お隣りのイスラーム――日本に暮らすムスリムに会いにいく

著者 :
  • 紀伊國屋書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314011556

作品紹介・あらすじ

現在日本に暮らすイスラーム教徒は10万人以上、モスクは80ヵ所以上、 多くの大学でハラールフードが提供されるようになった。それでも、世界に16億人近くいるといわれるムスリムは、日本ではまだまだ少数派。 3・11の震災のあとすぐに、被災地支援に向かった大塚モスクの活動を手伝ったのをきっかけに、その世界の扉を開いた聞き書きの名手が、日本に移り住み、働くムスリムたちの声を拾い集めた。 インドネシア人の舞踊家、バングラデシュ人のハラールフード店店主、シリア人のアレッポ石鹸販売会社代表、ウイグル料理店オーナー…… 故郷を想い、日本との懸け橋をめざす人たちの言葉から、多様で豊かなイスラム世界が見えてくる。 「scripta」好評連載、待望の単行本化!

感想・レビュー・書評

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  • 『日本の中でイスラム教を信じる』を読んで変わったことが一つある。
    「イスラム教徒の人々」と一括りにせず、「(全世界のイスラム人口である)16億人分の1の存在」と個人単位で見るようになったことだ。一人ひとり信仰の仕方や捉え方も違うことを深く印象付けられた。
    今回も日本在住の「16億人分の1の存在」を作家の著者がインタビューする形式。イスラームにまつわる場所のコラムも掲載されている。
    『日本の中で…』と違う点は、カフェで談話するようなソフトタッチなインタビューと言ったところか。(その秘密は著者のフランクなトークと質問力にあると自分は見ている)

    著者が訪ねたお隣りのイスラームさんの中で、読後も印象に残っている方々を挙げていきたい。
    ・エスマイリ・サミルさん(イラン)
    浅草でペルシャ絨毯店を経営されている。
    サミルさんは礼拝よりビジネスを優先される仕事人間(「神様がぼくたちを食べさせてくれるわけじゃないからね」)で、「寧ろ日本人ぽい!」とイメージを大きく覆された。家業にここまで誇りを持てる人がいるということも。
    「絨毯は世界で唯一の踏めるアート」という彼の言葉が、いつまでも輝いて消えずにいる。

    ・ガザール・イサームさん(シリア)
    理論的に話を展開される方で、著者も他の方よりかは比較的真剣なご様子で取材されていた。
    自国から見た「中東で紛争の多い理由」を世界史の授業並みに客観的に解説されるイメージが頭について離れない。1歳半の時に父親を第3次中東戦争で失い、8歳から労働に就いた。紆余曲折を経て今はシリアの日用品でお土産としても名高いオリーブ石鹸を日本で販売されている。あのパルミラ遺跡も破壊された今、少しでも母国の記憶を形に残したいという彼の願いだけでも報われないのだろうか。

    ・ジャトゥー・ンゴムさん(セネガル)
    ズバリ、面倒見の良い頼りにしたいお姉さん!笑
    外国人留学制度で高校生の頃に来日、取材当時は日本の人材派遣会社に勤務されていた。
    学校や職場では、多少の文化摩擦はあれどみんな理解を示し、セネガルと日本の架け橋になりたいという彼女の夢も応援してくれている。取材後には実際にその夢をカタチにしたとの事で、その行動力に脱帽…「夢を打ち明けられないなら、私がヒアリングしてあげたい!」是非お願いしたいです…!


    イスラーム圏への旅行コラムは五感で感じたことを全て書き留めようとしている印象だった。旅行の際自分がつける日記のスタイルに似ていて、そこは少し共感した。

    旅行中大きなトラブルが発生しなかったのは、心優しい現地の人々のおかげだと思っている。旅の描写を通して、お隣りのイスラームさんと我々の間にそそり立つ見えない壁を感じさせないようにしているということも。


    ※あとがきには取材中に読んで面白かった本と映画が紹介されている。
    その中に自分も読んで笑いが止まらなかった高野秀行氏の『イスラム飲酒紀行』が入っていた。あれだけ笑っていたけど、真のイスラーム世界を知る上での必読書なのかもしれない。

  • なぜかイスラムにはテロ以前から興味があった。イスラム教に対して、神秘的なイメージがあったし、モノの考え方がなんとなく日本人と遠いような気がしていたから。全く違う考え方、生活のしかた、生き方の根拠を知りたいと思っていた。

    この本はイスラムの文化や、政治的歴史的背景を解説したものではない。ただ、日本に住んでいるイスラムの外国の方に会いにいって、話をするだけ。でもそれがとてもおもしろかった。テロのこと、日本との関係のこと、デリケートな話題も含まれているけれども、隣人との世間話のようなスタンスをとっているので、構えずに読むことができた。

    そこで思ったこと。読書は自由だなってこと。じぶんが知りたいと思ったことはなんでも本を読むことで知ることができる。自分だけの問題だからそこにタブーは存在しない。読むだけだから無知を恥じる必要もない。何も知らずに、気を使わずに、知りたいと思っただけでムスリムの人たちの話を聞くことができる。

    背景から人を知るのではなく、人を通じて国家や宗教を知ることができる本。

    それと、どの国もごはんがとてもおいしそう!たくさんの料理やお店も紹介されていて、どこも行きたくなってしまった。

  • 思っていたよりイスラムの方の考え方は
    非常にシンプル「いいことをし わるいことをしない」
    情に厚く 困っている人には手を差し伸べるのが当たり前。
    イスラムの国でも難民になった側 受け入れた側
    両方があり 来日理由も価値観も微妙に違っているのが
    よく理解できたインタビューでした

  • イスラーム文化に兼ねてから興味があったので、ムスリムたちのお話を通して、その文化を少しながら理解できたことが嬉しかったです!
    「留学生」と「難民」は天と地ほど違う、という話を誰かが話していたように思います。それが一番印象に残りました。
    私たちは物事を単純明快に捉えがちです。ムスリムは危険、イスラームは恐ろしい。けれど、決めつける前に理解を試みるという行動がいかに大事か、本書は教えてくれました。

  • 色々な国の方が近隣に住まれているのですが、イスラームと判る方は居ない?(私が判っていないだけかも知れません)

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    「scripta」好評連載「お隣りのイスラーム」待望の単行本化!

    現在日本に暮らすイスラム教徒は10万人以上、モスクは80ヵ所以上、20以上の大学でハラルフードが提供されるようになった。
    それでも、世界に16億人近くいるといわれるムスリムは、日本ではまだまだ少数派。

    3・11の震災のあとすぐに、被災地支援に向かった大塚モスクの活動を手伝ったのをきっかけに、その世界の扉を開いた聞き書きの名手が、日本に移り住み、働くムスリムたちの声を拾い集めた。

    インドネシア人の舞踏家、バングラデシュ人のハラルフード店店主、シリア人のアレッポ石鹸販売会社代表、ウイグル料理店オーナー……
    故郷を想い、日本との懸け橋をめざす人たちの言葉から、多様で豊かなイスラムが見えてくる。
    https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784314011556

  • 日本に暮らすイスラーム圏の人々へのインタヴューを通じて、「隣人であるイスラームの人々を知ろう」という『scripta』誌の連載を加筆修正し書籍化。
    ムスリムとして、また"外国人"として日本で暮らす彼ら彼女らの苦労や物の見方の、なんと多様で含蓄に富むことだろう。単なる「日本スゴイ」ではなく「ここが変だ・改めるべきだ」という問題提起もある。シリア出身の方への取材では欧米――殊にアメリカの「戦争をしないとやっていけない」国家としての在り方が、クルドの方への取材では日本政府の難民支援への消極的姿勢が浮き彫りになる。ひょっとすると彼ら彼女らのほうが真の意味で「日本人」なのかもしれない、と考えさせられた。


  • 20220212

    ムスリムについて知りたいという気持ちから、図書館で見つけた一冊。
    イスラームは宗教でありながら、政治と結びつけて考えられてしまうことが多く、本当のイスラーム、ムスリムの姿って私たちの偏見や想像で作られてる気がする。
    イスラームの考え、暮らしぶりを知る第一歩となったとともに、在留外国人社会など、日本にもある自分が知らない世界をもっと知りたいと思った。
    もしかしたら自分も同じ立場になるかもしれないしねw
    イスラーム、アラビア語って世界的に見ても勢力がすごいということを改めて実感!
    アラビア語挑戦してみようと思う!

  • 読んでいて楽しい。私の知らない世界が、価値観がまだまだ沢山あると気づいた。

  • 世界人口の2割を占めるイスラム教徒。
    イスラムに偏見のある日本人にオススメ。
    日本人の常識は、世界の常識では無い事に気づかせてくれる一冊。

  • 自分の周囲にムスリムが居ないのか、居ても気づかないのか。殆ど接した事が無い。田舎に住んでいるからかな。異文化との触れ合いは、楽しいと思う。

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著者プロフィール

1954年生まれ。中学生の時に大杉栄や伊藤野枝、林芙美子を知り、アナキズムに関心を持つ。大学卒業後、PR会社、出版社を経て、84年、地域雑誌『谷中・根津・千駄木』を創刊。聞き書きから、記憶を記録に替えてきた。
その中から『谷中スケッチブック』『不思議の町 根津』(ちくま文庫)が生まれ、その後『鷗外の坂』(芸術選奨文部大臣新人賞)、『彰義隊遺聞』(集英社文庫)、『「青鞜」の冒険』(集英社文庫、紫式部文学賞受賞)、『暗い時代の人々』『谷根千のイロハ』『聖子』(亜紀書房)、『子規の音』(新潮文庫)などを送り出している。
近著に『路上のポルトレ』(羽鳥書店)、『しごと放浪記』(集英社インターナショナル)、『京都府案内』(世界思想社)がある。数々の震災復興建築の保存にもかかわってきた。

「2023年 『聞き書き・関東大震災』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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