動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか

制作 : 松沢哲郎  柴田裕之 
  • 紀伊國屋書店
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本棚登録 : 300
レビュー : 27
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314011495

作品紹介・あらすじ

進化の末に、動物は「賢さ」を獲得した。
それは人間も、サルも、カラスも、イルカも、タコも、みんな同じである。
われわれは自分たちだけが賢いと思っていないか?

心理学との境界線を行くユニークな動物研究の分野を開拓してきた著者が、動物行動学の歴史から最新の研究まで、豊富な事例を示すとともに読者へと問いかける。ドゥ・ヴァールが新たに提唱する「進化認知学」とは――
人間中心の科学から脱却し、動物の認知とは何かを見つめなおす。

驚きのエピソード満載、著者自身の手によるイラスト多数。待望の最新作!

●チンパンジーは食べ物のありかを知っていることを悟られないようにふるまう
●カケスは相手が何を欲しがっているか見極めてプロポーズの贈り物を選ぶ
●アシナガバチは一匹ずつ顔が違い、仲間の顔を見分けている
●タコは自分を攻撃した人間を覚えていて、怒りをあらわにする

感想・レビュー・書評

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  • 動物行動学の奇才が、自らの研究をふまえて一般向けに書いた科学啓蒙書シリーズの最新作。

     彼の著作はいつもそうだが、随所にちりばめられた動物たちの驚愕エピソードを読むだけでも、十分に面白い。本書の中の例を挙げると……。

    〝チンパンジーは一コミュニティ当たり一五~二五種類の道具を使い、その種類は文化や生態環境の状況によって変わってくる。たとえば、あるサバンナのコミュニティは先を尖らせた棒を使って狩りをする。これは衝撃的だった。狩猟用の武器を使うようになったのも、人間ならではの進歩と考えられていたからだ。〟

     このようなエピソードが山盛り。しかも、著者の専門である霊長類のみならず、さまざまな動物についての話が広く集められている。

     そうしたエピソードを楽しんで読むうち、著者が提唱する「進化認知学」の面白さが、すんなりと理解できる。
     進化認知学とは、「人間とそれ以外の動物の心の働きを科学によって解明するきわめて新しい研究分野」(松沢哲郎の「解説」より)である。

     「人間だけが○○できる」というたぐいの思い込みが、近年、動物の認知の研究によって次々と覆されてきた。本書はそうした研究の最前線を手際よく伝える、秀逸なサイエンス・ノンフィクションである。

     『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』という挑発的なタイトルは、原題の直訳。
     このタイトルには、「この世界で人間だけが特別だ」と考える人間中心主義への痛烈な批判が込められている。

    〝認知には唯一の形態など存在せず、認知能力を単純なものから複雑なものへと格付けすることにはまったく意味がない。ある種に備わった認知能力は一般に、その種が生き延びるのに必要なだけ発達する。〟

     にもかかわらず我々は、人間に備わった認知能力の形態だけを唯一の尺度として、動物にもあてはめてきた。人間の基準で動物をテストし、「人間にある認知能力が備わっていないから、この動物は劣っている」と決めつけてきたのだ。

     だが、本書に紹介された“動物たちの驚くべき認知の世界”に触れると、一つの基準で認知能力を比べることの愚かしさがわかる。
     そして、「そもそも賢さとは何か?」という根源的な問いをも、著者は読者に突きつけるのだ。

  • やっと読み終わった。ずいぶん時間がかかった。
    タイトルは「人間は賢いのか」という疑問形だが、もちろん論旨は「動物の賢さがわかるほど人間は賢さを定義できていないし、だから当然測定もできやしない」である。

    スティーブン・グールドが『人間の測りまちがい』で人間の人種・民族間の知能の測定方法の誤り(たとえば、生得的な知能測定のつもりが如何にアメリカナイズされているかを測定する内容だったとか)を告発し、白人を特権的な地位から引き摺り下ろすのに一役かったが、本書ではその対象が人間という種全体に及んでいる。

    どうもアメリカはキリスト教保守派という票田があるからかエセ科学がはびこっていて、こうした一般向けの科学書を書く人(著者や上記グールドやドーキンスなど)は闘志をむき出しに書かざるを得ないようで、これも読んでいて非常に疲れた。日本人向けだったら半分ぐらいの内容で済んだと思う。

  • 2012年にイグノーベル賞を受賞したフランス先生の本。

    (受賞は「チンパンジーは、他のチンパンジーの尻の写真をみて個体を識別できる」という研究によるもの)

    まじめな話はもちろん、ニヤニヤできる話もあり。

    ミツバチがダンスで食物の在りかを仲間に伝えていると発見したフォン・フリッシュは、かつてこう述べた。「ミツバチの生態は魔法の泉のようなもので、汲めば汲むほど、汲むべき水が湧いてくる」。

    「魔法の泉」はいたるところにあるのだ、とフランス先生は言う。
    人間の尺度で判断するなら、動物は賢そうには見えないのかもしれない。
    でも、本当にそうか? 私たちは傷つきやすい人間の自尊心を避けて、他の種の「賢さ」をありのままのかたちで評価しなければならない。。

    「賢いハンス」の話はかなり考えさせられました。

    中高生から読める、大学生や大学院生にも勧めたい本。進化認知学を生み出した、動物行動学と比較心理学、さらには背景にある生物学と心理学、それらの学問の歴史を文献をもとにたどる最善の教科書、とは監訳者の松沢先生の評。

    満足。

  • 個人的な話で恐縮ですが、昔、実家に室内犬がいまして。
    ある日、母が鍵を忘れたまま外出して、帰ったら先に帰った祖父が鍵を閉めていて家に入れず、呼び鈴を鳴らしても耳が遠い祖父には聞こえず、さてどうしようとなったら室内犬が扉越しに吠えていて、「たすけてー」と母が言っ(てみ)たら犬が祖父を呼びに行き、玄関まで連れて来て事なきを得た、なんていう話がありました。
    こういうエピソード、結構ありふれてますよね。その割に動物の知性が認められていないのは、なぜか。人間側の姿勢に問題があるんじゃないのか。本著では、霊長類研究の第一人者がそれを紐解いていきます。

    動物の言語理解能力については、ボノボが(表情で読み取られないよう)顔を隠した人間から「鍵を冷蔵庫に入れて」と言われて見事に遂行した事例なんかが紹介されています。他にも、忖度もする。文化やファッションもある。政治だってある。
    それらを人間が素直に受け止められていないのは、固定観念とプロトコルの問題で、特にプロトコル…と私はざっくり表現していますが、本著では動物の立場からの視点を「ウンヴェルト(環世界)」と呼んでおり、早い話が動物と人間の間では同じ物にアクセスする時でも使う感覚(視覚とか嗅覚とか)からして全然違ったりするよね、という話で、肯かされました。

    しかし、馴染みのない分野であることもあって、あんまり読み進まず。文章はそんなに難しくないと思ったんですが。。なんかビックリするくらい頭に入ってこず、おかげで読了するのに結構時間がかかりました。

    とは言え内容的には動物って凄い的な事例が並んでいて、そこをトリガーに話が進んでいくシンプルな構成です。進化認知学というモノの概要を知るには良い本だと思います。
    そこを下敷きにそれ以上の学びを得るというものではなく、タイトル以上でも以下でもなく、少し冗長なようにも感じました。

    ちなみに、本文中に「奇妙奇天烈な結論」という表現があったのですが、原著ではどんな表現なんだろう。。本文中に誤植が2箇所あったのは残念。

  • 言語の最大の利点は、時間と場所を超えてものごとを伝えられること。その時、その場所にいなくとも、そこで起きたことを他者へ伝えることができる。自ら体験したことではなくても、他者から伝えてもらうことでその知識を拡大することができる。

    リスが人間のように10まで数を数えることができないからといって「人間はリスよりも優れている」と云えるのか?
    リスは生存するために10進法を知る必要がないのであって、むしろ生存に必要のない余計なことにエネルギーを割くことは害なのである。
    冬眠前のリスは森の地面のあちこちに穴を堀り木の実を埋める。その数を千を超えるという。人間にはとてもリスの真似事はできない。

    大学院生や初学者向けとあとがきで訳者は書いていたし、比較的やさしい文体で書かれていたけれど、それでも文系人には読みづらかった。

  • 2019.01.03 『BRUTUS(ブルータス) No.884 [危険な読書]』からの選書
    https://booklog.jp/users/nsugiura/archives/1/B07KLJNC6C

  • 賢い動物もいるし、賢い人間もいるし、阿呆な動物もいるし、阿呆な人間もいる。それぞれやで~。

  • フランス・ドゥ・ヴァールによる動物の意識や知性についての一冊。結構なボリュームだが全くダレずに読み終えた。

    仲間の顔を見分けるハチ、腐った食べ物を「怒って」人間に投げつけるタコ、人間よりも早く状況を認識するチンパンジー。人間は特別な「知性」を持った動物で、ほかの動物は違う、というのはハイエクの言葉を借りれば「致命的な思い上がり」に他ならない。

  • 動物の認知能力関する本。動物には人間のような認知能力は無く条件反射で行動しているとする派、動物にも認知能力がある派があり筆者は後者の創始者に近い。初期にはずいぶん批判されたらしい。ポイントは実現のやり方にある。人間的な認知能力を測るために人間向けのテストをしても、動物は各々感覚器官や作用器官が、その人間向けのテストに最適化されておらず不利な結果が出る。動物が感じている世界に合わせれば興味深い行動を認知的に捉えることができる。

  • 表題の通り。動物も充分に知性的で、愚かなどではない。

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著者プロフィール

【著者】フランス・ドゥ・ヴァール (Frans de Waal)
動物行動学者。米・エモリー大学教授。霊長類の社会的知能研究における第一人者。米国科学アカデミー会員。
『共感の時代へ』『道徳性の起源』(以上、紀伊國屋書店)、『チンパンジーの政治学』(産経新聞社)、『利己的なサル、他人を思いやるサル』(草思社)ほか邦訳された著書多数。

「2017年 『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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