マイクロバイオームの世界――あなたの中と表面と周りにいる何兆もの微生物たち

  • 紀伊國屋書店
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314011440

作品紹介・あらすじ

もはや細菌を知らずに人間は語れない――
近年、ゲノム解析技術の進歩により、細菌は皮膚や内臓など体の各部位に群集で生息し、特有の生態系を形成していることがわかった。マイクロバイオーム、あるいは細菌相と呼ばれるこの細菌の群集は、消化や免疫など宿主=人間の生存に不可欠な機能を提供し、宿主の遺伝子にも影響を与える。なかでも「腸内フローラ」として知られる腸内に棲む細菌相は、医療・美容方面への応用で近年注目を浴びている。

本書はマイクロバイオームについてしっかり学びたい人のための基本書であり、生命とは何かという根本的議論から、マイクロバイオームとは何か、それが人間の生活や健康にどう影響するのかまで、進化理論や細菌学の歴史をひもときながら、最新の分子生物学の成果を踏まえ、豊富なイラストと共にわかりやすく解説する。

感想・レビュー・書評

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  • 本書はマイクロバイオームの本としては難易度は高め。聞きなれない微生物の名前が頻出する。
    内容としては、生物史から入り、マイクロバイオームについて多面的に考察。
    訳者後書きでも勧められていたが、あなたの体は9割が細菌と重複する内容も多々あり、読む順番としては間違ってなかったかなと。
    やはり興味深いのは肥満や自閉症スペクトラムが微生物の影響を受けている可能性が高いと言う話。なんとか解明されて、治療出来ることを望む。
    その他気になったのは土を食べて腸内環境を劇的に変えようと言う話。今の積読本にあったはず…。

  • 微生物関連の本。第3章「私たちの体表やまわりに何がいるか?」は、興味深く読みました。

  • 近年のテクノロジーの進化によって明らかになった、「微生物」の最前線。細菌、古細菌の進化史から始まり、無数とも言える種類の微生物を検出、同定できるようになった最新のDNA検査技術、人間の皮膚や口腔内、腸内をはじめ身体中に共生している微生物とその人間との関わりまでを概説する。

    ちょっと難しくて、半分くらいは理解できなかったかなー。関連図書をもう2,3冊読んでみよう。

  • 微生物の世界がこんなに多様なもので,知られていない種類の微生物が非常に多いことに驚いた.細菌,古細菌,真核生物などある程度知っていた言葉もあったが,具体的な最近の名前は馴染みがないものばかりだ.我々が住んでいる世界にはわからないことの方が多いのかもしれない.枕カバーと便座の細菌が同程度だという記述にはゾッとする感じだ.微生物と共存している事実を再認識できた.

  • 請求記号 491.7/D 64

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:491.7||D
    資料ID:95160955

    人間の体表や体内に棲む何兆もの微生物が形成する集合体をマイクロバイオームといいます。生命とは何かという根本的議論から、マイクロバイオームとは何か、それが人間の生活や健康にどう影響するのかまで、進化理論や細菌学の歴史をひもときながら、最新の分子生物学の成果を踏まえ、豊富なイラストと共にわかりやすく解説してある良書です。
    (生化学研究室 大塚正人先生推薦)

  • 近年注目を集めているのが、ヒトの表面や内部にいる微生物である。皮膚や口腔、鼻腔、腸、肺、さまざまな場所に存在している。
    微生物というといわゆる「ばい菌」で、汚いもの、排除しなくてはならないものという印象を持つ人もいるかもしれないが、大部分はヒトに害をなすわけではなく、ヒトとうまく共生している。ときにヒトを助け、ときにヒトから利益を受け、ごくたまに例外的にヒトに悪さをする。
    いつもそこにいる「常在菌」とヒトは、長い時間を掛けて互いに「適応」し、関係を築き上げてきたのだ。

    本書はこうした身近な微生物の世界について紹介する1冊である。アメリカ自然史博物館で、マイクロバイオームをテーマとした展示会が開かれた際に制作されたものとのことで、基本的な解説からやや突っ込んだ話まで、マイクロバイオーム研究の今を俯瞰する内容になっている。

    健康なヒトの体の細胞のおそらく90パーセントは微生物で、体重の3パーセントは彼らに由来すると考えられている。
    1人のヒトの中には、多種多様な微生物が存在する。マイクロバイオームとは、ヒトの一部分などの特定のエリアにある微生物のタイプと数を指す。

    体表面や体内に数多く存在している微生物たちがヒトに大きな影響を持っていることは推測されてはきた。しかし、分離し、培養することが難しい菌も多く、詳細を知ることは困難だった。元いた環境から引き離し、育て増やして詳しく調べる前に、脱落してしまうものが多かったのだ。その結果、もちろん、すべての菌を入手することは出来ないし、増えてくるものは元の環境では少数派だったということも往々にしてあった。
    近年、核酸配列決定に関する技術が著しく発展したことから、詳細が調べやすくなった。菌を1種ずつ分別して、確定しなくても、全体として、存在する核酸の配列を調べていくことで、何の仲間の菌がどの程度いるかをざっくりと知ることが出来るようになったのだ。
    これを使ってヒトの体内、外表面、周囲環境のマイクロバイオームを調べていくと、おもしろいことがわかってきた。
    マイクロバイオームは個体間でも異なるし、1人のヒトの部位間でも相当異なる。病気のヒトと健康なヒトの間では存在する菌の傾向が異なる。同一人物でも眉間に存在する菌集団と足指の間に存在する菌集団はまったく異なるし、驚くことに、右手と左手(利き手とそうではない手)でも相当異なる。
    さらに大規模で長期に渡る研究も行われている。例えば複数の地下鉄の駅を調べたり、公共施設を調べたり、都市間で比較したりされてきている。パソマップ(Pathomap)といった病原体地図の試みもある。
    家族間ではマイクロバイオームは似通ってくるし、キスでも「病原体交換」の痕跡は残る(だから徒な不倫にはご用心!)。
    犬を飼っている家とペットのいない家ではかなりの差が出る。
    発想次第で、さまざまなマイクロバイオームを調べて比べてみると、思いもよらなかったことがわかるかもしれない。

    おもしろい例としては、お風呂やシャワーにご無沙汰しているヒトのへそから発見された菌が、一般的な動植物が生息不能な「極限環境」に棲む古細菌の仲間だとわかった研究がある。これは極端な例だが、へそは体表面の中でも特に菌集団の多様性が高く、そのマイクロバイオームから個人が割り出せるほどであるようだ。

    微生物は一概によい菌・悪い菌と分けられる場合ばかりではない。マイクロバイオーム全体のバランスが崩れた際に不調を来すこともある。
    胃に住む細菌、ヘリコバクター・ピロリは胃癌と強い相関があることが認められたが、この細菌を省いてしまうと、今度は逆流性胃炎などの別の病気を招くこともわかってきている。
    多様な菌が棲み着いているヒトの体では、1つの種のみが極端に増えたり、1つの種を除いたりすると、思わぬ結果を呼ぶ可能性もある。そのあたりは、マクロな生態系と同様だろう。

    健康なヒトの便を使った腸疾患の治療(実際に試みは始まっている)や、腸内細菌が精神疾患にも関係するかもしれないといった、実用につながっていきそうな話も興味深いが、まずはヒトとマイクロバイオームの関係をより慎重により深く調べていくことが望ましいだろう。
    長い年月を掛け、相手の出方を探りながら、微生物はヒトの中に住処を見つけ、ヒトは彼らを利用してきた。そのわくわくするような多様で複雑な関係は今後、さらに明らかになっていくことだろう。

    一般向けの本ではあり、なるべく噛み砕いた説明を目指している感は受けるのだが、生物学の基礎知識がないと呑み込みにくい箇所はあるように思う。アメリカのテレビ番組や日本未公開映画を例に出すたとえが散見されるが、日本の読者には逆にわかりにくいだろう。
    とはいえ、この方面に興味のある方は読んで損はないと思う。

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著者プロフィール

ロブ・デサール(Rob DeSalle) 
分子系統学者。アメリカ自然史博物館サックラー比較生物研究所の学芸員で、微生物学研究のプログラムを担当している。邦訳書に『マイクロバイオームの世界:あなたの中と表面と周りにいる何兆もの微生物たち』(紀伊國屋書店)。イアン・タッターソルとの共著に「ワインの博物誌」、「脳:ビッグバン、行動、信念」がある。ニューヨーク市在住。

「2020年 『ビールの自然誌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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