プリズン・ブック・クラブ--コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年

  • 紀伊國屋書店
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レビュー : 84
  • Amazon.co.jp ・本 (445ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314011426

作品紹介・あらすじ

重罪犯を収容するカナダのコリンズ・ベイ刑務所で定期的に開かれる読書会。
『怒りの葡萄』『またの名をグレイス』…刑務所内での本をかこんでのやりとりを通して
囚人たちは読書の楽しみを知り、自らの喪失感や怒り、罪の意識について吐露し、
人種や宗教の壁を越え、異なる意見の持ち主の話にも耳を傾けるようになった。
1年間ボランティアとして運営に関わったジャーナリストが見た、囚人たちの変化とは。
胸に迫るノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 刑務所で読書会。読書だけならともかく、「会」が付くことの違和感。
    受刑者が他人の意見に耳を傾けたり共感したり出来るものだろうか。
    著者はカナダ在住の女性ジャーナリスト。
    「刑務所読書会支援の会」で活動する友人のキャロルから、男子刑務所で月イチで開かれている読書会に誘われるのが、本書のオープニングだ。
    8年前にロンドンで強盗に襲われたトラウマから抜け出せない著者は「絶対無理」と思う。
    しかし、恐怖心が好奇心に変わり、ジャーナリストとしての創作意欲もわいてくる。
    何よりも判事だった亡父の言葉が、彼女の行動の原動力になった。
    「人の善を信じれば、相手は必ず答えてくれるものだよ」

    これは、著者が2011年から2012年にかけて2か所の刑務所読書会でボランティアをつとめた経験を書いた、刺激的なノンフィクションだ。
    読書会の場面は実況中継さながらの臨場感があり、まるでその場に居合わせたかのような気持ちになる。課題本にはフィクションもあればノンフィクションも。
    作品のあらすじや位置づけはもとより、登場人物のどんな場面や言葉にどう感じたか、白熱する議論の現場を丁寧に再現している。
    そこが、本書の最大の読みどころだ。
    収監者たちの言葉は驚くほど聡明で切実で、彼ら自身の人生がにじみ出ている。

    もちろん、本を読んだ程度で人間性に急激な変化があるわけではない。
    しかし、「本を一冊読むたびに、自分の中の窓が開く感じなんだな。どの物語にもそれぞれきびしい状況が描かれているから、それを読むと自分の人生が細かいところまではっきり見えてくる。そんな風に、これまで読んだ本全部が今の自分をつくってくれたし、人生の見方も教えてくれたんだ」 
    「刑務所は受刑者同士が孤立している場所だというのに、 この読書会でなら、人種や民族や暴力団の派閥の壁をやすやすと越えられるんだ」
    ・・そう話す彼らは、麻薬よりも読書会に夢中になっていく。

    軽警備のビーバークリーク刑務所に移った受刑者は新たに読書会を立ち上げている。
    仮釈放の身となった後でも、社会復帰施設で読書会を立ち上げてもいるのだ。
    著者も、読書会のたびに深い思索を繰り返し、彼らとの距離にも変化がうまれ、いつしか深い信頼で結ばれていく。
    「あんたのようなきちんとした人が、何で俺たちみたいなワルと一緒にいたいんだ?」
    始めて参加した日にそう言われた著者は、彼らが自身の経験に打ち勝つために、読書会はどこまで助けになれるのかと自らに問い続ける。
    やがてクリスマスの日、彼女は気づく。
    ここに来たのは私たちの人生をつなぐ目に見えない糸に触れるためだと。
    彼女の真摯な姿勢と受刑者たちの切実さに、読みながら何度も熱いものがこみあげる。
    まさに父親の言葉は正しかったのだ。

    まるで消耗品のように次々に本を読むのではなく、本と対話するように向き合いたい。
    常々そう願ってきた私には、胸の扉を強くノックされるような感覚を覚える一冊だった。
    他者の読み方に対して寛容であれば、多彩なコミュニケーションも可能になるということ。
    又、エリック・ホッファーが季節労働者として暮らした意味を本書で再確認できた思いだ。
    その時々を切実に生きるひとびとに、心を寄せたのだろう。
    そこにこそ、真の学びがあるということだから。
    著者もまた、過去に参加した女性だけの読書会よりも、刑務所読書会に参加したいと最後に述べている。「あの場では、彼ら自身の人生やわたしの人生を変えるようなことさえ起こりうるからだ。彼らの言葉の少なくともひとつは、これから先もずっとわたしとともにあるに違いない」
    ひとりでも多くの方に読まれますように。

    • 夜型さん
      実は、ユーリー教授とキートンのお父さんのセリフが一致してるんですよね。
      「学問はどこでも出来る。便所の中でもな」
      「人間はどんな所でも学...
      実は、ユーリー教授とキートンのお父さんのセリフが一致してるんですよね。
      「学問はどこでも出来る。便所の中でもな」
      「人間はどんな所でも学ぶことができる。知りたいという心さえあれば」

      まあでも、権威主義が蔓延る中で、ユーリー教授や中村先生のような人は少ないし、異端だと思います。中村先生は権威主義を嫌っていたそうです。東方学院では、学びたいという心さえあれば、どんな人でも受け入れたそうです。

      「志」を持つ友や師がいたら豊かでしょうね。。

      ついぞ根治は出来ませんでした……笑
      本人が自覚して良くしようと努力しませんから。もう、開き直ってふんぞり返っています。
      仏も匙を投げることでしょうね……笑
      2020/07/23
    • nejidonさん
      夜型さん、再訪して下さりありがとうございます!
      ああ、そのセリフもいいですよね。
      太一さんにはどうしても欠けている部分があって、それがお...
      夜型さん、再訪して下さりありがとうございます!
      ああ、そのセリフもいいですよね。
      太一さんにはどうしても欠けている部分があって、それがお父さんにはあるようです。
      東方学院のHPを見てみました。いいですね、ここ。私も入りたい。今そう思っています。

      志が同じかと問われたら違うのだろうと思いますが、私にとって夜型さんは大切な友だちです。
      ブクログでしか知りえない方だし、おこがましいと叱られることでしょう。
      それでも矢張り大切な方であることは確かです。
      欲をかきすぎですかね。すみません。
      都合の良いところだけ取ったらスルーしてくださいね。

      2020/07/23
    • 夜型さん
      太一は俊敏で生真面目なひとなんですが、お父さんのようなあのどっしりと構えてぼんやりとするようなことが出来ないんですよね。正反対ですね。
      ど...
      太一は俊敏で生真面目なひとなんですが、お父さんのようなあのどっしりと構えてぼんやりとするようなことが出来ないんですよね。正反対ですね。
      どちらかといえば、僕は性格的には太一よりかもしれません。手先は起用で頭もよく働くのに、ドジでそそっかしいんですよね笑。

      東方学院でいつか僕も学びたいです。いまはコロナウイルスでお休みですが。
      でも、いつか……!

      じぶんにはもったいない言葉、嬉しく頂戴しましたよ。
      2020/07/23
  • カナダの、刑務所での受刑者たちの読書会でボランティアをつとめた、ジャーナリストの女性が書いたノンフィクション。すごくおもしろかった。
    とくに派手な事件とかできごとが起きるわけじゃなくて、淡々と、読書会を主催して、本を選んで、受刑者たちと話して感想をきき、読書会の舵とりをして、ときには受刑者とどういう犯罪を犯したのかとか、家族のこととか個人的な会話をしたりっていう話なんだけど、受刑者の日々の暮らしがうかがえるのも興味深かったし、彼らの(そういえばみんな男性受刑者だった。女性受刑者の読書会も知りたい)感想や意見もとても深くて鋭かったり楽しかったり。それに対する著者の受け止め方や考え方が書かれているのもよくて。著者は、強盗にあった経験がトラウマになっているのだけれど、恐怖や不安を感じながら受刑者と向き合って友達のようになる人も出てきたり。著者と、彼女を読書会に誘った友人とのやりとりやふだんの暮らしがわかったりするのも楽しい。カナダのアマースト島の自然の描写もよかった。
    なにより、本を読むのはいいことなのだ、と思えるところがすばらしい。「読書愛」が伝わってくる。
    この読書会で扱われたのと同じ本を読みたくなる。
    読書会というものに憧れを抱くようにすらなったかも。

    訳者あとがきの、読書は自分自身の人生に引き寄せて考えなければあまり意味がない、というのに共感。わたしもそう思う。読書会は、作品を語ることが自分たちの人生を語ることにつながるからおもしろい、とつながっていて、ますます読書会にあこがれる。。。
    だれかと本の話をしたくなる。。。

  • まず中身ではなく装丁が好きです。雰囲気があって押しつけがましくなく、イラストもとっても素敵。本棚に並べたいなと思いました。
    カナダの刑務所での読書会の模様を1年に渡ってリポートしています。
    服役しているので、当たり前ですが全員犯罪者です。
    実際にリポートしている筆者も最初腰が引けていますが、読書好きの親近感は大きいので一気に距離が近づきます。
    みんなで同じ本を読んでそれについて語り合う。読書会自体行ったことありませんが憧れがあります。
    しかも、本を切実に必要としている受刑者との語り合いは、とても身が入る切実なもので、本というものの本質というか、何故必要なのかという問いにストレートに答える内容になっていると思います。
    その本の登場人物やシチュエーションに自分を置き換えるイマジネーションを養うのは、本が何よりも最高だし、自分の中に積みあがるものが自信にもなると思います。

  • 本書は、カナダで雑誌記者をしている著者が友人から誘われ、刑務所の読書会に一年間ボランティアとして参加した記録である。

    著者は、かつて強盗に襲われ、トラウマに苦しんだ経験があり、読書会に誘われたものの最初は刑務所に足を踏み入れることをためらう。
    が、自身も本が大好きで、受刑者たちがどんな本を読み、どんな話し合いをしているのか、実際に見てみたいという好奇心がわいてくる。
    そして、読書会の経験をジャーナリストとして記録しようと決断し、月に一度の読書会に参加し始める……


    刑務所の中も、外も、関係なく、世界中どこの誰とも、ぼくたちは目に見えない糸で繋がっていて、同じ本を読み、語り合うことで、その糸に触れることができる。そんなことを感じられました。

    著者を読書会に招いたのは「刑務所読書会支援の会」の設立者であるキャロルというおばさんなんだけどこの方のエネルギーがハンパない。
    敬虔なクリスチャンで、本を読めばどんな本にも「人間の素晴らしさ」的なものを見出して、それを読書会で共有しようとする。
    お節介なおばさんなんだけど、自分の思想を押し付けようとするわけではなくて、うまくわかりあえなかったときは、終わってから「選書が悪かったわ」と反省したりもする。「彼らの置かれている環境を、私は想像できていなかったわ」と。
    彼女はただ充実した読書会がしたいだけなんだ。それが刑務所の中と外をつなぐ活動になればという信念で動いている。
    最初はうぜえおばさんだなと思ったけどあまりにも一貫しているので読み終わる頃にはその生き様に惚れてしまった。
    いい本でした。

    本書でみんなが読んでいた本を、自分も読んでみたくなったし、やっぱ読書会したいなあという気持ちになりました。
    → 参考 https://www.bookclubsforinmates.com/what-we-are-reading/

  • ノンフィクション。刑務所内での読書会の立ち上げを手伝ったジャーナリストによる手記。読書会のメンバーは読書会プロジェクトを立ち上げたキャロルと、その友人のアン、あとは刑務所内の受刑者がメイン。時には本の著者の参加もあり。

    取り上げられている作品が名著ばかりですごいんだけど、正直言うと背伸びしすぎた。私にはハードルが高すぎて読了するのに苦労しました。この本を読んで読んでみたいと思った本は、地元の図書館になかったりして…。そういう本が数冊あった。

    刑務所内での読書会の様子は救いも感じるけど、それ以上に息がつまりそうなほどの苦しさがあった。よかったと思えることは、そんな環境の中で読書を通じて情報の共有や共感ができたり、同じ本を読んでいるにもかかわらずまったく違う意見があがるところ。

    終盤では出所した元受刑者と会って、本の情報を提供したり近況を知ることができたりしてホッとした。出所してもまた事件を起こして刑務所に戻ってしまう人もいたりして複雑な気持ちになった。

    戦争や差別、虐待の本も取り上げられていて思わずノートに抜粋メモしてしまった。(2カ月以上かけてやっと読んだ。めくってもめくっても進まなくて疲れてしまった…。少し気持ちと目を休ませい。つらかったな~。がんばった自分よ)

  • すばらしい内容なのにというか、だからかずいぶん時間がかかってしまった。

  • 図書館で。
    基本的にはすごいなぁと思うんですが時折入ってくる作者の上から目線な意見が少し気に障りました。「受刑者はこう思うだろう」とか「受刑者にも良い影響を与えるだろう」とか「受刑者の鋭い考えに驚かされた」とか。そうは書いてはありませんが低学歴な囚人にこんなことを考えられるなんて驚き!みたいな感じが透けて見えるというか…。後、ことさら強調される過去に強盗に襲われた事件も、そんな怖いならやらなきゃいいのに、と途中で思ってしまいました。それを押して善を為す自分がえらい、と主張したいのだろうか?偽善だろうがなんだろうが善を成しているだけ素直にすごいなぁ、えらいなと思うのだからそれだけで良いような気がするんですけどね。

    読書会を経験した事が無いので言うのもナンですが読書って結構個人的なものだと思うのでその本からどんな事を受け取るかは人によって違う、でいいと思うんですよね。主催者側があまり啓蒙的な意見を押してつけるのもどうなのか~と思うし、大きな声を上げる人が居るとそれにつられてしまいそう。でも読書会に参加しなければ絶対に手に取らなかっただろう本を読んだってのはなんだか良い出会いだな、と思いました。

    それにしても選書がえらい小難しい本ばかりでよく皆読んでるな~と思いました。良いじゃないですか、楽しいだけの本だって(笑)毎度毎度、教訓じみた話や説教されたら鼻につかないのかな~なんて思いました。自分だったらひねくれてるからケッとか言いそう。良い本は確かに人に薦めたくなりますが合う・合わないはあるし、読みたい時と読みたくない時があるものなぁ~ 
    個人的にSFでも古典はあるんだから星を継ぐものとか推薦してもいいのに、とか思いました。なんか…いわゆる文学的名著ばかりでうう~ン、という感じ。為になる本とか役に立つ本ばかりじゃ無くてもいいと思うんですよね。いいじゃん、火星の人を読んでアハハと笑って諦めないってのはすごいよね、で終わっても(笑)
    選書する方の年齢的な頭の堅さなのかなぁ。

    死にそうな拒食症を患った娘が居るなら彼女をサポートする活動に専念したっていいのに…とか、そう言う子供(まあ成人してるけど)が居るのにバカンスはダンナと二人で出かけるんだ…とかやっぱり外国は親子関係と言えどもベッタリじゃないんだなぁ…とも思いました。

  • タイトルにひかれて読みました。
    一人で読む本の向こうに
    人とのつながりが生まれていく「読書会」
    それぞれが抱えている問題も、
    ひと時忘れて本について語り合う時間の豊かさに、
    その場に立ち会えた作者をうらやましく思いました。
    紹介されていた本のどれもが興味深く
    是非読んでみたいです。

  • 刑務所内で開かれる読書会に、女性ジャーナリストが参加した一年の話。
    著者自身も犯罪被害者でPTSDに苦しむなか、友人から誘われたとはいえ、自ら受刑者達と関わろうとするのは、とても勇気のいる事だと思う。
    それでも参加するうちに、読書を通じて人間性や家族への思いに触れたりして、受刑者だけでなく著者も変化していく。

    辛い現実からひと時でも離れる為に本を読む人々が、今の自分の状況と似ていて共感した。

  • 著者が友人の誘いでカナダの刑務所での読書会に参加した記録。
    彼女にはイギリス在住中に自宅そばの路上で強盗に襲われたトラウマがあり、すぐには決心が出来ない。しかし友人の熱意と亡くなった父の「人の善を信じれば、相手は必ず応えてくれるものだよ」という言葉、そして何より自身の創作への欲求から参加する事にする。
    ここで読まれるたくさんの本と、受刑者たちの読みが深くて興味深い。取り上げられている本は間違いなく読みたくなる。

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著者プロフィール

【著者】アン・ウォームズリー (Ann Walmsley)
「グローブ&メール」「マクレアンズ」などに執筆するジャーナリスト。
全米雑誌賞を四度受賞したほか、カナダ・ビジネス・ジャーナリズム賞、および
インターナショナル・リージョナル・マガジン賞を二度受賞している。
初めて読書会を作ったのは九歳のとき。現在は家族とともにトロント在住。

「2016年 『プリズン・ブック・クラブ――コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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