生誕の災厄 〈新装版〉

  • 紀伊國屋書店
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314011815

作品紹介・あらすじ

生誕こそ、死にまさる真の災厄である。

ただひとつの、本物の不運は、この世に生まれ出ることだ。―—「暗黒のエッセイスト」が放つ、独特のユーモアと強烈な皮肉に満ちたアフォリズムに、読者は一瞬にして呑みこまれる。
静かに読み継がれてきた、「異端の思想家」シオランの〈奇書〉を新装版で刊行。

【若い世代の読者に向け装丁・組版をリニューアル!!】
★現在の版(1976年刊行)からの変更点
・全面新組
・旧字体や送りがななどを、読みやすく改める
・水戸部功さんによる装丁


あまりにも完全な地獄は、楽園と同じように不毛である。
 あらゆる思想は、損なわれた感情から生まれる。
  一冊の本は、延期された自殺だ。

感想・レビュー・書評

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  • 新装版がでるときいてからずっと楽しみにしてたシオランの「生誕の災厄」。
    私の誕生日に刊行されたので、自分への誕生日プレゼントのようなつもりで購入したけれど、なんかちょっと皮肉めいていて可笑しかった。
    以下引用。

     死に対して抱いていた興味を使い果たし、もう死からはなんにも引き出せそうもないと見極めると、人間は今度は生誕のほうに向きなおる。別口の、汲めども尽きぬ深い淵のほうに、専念しはじめる……

     何もわざわざ自殺するには及ばない。人間はいつも遅きに失してから自殺するのだ。

    「既存の言語を用いて上手に喋るには、酔っぱらっているか、気が狂れている必要がある」とシエイェスはいった。
     私ならこういうだろう。「どんな言葉でもいい、いまなおあえて言葉というものを用いるためには、酔っぱらっているか、気が狂れている必要がある」

     自分の辞書から、私は言葉を一つまた一つと抹殺していった。大虐殺のすんだあと、たった一語、災禍を免れた言葉があり、それが〈孤独〉というのであった。
     満足して、目を覚ました。

     孤独を守る唯一の道は、あらゆる人間を傷つけることにある。まず手始めに、自分の愛する人びとを。

     一冊の本は、延期された自殺だ。

     生まれたという屈辱を、いまだに消化しかねている。

     人間は言葉を発するよりもずっと以前から、すでに祈りはじめていたにちがいない。というのも、動物性を否認し放棄したとき、人間の体験した恐怖は、唸り声や呻き声をあげなければ、とても堪えられたものではなかったろうからだ。この唸り声、呻き声こそ、祈りの予示であり、先触れの徴であった。

    私は今日までずっと、生きることの不可能性という意識を抱いて生きてきた。その私がともあれ生を我慢してこられたのは、いかにして私がとある一分から他の一分へ、とある一日から他の一日へ、とある一年から他の一年へと移ってゆくか、それを見とどけようとする好奇心のおかげである。

  • 清々しいほどネガティブで、そうかと思いきやシオランが自分自身を励ましているようなポジティブ表現もポッと出てくる。落ち込んでいる時に読むと返って救われる思いがする不思議な一冊。

    人生ってなんでこんなに苦労ばかりなの?
    私は何のために生まれてきたの?
    生まれてこなきゃよかったのに…

    こんな悶々とした状態のときって、ネガティブ非難・ポジティブ推奨されるのが一番キツイ。でも、シオランはそんなことしない。叱ったり喝を入れたり励ましたりは一切しない。だから逆に救われる。
    わかる人にはわかる。うん。。

  • 難しすぎて読むのを断念。
    ものすごくネガティブな考えが救いになる感じ?
    腹落ちしない内容も多く単純に合わなかったかなー。

  • アンチナタリズムかと思っていたら、メメント・モリですね。生と死は表裏一体。生の意味を見出す事はポジティブと言われるが死について意味を見出す事はネガティブと言われがち。死について意味を見出せないのなら、生についても同様ではないのか?

  • どこからでも読める哲学(奇)書。カッコいい文章もあればスベってる文章もあると思う。いっかい読んだだけでは、何も残らない。が、それがよくもある。

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著者プロフィール

E.M.シオラン(E. M. Cioran)
1911年、ルーマニアに生まれる。1931年、ブカレスト大学文学部卒業。哲学教授資格を取得後、1937年、パリに留学。以降パリに定住してフランス語で著作を発表。孤独な無国籍者(自称「穴居人」)として、イデオロギーや教義で正当化された文明の虚妄と幻想を徹底的に告発し、人間存在の深奥から、ラディカルな懐疑思想を断章のかたちで展開する。『歴史とユートピア』でコンバ賞受賞。1995年6月20日死去。著書:『涙と聖者』(1937)、『崩壊概論』(1949)、『苦渋の三段論法』(1952)、『時間への失墜』(1964)、『生誕の災厄』(1973)、『告白と呪詛』(1987)ほか。

「2023年 『四つ裂きの刑〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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