悪癖の科学――その隠れた効用をめぐる実験

  • 紀伊國屋書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314011419

作品紹介・あらすじ

1983年、アメリカ泌尿器科学会の年次総会でのこと。
当時60歳のG. S. ブリンドリー教授の演題は「勃起不全の血管作動性療法」だった。
ペニスに薬剤を注入する新たな治療法を講演する予定だったブリンドリー教授は、
演壇から舞台前方に歩み寄ってパンツを下ろし、自身の研究結果として、
「腫脹の程度をじかに確認できる」機会を提供しようとしたのだ。

ところ変わってイギリスの某大学、とある研究室からは、
「ファック、ファック、ファック……」という声が聞こえてくる。
これは本書の著者リチャード・スティーヴンズの研究室で、
汚い罵り言葉が痛みへの耐性を高めることを実験していたのだった。

人間は未だ謎の宝庫だ。
翌朝が大事な会議でも深酒し、セックスに心をかきみだされる。
刺激を求めてバンジージャンプをする。「クソ野郎!」と叫んで高速道路をかっ飛ばす。
――人間は、なぜ世間が眉をひそめるようなことをついやってしまうのか? 
――わからない……なぜなのか……知りたければ実験だ!

世の中の謎を解こうと、世界中の研究者たちが日夜実験に没頭している。
イカのセックスを観察したり、ラットの勃起回数を計測したり、自らスカイダイビングまでする。
主流科学の陰にひっそりと咲くちょっと変わった科学研究に着目した心理学者が、
一部の悪癖には隠れた効用があることを示す研究成果の数々をユーモラスに紹介する。

感想・レビュー・書評

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  • いけないとわかっていながらやめられない行為「悪癖」についての、そのリスクはもちろん、隠れた効用を科学的に探る本。

    セックス、飲酒、悪態、高速運転、恋愛、強いストレス、サボり、臨死体験等々、これって悪癖‽と思われるものまで網羅し、科学的に分析してある。
    たとえば、道路でスピードを出し過ぎる事には、退屈なドライブによる白昼夢を予防する効果がある等、眉をしかめられるような行為にも有意性があることを検証する。

    こんなこと誰が考えつくの?と思われるような実験のあれこれがおもしろい。

    著者は、「悪態が痛みをやわらげる」研究でイグ・ノーベル賞を、科学研究と社会の橋渡しを支援するウエルカム・トラスト・サイエンス・ライティング賞を受賞していて、軽快な文章は読みやすい。
    各章のはじめの漫画もシュールで楽しい。

  • セックス、酒、恋…心理学的に解析

    クーリッジ効果
    交尾を繰り返して消耗し今までのメスで無反応になったオスも、新しいメスの登場でがせん蘇る
    新しいメスをあてがわれたオスは86%射精、古いメスが相手だと33%しか射精しなかった
    交尾相手がたくさんいたほうが、進化と種の存続の観点からリスク分散できる

  • 「悪癖の科学」とはいうけど、セックスや酒がそんなに悪癖だとは思わないし、適度にたしなむのはかえって健康によさそうな気もするのだが。
    取り上げている「悪癖」は、セックス、酒、悪態(汚い言葉)、車のスピード、恋(不倫を含む)、ストレス、さぼり、臨死体験、といろいろ。
    それぞれ、悪い部分はもちろん、いい部分にも光をあてているので、なかなか興味深い。

  • セックス、悪態、危険運転などの悪癖の隠れた利点を科学的に説明する…とあるけど、中身はこじつけっぽいのも沢山ある。あとがきによるとそれが心理学って分野なもんらしい。そう分かっててやってるならしょうがない。

  • セクハラ、パワハラをまるで既得権のごとく常態化させる権力者たち。下手すると死ぬと分かっていながらXゲームにのめりこむ若者たち。悪癖としては少し解釈を広げ過ぎかもしれないが、「わかっちゃいるけどやめられない」という点では同じ(わかってない人も中にはいるかもしれないが)。その中で効用を見出すというのは、いくら科学の観点からとはいえ、無理がありすぎる。なにせ悪癖は理屈じゃないから。

  • 内容が思い出せないのでもっかい読んでみたい本。

  • 「悪癖」という事象そのものについての科学的見解が見られると思ったが、「飲酒」「愚痴」など、個別具体の悪癖を科学的に擁護するという内容で、期待とは違った。内容自体はそれなりに面白かったが、このようなゆるめの科学の本全てにつきまとう、「再現性の怪しさ」はとても感じた。鵜呑みには決してできない。学会で自らの勃起した陰茎をまろびだした教授の話は面白かった。

  • 軽い心理学読み物。悪癖とされることにも良い側面がある(そういうことを報告する論文があるよ)ことを紹介。何でも過ぎたるは及ばざるがごとし,薬と毒のような関係か。著者は2010年に「悪態をつくことにより苦痛を緩和する」研究でイグノーベル賞を受賞している。扱われるトピックは,セックス,酒,悪態をつく(汚い言葉),車のスピード出し過ぎ,恋愛,ストレス,退屈,死にかけること。下世話だけど誰もが体験すること。まぁ,ものの見方だな。いいとされていることも悪い面があるというテーマでも書けるな。

  • 社会通念上、「人の愚かさ」として片づけられがちな行為の機能について探求する本。

    特に心理学的な考察が多く、解釈にはファジーさが残るが、高潔な思い込みで運用されがちな昨今の社会通念に関する疑問を持ち始めるのに本書は役に立つだろう。

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著者プロフィール

【著者】リチャード・スティーヴンズ(Richard Stephens)
イギリスのキール大学心理学上級講師。2010年に「悪態をつくことにより苦痛を緩和する」研究でイグ・ ノーベル賞を受賞。その他「二日酔い」「悪態語」についてなど、ユニークな研究を発表している。2014年、ウェルカム・トラスト財団のサイエンス・ライティング賞受賞。

「2016年 『悪癖の科学――その隠れた効用をめぐる実験』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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