セレンゲティ・ルール――生命はいかに調節されるか

  • 紀伊國屋書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314011471

作品紹介・あらすじ

分子から人間、ヌーの群れから生態系まで――すべては調節されている。

「生体を維持するべく体内で様々な種類の分子や細胞の数を調節する分子レベルのルールが存在するのと同様に、一定の区域における動植物の種や個体数を調節するルールがある」

本書で著者は、生命の《恒常性(ホメオスタシス)》という概念を提唱したウォルター・キャノンや、《食物連鎖》の仕組みを示して《生態学(エコロジー)》の礎を築いたチャールズ・エルトン、分子レベルの調節の原理を解き明かしたジャック・モノーほか、生物学・医学における数々の偉大な発見に至った過程を活写。生体内における分子レベルの《調節》と生態系レベルで動物の個体数が《調節》される様相とのあいだに見出した共通の法則と、蝕まれた生態系の回復に成功した実例を、卓越したストーリーテラーの才を発揮していきいきと綴っている。

E. O. ウィルソン、ニール・シュービン、シッダールタ・ムカジーら絶賛!

感想・レビュー・書評

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  • 食物連鎖の話。捕食者と、捕食者の捕食者の関係が重要。人体における細菌同士と、セレンゲティの動物同士の関係はそっくり同じということだそうだ。割と自明では。

  • 二重否定という論理が、細胞レベルから生態系レベルまで、生物が係るあらゆる階層で調節機能を果たしているということが、具体的な事象をもとに分かりやすく書かれていて、とても面白かった。

    生態系は危機に瀕しているものの、関係者が団結し、個人個人が自分にできることを実践すれば危機から抜け出せるということが、天然痘撲滅を引き合いに出して語られていて、生態系への責任を痛感するとともに、希望も感じられた。

  • 「生物多様性」がわからない。どの本も「生物多様性は善である」が前提で話が始まる。なぜ「生物多様性が善なのか」を知りたいのに。そのためぼくは外来魚が殺される理由がわからない。パンダは保護されるのに、絶滅に瀕しているみのむしが無視されるのはなぜだろう。ゴキブリを殺すなという主張を聞いたことがない。

    読みはじめてすぐに、あ、これはアタリかも、と思った。話はいったんセレンゲティから離れて、生物学、医学の分野に。生命にとってバランスと調整の機能がいかに大切かを解く。癌も調整の病だという。わかりやすく、読みやすい。翻訳書にありがちなもったいぶったところも、回りくどいところもない。説得力は半端ない。

    で、満を持して、自然界でもバランスと調整が大事、という議論が展開される。それがセレンゲティルール。生態系のバランスが崩れたことで起きるトラブルもいくつか紹介される。が、ここには飛躍があると思う。生命体のバランスと、自然界のバランスはイコールではない。生命体はバランスを崩すと死んでしまう。死んでしまう=NGに決まっているが、自然界にとってのNGとは何なのだろう? ブラックバスが増えて、在来魚が減るのはNG? それは単にブラックバスの側に立つか、在来魚の味方をするかの違いでは? オランウータンの立場からすれば、人間はもう少し減らしたほうがいいのでは? だとしたら人間の駆除は良いことなのか?

    イエローストーンでは一度絶滅したオオカミを再導入したそうだ。その結果は本書に紹介されているが、家畜を襲うからと駆除されたオオカミが戻ってくることでデメリットだって当然あったはずだ。そこが簡単にスルーされているのがどうもモヤモヤする。

    で、結局モヤモヤが完全に晴れることはないのだった。

  • 「生物の数はどのようにして調節されているのか?」
    この問いに対して、著者がセレンゲティ国立公園での観察を通して得た生態系の調節のルール、セレンゲティ・ルールについて解説されている。
    体内の分子レベルの調節と同じように、生態系も調節されているというものだ。

    生物は食物が増えれば増加し、減れば減少する。
    また、捕食者が多いと食べられる側の生物は減少し、捕食者がいなくなれば増加する。
    そういう食物連鎖の中では、敵の敵は味方で、天敵の天敵がいることで、自身が恩恵を受けていたりする。反対に、例えば、殺虫剤が稲を食べる虫の天敵となるクモなど殺してしまうことで、殺虫剤の使用の結果として、稲が大きな被害を受けることもある。
    順調に増えていても、群れの中の個体数が増え、密度が高くなると増加が緩やかになる生物もいる。

    生態系のルールが破られると大きな被害がでるが、そういった生態系のルールを知ることが、生態系を癒すことにつながると筆者は訴える。

    ところで、本書の内容と直接関係があるわけでもないが、日本の出生率の低さは、密度が増えると増加が緩やかになるという、当たり前の生態系のルールに則った出来事なのではないかと思った。
    日本の人口密度は世界的にも高い。

  • セレンゲティ ルールとはタンザニアのセレンゲティ国立公園から撮ったものであるが、一定の範囲内に生息する生物の数を調節するルールのことである。
    ここでは分子レベルから話を始めており、直接増やす要因、抑制する要因、抑制する要因を抑制する要因の三つでコントロールするとしている。食物連鎖も同様の考えではあるが、より要因を広範囲に求めている。アフリカの草食獣の頭数であれば、餌となる草木の量と捕食者である肉食獣の頭数が直接の要因であるが、肉食獣の頭数を変化させる要因例えば人間による駆除、疾病あるいは同様なところに住み食料を競争する種(あるいは同じ種でも狭いところに多くはまかないきれない)の頭数も大きく関わってくる。そのような条件を改善させると急速に頭数を戻すことができるが、その広範囲な因果関係を見極めるのは、粘り強い観察が必要。

  • セレンゲティから始まり微生物やウイルスまで、生物間の調整の物語。具体的な例が豊富で面白いです。

  • #科学道100冊/つながる地球

    金沢大学附属図書館所在情報
    ▼▼▼▼▼
    https://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BB23900679?caller=xc-search"

  • 科学道100冊 2021 テーマ「つながる地球」
    【配架場所】 図・3F開架
    【請求記号】 468||CA
    【OPACへのリンク】
     https://opac.lib.tut.ac.jp/opac/volume/457681

  • 分子や細胞の数を調整するルールがあるように、一定の区域で生息可能な動植物の種類や個体数を調整するルールが存在する=セレンゲティルール。セレンゲティ国立公園の観察から。
    生命とは食物である。=食物連鎖からくる定理。
    大きな魚>小さな魚>水生の昆虫>植物や泥。
    大きな鳥は小さな穀粒を食べることができない。
    一つの丘に二頭のトラは共存できない。
    共通の資源を求めて競い合う生物種がいて、他の過剰な生物種を調節する。
    動物の身体サイズによって、小型の動物は捕食者によって、大型の動物は食物供給によって、調節を受ける。
    食べられずに多く食べる方法=移動すること。水牛6万頭に対して、ヌー100万頭。ヌーは、定住する群れと移動する群れがいる。定住する群れは87%が補食で死ぬ。移動する群れは25%が補食で死ぬ。
    ライオンやハイエナは、子供を育てるため広範囲を移動できない。
    移動性のヌー、シマウマ、トムソンガゼルは、異動によって優位性がある。
    移動は、個体数を優位に保つ。

    地球の生産能力の150%を人間は消費している。

    捕食者が草食動物の数を調整する。補色の対象になる動物もならない動物にも影響を与える。
    キーストーンの動物が存在する。食物連鎖の地位ではなく影響力が大きい。増えても減っても他の種に影響を及ぼす。
    共通の資源を求める生物種が存在し、片方の増減はもう一方の増減に影響を及ぼす。
    身体サイズは、調整の様態に影響を及ぼす。獲物を捕らえる能力で上限が、自己のニーズを満たせるか、で下限が決まる。
    密度依存要因によって個体数が調整される。
    移動は捕食される確率が低くなる。ライオンやハイエナは縄張りから離れられないから。移動は個体数を増加させる。

    正の調節=捕食者によって制限される
    負の調節=捕食者の競合で捕食者の数が制限される
    二重否定論理=種の増減は、捕食関係がない種にも影響する
    フィードバック調節=密度依存によって個体数が制限される。

  • 読み進めるのに時間が掛かった本。
    しかし、難しい話が書かれている訳ではない。どちらかと言えば、とても興味深く、ある種楽しく、文化系でも読める理科系の本。
    それが為に凡庸な自分の脳味噌が、スパークする箇所が随所にあった。

    著者は進化生物学という分野の専門家であり、本のタイトルは野生の王国であるアフリカの保護地区の名前。自ずと動物の話かと思いきや、医学の分野から始まり、薬学、生物学へと変遷。生態系の破壊から再生までの実例を教えてくれる。

    そこに串刺しされる様に紹介されるのが「二重否定」。最も「閃いた」言葉である。一見、二者間に正(あるいは負)の相関関係があるようだが、そこには抑制(あるいは増進)させる三者・四者がいるというもの。「風が吹けば桶屋が儲かる」の理屈に近い話。

    この本がそうであるように、分野が違っても働いている仕組み、法則は同じであると思え、社会科学(科学とは言えないと思っているが)分野でも、この理屈は当てはまるのではないかと、一度、自分でこの「二重否定」を取り込んで、世の中の動きを考えて見たい。細切れになった読書時間を費やす度に考えた。

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著者プロフィール

【著者】ショーン・B. キャロル (Sean B.Carroll)
1960年オハイオ州トレド生まれ。ウィスコンシン大学マディソン校教授。進化発生生物学(エボデボ)の第一人者で、2012年にベンジャミン・フランクリン・メダル、2016 年にルイス・トマス賞を受賞。邦訳された著書に『シマウマの縞 蝶の模様――エボデボ革命が解き明かす生物デザインの起源』(光文社)と、共著の『DNA から解き明かされる形づくりと進化の不思議』(羊土社)がある。野球とロックをこよなく愛する。

「2017年 『セレンゲティ・ルール――生命はいかに調節されるか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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