- Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
- / ISBN・EAN: 9784320110960
作品紹介・あらすじ
不完全性定理をとりまく数学基礎論の世界
我々は何を知り得ないと知ったのか
本書は,専門的な予備知識は仮定せずに完全性定理や計算可能性から論じ,第一および第二不完全性定理,Rosser の定理,Hilbert のプログラム,Gödel の加速定理,算術の超準モデル,Kolmogorov 複雑性などを紹介して,不完全性定理の数学的意義と,その根源にある哲学的問題を説く。
感想・レビュー・書評
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https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00260255詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
命題論理・述語論理に始まり、算術体系(PA-とか)や集合論(ZF(C)とか)の定義を経て不完全定理へと進む流れ。数学基礎論に入る哲学を無視せず、特に第9章は数学で数学を語ることの意味がとくとくと語られている。全体的に証明が簡潔すぎて参考文献をあたるしかないが、公理主義的数学の面白さの一端はつかめたと思いたい。個人的には、計算論との関係が面白かった。
p.vにある対象読者が謎だが、少なくとも、連続体仮説が証明不可とか、選択公理の議論とか、論理命題のゲーテル数表現とか、そういうのは知ってた方が面白いと思う。 -
請求記号 410.9/Ki 24
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がんばってみたが、今の私では正直歯が立たなかった。残念。
一点、私の関心のある設計方法論や創造性の分野でよく議論される「アブダクション」の概念についての議論で、覚えておきたいものがあった。p.295からの「9.3 机の上の白い豆」である。
アブダクションは、演繹、帰納に対する第三の推論形式と言われる。アブダクションとは「観測された事実を説明するための仮説を形成する推論」で「演繹でも帰納でもない」とされる。これは「発見」と呼びうるものである。菊池は、演繹を「前向き推論」、アブダクションを「後ろ向き推論」と呼んで形式化する。これはよく参照される考えかたであるらしい。
「後ろ向き推論」として形式化されたアブダクションの特徴は以下の四つ。
1. 真理を保存しない
2. 間違える可能性がある
3. 規則を持たない
4. 非決定的である
この四つの特徴が演繹と発見を本当に区別しているかどうか。
「
現実の数学での証明は,仮定から出発したり,結論から出発したり,場合によっては仮定や結論を取り換えながら,試行錯誤しながら書かれている.数学には「前向き推論」のみからなる推論や,「後ろ向き推論」のみからなる推論など存在しない.形式化された証明を書く場合も同様なのであって,素朴な証明であれ,形式化された証明であれ,証明について議論する際には「前向き推論」と「後ろ向き推論」の区別は大した意味を持たない.
証明を作ること,証明を理解すること,そして証明の正しさを確認することは違う.もしも演繹や発見という概念が証明という概念と関係を持つのなら,証明を作ることが発見と,証明の正しさを確認することが演繹と対応するであろう.証明という概念を理解するために演繹や発見という概念が必要であるとしても,演繹と証明の関係は「演繹を書き留めたものが証明である」という簡単な図式で説明できるものではない.(p.299)
」
証明もまた発見されるのである。