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本 ・本 (640ページ) / ISBN・EAN: 9784314011266
作品紹介・あらすじ
暴力の生物学的基盤の解明を目指す新たな学問分野・神経犯罪学を確立した著者が、脳、遺伝、栄養状態等の生物学的要因と、生育環境や貧困等の社会的要因、およびその相互作用から、いかに暴力的な性格が形成されるかを解説する。また、最新の研究成果の実用化に際して直面する倫理的・法的問題を指摘し、より暴力の少ない未来の実現へ、具体策を提言する。
感想・レビュー・書評
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非常に面白かった。タイトル通りの内容の本であり、様々な調査や統計の結果が掲載されている。暴力、犯罪行為のバックグラントとしての、脳の機能、状態…とはいえ、人間の事であるゆえ、とかく要因というのは複合的であり、相関関係と因果関係というのは見誤ってはいけないのだと、定期的に語られている。今は世の中、普通の人でも脳科学という言葉を使い、メディアは少々卑俗化した脳科学ネタをはびこらせているが、人の行いそのものを、脳の機能、社会的背景、心理学等々、複合的に読み解いていこうという姿勢がもっとこの先大切になっていくのではないだろうか。人は単純化した理解が好きである。それは危険なのだろう。そして、人間の事が解れば解るほど、優生学的な目線が気になるのも、人の世か。これを読了した後、サリー・サテル「その脳科学にご用心」などなかなか面白い読書になる気がします。
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ロンブローゾへの回帰という感想もあるかもしれないが、現在の犯罪者理解の最先端は脳神経科学を抜きには語れない。
学者が書いたものでもあり、やや小難しい表現もあるが、基本的には初学者でも読める。
犯罪者の自己責任などという言葉が空虚に思えるようになりますよ。 -
なぜ暴力をふるうのか、犯罪を犯すのか。本書は先ず、直感に反する生物的要因を明らかにする。更に暴力を生む生物学的変化を生むことに社会的要因が強く関与することを解説する。生物学的要因とはすなわち犯罪者予備軍を認知するための技術を人類は手にしているということであり、未然に防ぐことが可能となること、また犯罪者は治療可能であることを示している。社会はこの事とどのように付き合って行くべきか、本書最後の主題であり投げ掛けである。白黒つく命題ではなく程度を測りながら少しずつ法制度に組み込んでいくのだろう。誰しもが被害者、加害者になる可能性のある問題。日本でも暴力事件の際にこの観点からの考察が増えて議論を促して欲しいものだ。
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めちゃくちゃおもしろかった。
2回も読んでいっぱいノートとっちゃった。大学図書館で借りたけど,買ってもいいかもって思うぐらい。 -
生理学的要因と、社会的要因が重なると、暴力的人間になり易いという研究は、恐らく正しいものと思う。これにある程度積極的に関与することで、暴力犯罪が減らせられることも、多分正しいのであろう。著者も言っている通り、どこまでの介入が許されるのか、非常に難しい問題だ!日本の司法は、報復主義に押され、厳罰化の方向に進んでいる。この流れの行き着く先は、・・・とても心配だ。
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シリアルキラーやサイコパスといった暴力犯罪者は遺伝や脳損傷などの生物学的要因と劣悪な生育環境などの社会的要因の相互作用によって生み出される。神経犯罪学者の著者は、法廷にMRI画像を提出する活動もされています。「クリミナルマインド」や「CSI科学捜査班」を見ているので、思わず手に取ってしまいましたが、各章の冒頭に記された凶悪殺人犯の実例がとても怖かったです。でも、子育てに関して注意すべきことなど、日常生活で役立ちそうなことも書かれていました。
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● 2025年3月7日、母と新宿 紀伊国屋にあった。純粋に面白そう。色んなタイプの殺人やらサイコパスとかのケースが書いてあるっぽい。
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天才と遺伝が無関係という本を読んだ後に、暴力は遺伝が関連するという切替をせねばならなかった。「うまくやるサイコパス」と「うまくできないサイコパス」の区分など、脳のスキャンやデータからよく調べていて面白い。こういう研究していると暴漢に襲われる可能性が増えるという葛藤。
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(エビデンスを示してても)ほんとかよwちゅーのも多々あるし、くそほど差別を助長しそうな内容だがしかし、はっきり言い切るのが潔くて好き
道徳ジレンマの二者択一の問いって全然迷わんし良心の呵責とかひとつも感じないんだが
え、男を線路に突き落とさないの逆になんで?
泣き出した赤ちゃん殺さないのなんで?
選べないのはただ決断力がないだけやろ
海産物の消費と殺人発生率の関係まじかよ
日本やば
あんまり優等生すぎる
言ってることはわかるがしかし死刑は必要、プシコは足枷に鎖でいいと思う
報復を是とするのがダークサイドとは思わん
訳者の高橋洋さん推せるわ -
SDGs|目標16 平和と公正をすべての人に|
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/63707 -
☆だからと言って、罪がなくなるわけでもない。
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心理
犯罪 -
暴力が起こる要因と予防について、多角的な視野から切り込む一冊。
優生学的であるとの理由から、犯罪者に対する生物学的な研究は停滞していました。
しかし、社会学的なアプローチに限界が見え始めた今、再燃の研究分野となります。
後半にはSF物語「ロンブローゾ・プログラム」が語られますが、社会と学問の認識が収斂された未来では夢物語と言えなくなるだろうと思いました。 -
原題:The Anatomy of Violence: The Biological Roots of Crime
著者:Adrian Raine
訳者:高橋洋
感想:際どいテーマ。解釈をひとつ誤ると誤認や差別につながるため、この神経犯罪学の実践・利用には慎重さが必須。
【目次】
題辞 [002]
献辞 [003]
目次 [004-007]
凡例 [008]
はじめに [009-015]
序章 016
第1章 本能――いかに暴力は進化したか 027
ナンバーワンを求めて――騙し合い/さまざまな文化のもとでのサィコバス/自分の子どもを殺す/自分の妻をレイプする/男は戦士、女は心配性
第2章 悪の種子――犯罪の遺伝的基盤 063
二重のトラブル/同じ豆を別のサヤに/だが環境の影響は?/養子の研究――ランドリガンの事例に戻る/ニキビとXYY/卑劣なモノアミン/戦士の遺伝子、再び/「瞬間湯沸かし器」ジミー ――キレやすい脳の化学/始まりの終わり
第3章 殺人にはやる心――暴力犯罪者の脳はいかに機能不全を起こすか 099
殺人者の脳/バスタマンテの壊れた頭――モンテの証言/連続殺人犯の脳/反応的攻撃性と先攻的攻撃性/辺縁系の活性化に対する前頭前皮質のコントロール/「殺人にはやる心」の機能的神経解剖学/配偶者虐待の新たな言い訳?/嘘をつく脳/道徳的な脳と反社会的な脳/ジョリー・ジェーンのなまめかしい脳/ジョリー・ジェーンの脳の何が問題だったのか?/脳の総合的な理解に向けて
第4章 冷血――自律神経系 157
有害な心臓/刺激を求めて暴力を振るう/幼少期の共通の性質、成人後の多様性/良心が犯罪を抑制する/今日は恐れを知らぬ乳児、明日は残忍な暴漢/上首尾なサイコパス/血がたぎる連続殺人犯/恐怖心のなさ、それとも勇気?
第5章 壊れた脳――暴力の神経解剖学 207
脳をベーコンのようにスライスする/フィニアス・ゲージの奇怪な症例/前頭前皮質のさらなる探究/男性の脳――犯罪者の心/留意すべき三つの臨床例/スペインのフィニアス・ゲージ/ユタ州のロシアンルーレット少年/フィラデルフィアのクロスボウ男/生まれつきのボクサー?/恐れを知らないアーモンド/パトロールする海馬/報酬を手にする/ピノキオの鼻と嘘をつく脳/優秀な脳を持つホワイトカラー犯罪者
第6章 ナチュラル・ボーン・キラーズ――胎児期、周産期の影響 275
公衆衛生の問題としての暴力/生まれつきのワル/カインのしるし/掌紋から指へ/妊娠中の喫煙/妊娠中のアルコール摂取
第7章 暴力のレシピ――栄養不良、金属、メンタルヘルス 309
オメガ3と暴力――魚の話/強力なミクロ栄養素/トゥインキー、ミルク、スィーツ/重金属は重犯罪者を生む/精神疾患は卑劣さを生む/レナード・レイクの狂気
第8章 バイオソーシャルなジグソーパズル――各ピースをつなぎ合わせる 361
バイオソーシャルな共謀――相互作用の影響/社会的プッシュ/遺伝子から脳、そして暴力へ/社会から脳、そして暴力へ/あらゆる悪の母――母性剥奪とエビシェネティクス/脳の各部位を結びつける
第9章 犯罪を治療する――生物学的介入 407
復習/決して早すぎることはない/決して遅すぎることはない/やつらの首をちょん切れ!/714便――タンタンの冒険/ケーキを食べれば?/脳を変える心
第10章 裁かれる脳――法的な意味 451
自由意志はどの程度自由なのか?/慈悲か正義か――ページは死刑に処せられるべきか?/報復による正義/ページからオプト氏に戻る
第11章 未来――神経犯罪学は私たちをどこへ導くのか? 489
日陰から日なたへ――臨床障害としての暴力犯罪/ロンブローゾ・プログラム/全国子ども選別プログラム/マイノリティ・リポート/実践的な問い――それは起こり得るのか?/神経犯罪学をめぐる倫理――それは起こるべきなのか?/まとめ――砂に頭をうずめるダチョウになるのか
訳者あとがき(二〇一五年一月 高橋洋) [558-563]
原注 [565-627]
索引 [628-635] -
毎日書評、2015-04-05