腸と脳──体内の会話はいかにあなたの気分や選択や健康を左右するか

  • 紀伊國屋書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314011570

作品紹介・あらすじ

悩みで胃が痛い
大事なプレゼンの前にトイレに行きたくなる
腑に落ちない
――誰しもが身に覚えのあるこれらの感覚、ここには、
体内で休まず交されている「見えない会話」が関わっていた。

ヒトゲノム計画からヒトマイクロバイオーム計画に移行した現代、
生命科学のトレンドとして注目を集めているのは「腸」。

腸管神経系(ENS)は「第二の脳」とも呼ばれ、
5000万~1億もの神経細胞から構成されており、
このENSと脳が常時やり取りしている厖大な情報が、
心身の健康維持にきわめて重要な役割を果たしている。

腸内マイクロバイオームの異変は、慢性疼痛、過敏性腸症候群(IBS)、
うつ病、不安障害、自閉症スペクトラム障害や、
パーキンソン病などの神経変性疾患に結びつく可能性がある。

脳-腸-腸内細菌の情報ネットワークの緊密さと重要性、
諸疾患と腸内細菌の関係、情動と内臓感覚、
健康な身体を維持するために実践したい食習慣などについて、
脳と腸のつながりの研究における第一人者が、わかりやすく解説する。

感想・レビュー・書評

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  • 最近の研究成果と著者の経験談が沢山書いてある本ですが、かなり冗長な作りで5分の1ぐらいに短縮して欲しいと切に願いました。あと、エビデンスなしの予想、 観測の少ない経験談、因果関係と相関関係を無視した意見が多く、扇情的な意見が他見されました。そういった、ただの私見やロジックの矛盾と観測された事象・事実を読み分けられる読者であれば読んでも良いかと思います。

    参考になる経験談も幾らか含まれていたので、流し読みで情報を手に入れるという意味では、biologyの知識を有する人に対しては意味があると思います。

    結論の部分が結局のところ、食と精神を健全に、という普通の結論なので(仕方ないですが)、一般の読者であれば300pのこの書籍を読む必要はないです。

  • 脳・腸・微生物の相関関係について「革新的な見方を提示する」との言葉どおり、驚きの知見に溢れている。パーキンソン病はてっきり脳の領域の問題だと思っていたが、発症する以前から消化管でトラブルが進行しているなんて知らなかったし、下痢や腹痛の原因が食べ物ではなく、過去の出来事の想起にあったりするとか、なかなか思いつかない。人類の宿すマイクロバイオームを探究することで、私たち人間が実のところ「ヒトの構成要素と微生物の構成要素からなる超個体」なのだとわかるとし、地球上における人類の立ち位置の再考を迫る研究だと思った。

    「胃腸こそ情動のドラマが上演される劇場である」というように、例えが本当にうまい。なんでも腸内で上演される芝居が、ロマンチック・コメディではなくスリラーやホラーになってしまう人がいるらしい。いつでも怒ったり不安を感じたりしている人の腸細胞は、幼少期にまでさかのぼる物語の台本を利用して、来る日も来る日も陰惨な筋書きを繰り広げることがある。何とも痛ましい話だが、解決策はあるらしい。なんと台本を書き換えることで内蔵反応を変え、腸細胞の異変を逆転させるというのだ。

    私たちは、直感に導かれて日常生活のあらゆる場面で重要な決断を行なっているが、その直感とコインの裏表の関係にあるのが内臓感覚で、人は家族や友人に相談するよりも前に、実は自らの内臓に耳を傾けているのだ。ただし内蔵感覚に基づく瞬時の直感が、常に最善でもなければ正しいわけでもない。不安が先行してネガティブな刺激にばかりとらわれ、適切な状況の把握もできない状態で下された判断では、自身の健康状態も正確に読み取ることができない。うつ病や原因不明の謎の疼痛もこの影響が考えられる。

    とはいえ内蔵感覚に基づく一連の個人的な記憶が、直感的な判断に結びつくことは確かなので、内蔵感覚に耳を傾ける重要性が強調されている。では、内臓感覚に基づく直感を最善のものにするためにはどうしたらよいか? 著者によれば、自分の見た夢を毎朝記録することで、情動的な記憶のデータベースへのアクセスを高め、直感基づく内面の知恵を日常の重要な判断に生かされるという。「夢の分析は、内蔵感覚に触れ、内蔵感覚に対する信頼を確立するための一つの方法なのである」

    これから毎日どれほどヨーグルトを食べようが、完全菜食主義者になろうが、都市生活者仕様のマイクロバイオータは、残念ながら変わらない。変わるのは、微生物が生成する代謝物質のみなので、現代人特有の疾患のリスクを減らしてくれはない。マイクロバイオータは、母親の妊娠から幼少期までにプログラミングされるため、この時期のプログラミングエラーは致命的だ。腸内微生物の多様性を失わせ、肥満や種々の健康障害を発症するリスクを高める。

    NHKスペシャルでも放送され話題となった奥アマゾンに住む最後の石器人ヤノマミ族を、著者も若い頃に密着している。そこでわかったのは、母乳で育てられた期間が長いほど、子供の脳は大きく育つし、情動や社会関係に関する能力も発達するということ。「母乳は、腸とマイクロバイオータと脳の会話を変え、脳の主要神経回路やシステムの健康な発達を促す」

    乳幼児期に形作られた腸内微生物の顔ぶれと、脳や腸内のプレーヤーとの間でかわされる会話は、成人後に何を食べ、どのようなストレス環境下に置かれるからよって影響を受け、その変化は具体的な疾患が現れるまで表面化しない。腸内微生物の多様性や回復力が低下していることに気づくのが遅れると、我々がどのように感じ、決断を下すかを左右するだけでなく、癌やアルツハイマーなどの重篤の症状を引き起こす。いま病気にかかっていないから健康なのではなく、突然の撹乱があった時に、どれだけ迅速に元の健康状態を取り戻すことができるかが重要。

    逆に長患いをして慢性疾患を引き起こすのは、必ずしもその人の年齢のせいばかりではなく、普段からどれだけ内臓感覚に耳を澄ませ、腸内の微生物と語り合ってきたかが問われる。配偶者の突然の死など、個人的な喪失から立ち直ったり、予期せぬ出来事に遭遇して身体や生活のバランスが乱れても、すぐに健康な状態に戻れる回復力こそ、健康のバロメーターなのだ。「いかなる生態系であれ、その健康は安定性と、撹乱からの回復力を通じて示される」というのは至言だと思った。

  • 腸が性格を決める、とか、腸の中の菌のコロニーが人間にとって大事なのである。といったことをちょこちょこっといろいろと並べて書いてあって、大変興味深い。他の人も書いているけれど、冗長、同じことをなんども何度も言われている気がしてくる。まあ、でも、革新的なアイディアを様々な見地から網羅的にとやるとこういう書き方になるのかもしれない。新しい分野を網羅的にやるってのはまあ無理なのです。電気グルーブの卓球がメロン牧場で言ってた韓国には子供のうんこを溶かしたマッコリがあって、それは幼児の菌のコロニーを体に入れるので大変よいのだ、みたいな話は載ってなかったけど、その話はすごい説得力だったよね。勉強になりました。

  • 断腸の思い、はらわたが煮えくり返る、腹の虫が治まらない。そんな表現が使われてきたことに対し、近年の技術進展が違った視点で理由付けしつつあると感じた。
    生活レベルでは「内蔵感覚」や「消化管で感じる」ことに意識を持つべきかと感じた。胃腸の疲れが気になってくる、やはりストレスか、、
    原著は2016年に書かれたようだが、2020年1月に「うつ病と肥満の共通機序:腸内微生物叢と食事の役割 」と題された学術レビューが出されるなど、その後もいろいろな発見・動向があるのだろう。そちらも調べていきたい。

  • 腸の微生物の生態系と日々の生活が相互に影響をしていることを科学的に説明している。
    動物性脂肪や砂糖があふれている今日、どうやって自制するか、その一つとして、それを口にしなければどんなよい効果があるかと言うことを具体的に知ることだと思うけれど、これで少しは自分も現代社会に流されない食事法を実践できるようにしたいと思った。
    適切に摂食できる脳を作る、肥満を防ぐ
    身体の作用を健全に保つ、特に重い病気になりにくい
    良い遺伝子を残せる、健康な子どもを生める
    それでたぶん、ストレスに強くなる、直感が研ぎ澄まされる、判断力も高まる、頭がよくなる、といいなー。
    とにかく、複雑なしくみがあって研究途中であるところもあって、すべてを解明することはできないだろうけれど、「フード・ルール」をもっと肝に銘じることにする。

  • 筆者はドイツ出身でアメリカで活躍している医師。自身が長年研究してきた内臓器官が脳や体に与える影響について、豊富な研究結果の考察や臨床例をもとに詳しく解説している。「脳ー腸ーマイクロバイオーム」の相関について、近年明らかにされた研究結果は目覚ましいが、またまだ解明できていない点も多く今後の研究結果が待たれる。
    書評では「隅々まで気配りされた訳文は読みやすい」とあったが、訳者の日本語訳が直訳による回りくどい表現でなかなか読み進めることができなかった。

  • p192

  • 脳と腸は密接に会話しているらしい!昔からストレスがあると胃腸が痛むと言われていたが、それを科学的に証明したのだ。脳から腸へ、そして驚くことに腸から脳へも話しかけているのだ。
    アメリカ的日常食が腸を弱らせので、地中海式食事を推薦しているのは、著者がドイツ人だからだ。日本人なら日本食を推薦するはずだ。

  • 整理しながら読み進めていたが、最後にまとまっていた。

    ・自然で有機的なマイクロバイオームを育成する
    ・動物性脂肪を控える
    ・腸内微生物のたようせいを最大化する
    ・大量生産された食品や加工食品は避け、なるべく有機栽培で育てられたものを食べる
    ・発酵食品やプロバイオティクスを摂取する
    ・妊娠時には特に栄養とストレスに留意する
    ・食べ過ぎない
    ・断食をして腸内微生物を飢えさせる
    ・ストレスフルなとき、怒っているとき、悲しいときは食べるのを控える
    ・皆で食事を楽しむ

  • 【電子ブックへのリンク先】
    https://kinoden.kinokuniya.co.jp/muroran-it/bookdetail/p/KP00018140/
    学外からのアクセス方法は
    https://www.lib.muroran-it.ac.jp/searches/searches_eb.html#kinoden
    を参照してください。

  • 【学内から閲覧はこちらから↓】
    https://library.morioka-u.ac.jp/opac/volume/289939

    【学外からのアクセスはこちらをご確認ください】
    https://library.morioka-u.ac.jp/drupal/?q=ja/KD

  • 腸が夢を見る

  • 体内セロトニンの95%は腸にある
    腸内微生物の低い多様性 神経症、障害
    味覚嗅覚、消化管全体に分布している
    アルバトロス症候群;消化管潰瘍で迷走神経を遮断後不快な内蔵刺激、腹痛、食欲減少
    セロトニン;腸管蠕動。全粒穀物、野菜に含まれる短鎖脂肪酸(酪酸など)で増加
    子供の頃のストレス良くない、胎児含めて
    IBS;遺伝よりも家族歴の方が予測因子として強力
    肝硬変で抗生物質;GABA生成微生物を減らし、脳内のGABAレベルを下げることで認知機能や活力改善
    内蔵感覚は無意識のうちに脳に届けられて行動を導く衝動が生じる、直感。感覚に気づけてる?
    母乳を与える期間が長ければ長いほど脳が大きくなる(遺伝要因あり)
    食生活を変えることで微生物の構成自体は変わらないが代謝物質が変わる
    短鎖脂肪酸に発行して帰ることができない人いる
    脂肪分の多い食べ物を常時摂取しているとまんぷくに対する反応鈍り、充分食べたという感覚が失われる;LPSがサイトカインを放出させて炎症を起こすから
    ストレス食い;コルチゾール低い人がなりやすい
    食事変えるだけでなくライフスタイルから帰るべき

  • 有機栽培、発酵食品、動物性脂肪を控える、食べすぎない(断食する)、ストレスフルなときは食べない

  • 消化器官系とヒト共生微生物(マイクロバイオータ)が人のハードウェア(脳・神経)とソフトウェア(心・情動)に与える影響に比重を置き記述した一冊.「脳-腸-マイクロバイオータ」の相関バランスの乱れは,私たちの身体と精神を大いに乱す.自身の身体と精神を健全に保つには,自身の生態系を健全にすべきである.
     ボリュームの多い一冊なので.目次と訳者あとがきを先に読み,要点や概略を把握してから読み進めることを推奨.あとがきには,マイクロバイオータに関連する本も紹介されているのでそちらも合わせて読むとより理解が深まる.

  • 腸と脳は深くつながっている。
    腸は、これまで軽くみられることが多かった。しかし、この本を読むと、たくさんの微生物、消化酵素などが、複雑に作用しあい、脳にも影響を受けたり与えたりしていることがわかった。体の仕組みって、すごい。
    いくつかの症例があげられていて、腸の環境を整えることで、原因不明の症状が改善されていた。
    これを食べれば大丈夫!と単純なものではないことが、わかった。

  •  「内臓感覚」など過去、腸と脳の関係、腸が健康に果たす役割などに関する本を読んできた。その今のところの集大成と言える本。
     腸内細菌(マイクロバイオーム)の重要性を訴える。
     
     腸の不調が原因で病気が引き起こされるのではないかという例が冒頭いくつか紹介される。うつ病や過敏な胃腸など通常の投薬では治りにくいものも腸内細菌を整えること、腸内細菌にとって良い生活習慣、食習慣を身に着けることで改善の余地がでてくる、と。

     改善の理由を探るうち、腸内細菌が神経伝達物質を介して脳に直接メッセージを送っていることが分かってきた。

     腸内が無菌状態の赤ん坊はまず母乳のみを摂取することで腸内細菌を整え始め、理由が終わるころ、2歳半ころには腸内細菌が整う。この時の腸内細菌の構成は一生変わることがなく、成長後、ヴィーガンになっても腸内細菌の構成は変わらない。

     自然に近い環境で暮らしているヤマノミ族などの部族の食生活は植物性の炭水化物が主で魚を食べ、たまに動物の赤身肉を食べる。このような食生活をしている部族の腸内細菌は地域に関係なく、似通っている。ヤマノミ族の新生児はもちろん母乳で育つが生まれてすぐにジャングルの中のいろいろな細菌に晒されることで良好な腸内細菌バランスを得る。

  • 腸と脳が密接につながっていることを記した本。

    腸内環境・腸内微生物の多様性が疾患系とも相関をもたらしているという話

    未だ実証されていない要素も多種含まれるが、仮説としておもしろい。

  • 脳と腸、そして腸内環境がいかに密接に相関しているかという点に絞って書かれている。

    ■プラス
    胃腸病学者自身が書いているだけあって、実験内容や患者の経過やその生物学的仕組みについて詳細に書かれている。もっと基礎知識を学んできちんと理解したいという欲を掻き立てる。

    ■マイナス
    翻訳の問題か全体的に少し冗長だったり、いきなり聞きなれない化学物質の名前が出てきたりと、ちょっと取っ付きにくい感はある。また、まだよくわかっていない事も多いため、「今後これが証明されるだろう」のような論述も多々あり、科学的事実では無く著者の私見も多く見られる

  • だいたい知ってる内容だったけど、やはり腸を大事にしなければ。プロバイオティクスは重要!

  • 腸と脳の関係はだいぶ解明されてきましたね。

    第二の脳、いやむしろ第一の脳とすら言われる腸はいったい身体にどんな影響を与えるのか。

    ボリュームがあって中身もやや専門的で難しいですが、なかなか面白かったです。

  • 珍しくハードカバー本を買ったかみさんから拝借。
    長い。
    欧米系の本にありがちな(?)具体例がこれでもかと盛られてる。難しい分野を素人にもわかるように丁寧に伝えたいという気持ちはわかるが(訳文も)。
    結論は、「腸と脳と心の複雑な相互作用には、マイクロバイオータが重要な役割を果たす(p143)」だろう。
    「最適な健康」のために、「マイクロバイオームの改善による健康増進の指針(p294)」を意識してみよう。
    しかしかみさん、よくこの本買ったな。

  • 日経新聞201884掲載

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著者プロフィール

【著者】エムラン・メイヤー (Emeran Mayer)
ドイツ出身の胃腸病学者。カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授。
脳と腸の関係および慢性的腹痛研究の第一人者として知られる。
その研究は長年にわたり、米国国立衛生研究所(NIH)の支援を受けている。

「2018年 『腸と脳』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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