を与えようとしたりする、生涯を通じての格闘の一部と見なせる。つまり「まず直観、それから戦略的な思考」である。道徳的な思考を、真理と追求するために自分ひとりでする行為としてとらえる見方は間違っている。
    ・したがって、道徳や政治に関して、誰かの考えを変えたければ、まず<象>に語りかけるべきである。直観に反することを信じさせようとしても、その人は全力でそれを回避しよう(あなたの論拠を疑う理由を見つけよう)とするだろう。この回避の試みは、ほぼどんな場合でも成功する。p97

    この効果は「感情プライミング」と呼ばれている。というのも、最初の単語が引き金となって、ある一定の方向に傾くよう、その人の心を準備させる感情の突発が引き起こされるからだ。p107

    覚醒を引き起こす文化心理学の力に関して、シュウィーダーは1991年に次のように述べている。
    「私たちは他人のものの見方をほんとうに理解するとき、自分の理性の内部に秘められた潜在的な可能性の認識に至り、...そのような見方が、初めて、あるいは再び重要なものとして立ち現れ始める。私たちの生きる世界に、均質的な「背景」などない。私たちは生まれつき多様なのだ。(Shweder, R. A "Thinking Through Cultures: Expeditions in Cultural Psychology", 5p)

    道徳心理学の歴史を通してもっとも簡潔で先見の明に富んだ文章で、ダーウィンは道徳の進化の起源について次のように述べている。
    「最終的に、私たちの道徳的な感覚や良心は、高度に複雑化した感情の形態をとる。社会的直観に端を発し、おもに他の人々の称賛によって導かれ、理性、利己心、そしてやがては深い宗教感情に支配され、教育や習慣によって確たるものになる。」p305

    さて、私の提起する道徳システムの定義が、次のようになる。
    :道徳システムとは、一連の価値観、美徳、規範、実践、アイデンティティ、制度、テクノロジー、そして進化のプロセスを通して獲得された心理的なメカニズムが連動し、利己主義を抑制、もしくは統制して、協力的な社会の構築を可能にするものである。p416-417

    イデオロギーに関するもっとも基本的な問いに「現行の秩序を維持するのか、それとも変えるのか?」というものがある。1789年、フランス革命時の国民議会で、現状維持を支持する者は部屋の右側に、変革を求める者は左側に座った。それ以来、右と左は、保守主義とリベラルを意味するようになった。p426

  • 全米でベストセラーになった道徳心理学の名著、「なぜ政治的な主張が異なる人々はこうもわかり合えないのか」を科学的見地から(本書にも断りがある通り)記述している。実験、アンケート、先行研究の引用を基に、直感を肯定するための理性、6つの道徳基盤、集団と一体となるミツバチスイッチ、宗教の合理性などなどの概念を提唱し、最後に道徳(道徳資本)について機能論的な定義を与えている。

    道徳といったふわふわしたものに対して科学的ににじり寄ろうとする姿勢、構造主義的な書きっぷりが非常に印象的で好印象だった。文句なしに★5つ

  • 人がどのようにどのように道徳を形成し、それによりどのように振る舞うのかについて分析した本です。

    第1部では、通常理性は直感を後追いする存在であり、道徳は直感に属することを指摘しています。続く第2部では、道徳の要素を<ケア><自由><公正><忠誠><権威><神聖>の6つに分析し、主にリベラルは前半3つ(対等な個人に対する態度)を重視するのに対し、保守主義は後半3つ(超個人や非対等な個人に対する態度)を含めた6つ全てを重視する傾向があるとします。第3部では、そもそも個人が自らの道徳に従って行動する潜在的な動機は自己を含む集団が他の集団に対抗するところにあり、そのために時に人は(自らの持つ道徳の内容に関わらず)亀のように引きこもってしまい他の道徳を持つ集団に対し理解を閉ざしてしまうことを指摘します。

    その上での結論としては、どちらかが絶対優位でない以上、お互いがお互いのことを分かりあわなければならない、という一見平凡な主張が得られます。とはいえ、本書で指摘されたように、「自分に限っては、理性で相手の主張を正しく理解した上で自分の主張を支持している」と軽々しく思うことは多くの場合早計であることを肝に命じた上で、それでは相手はどのような信念に立っているのだろうかと考える道具として第2部の道徳の6基盤を使うならば、ここにこの本の意義があります。

    ここで扱われる道徳は、結び付ける対象が、宗教、党派、企業その他ありとあらゆる集団に及ぶものであり、倫理学、文化人類学、政治哲学のみならず経営論やマーケティング論等様々な領域・職域において心得るべきものであるため、極めて読むべきである本です。

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